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19 せっかく森にきたのに出会った妖精が綺麗すぎる。【桜SIDE】


 私とデュナミス、リリスの三人はあれから毎日暇を見つけてはお菓子を持ってフックの森へと足を踏み入れた。リリスの顔がいくら怖くても(※失礼)、妖精達の大好きな甘いものをあげ続ければリリスが悪い人間ではないと分かってもらえるかもしれないと思ったからだ。まぁ俗に言う餌付けだけど。


 今日は魔法調理学の授業で作ったキャンディを妖精達に分けてあげることにした。デュナミスとリリスはお菓子作りの才能があるのか、すっごく綺麗な丸いキャンディなのだけど、私のはなんというか……凸凹している。いつもお菓子は蓮に作ってもらってたからなぁ……。ま、まぁ今回は妖精達をリリスと慣れさせる為だし、私のキャンディの出来はどうでもいいよね! 私の凸凹キャンディはポケットの中に仕舞う。これを妖精達に食べさせるわけにもいかないから、後で自分で食べる為に。


 まずお手本にデュナミスが妖精達に語り掛け、自分で作ったキャンディを見せる。すると妖精達が恐る恐る寄ってきた。デュナミスのキャンディを両手でつかむとペロペロ舐めはじめてとても可愛い。


『なにこれすっごくおいしい~! なにこれなにこれ~!』

「これはキャンディだ。食べるのは初めてか? 気に入ってもらえて嬉しいよ」


 デュナミスがにっこり微笑む。そんなデュナミスに妖精達も大喜びだ。

 するとリリス様が妖精達にぎこちない笑顔を向けて──


「よ、妖精さん達、よ、よよよろしければ、(わたくし)のキャンディもいかがですか?」

『!? こわ、こわい~!!!』

『サクラたすけて~!』


 妖精達が一斉に私の背中に隠れる。それを見たリリスは心の底から悲しそうな顔をした。今にも、泣きそうな顔……。私は思わず身体が動く。


「見て、妖精さん達!」

『!!』


 私は力いっぱいリリスを抱きしめる。腕の中から、リリスの素っ頓狂な声が聞こえた。


「え、あ、ちょ、サクラ!? あ、ああああああなた、と、ととととっとと突然なにして!?」

「妖精さん達に私達が仲いいところを見せれば怖くなくなるかもって思って」

「だ、だだ、だからといっていきなり抱きしめる必要はないと思いますの!! ちゃ、ちゃんと許可をとって……」

「妖精さーん! ほらみてみて! 私、リリス様と仲良し! 怖くないよ~!」

「聞いてますの!?」


 リリスは怒っているけれど、妖精達は興味深そうに私達を見ていた。

 それに気づいたリリスは妖精達の前で怒ってはいけないと気づき、こほんとわざとらしく咳をして──私の背中に腕を伸ばした。


「よ、妖精さんたち~わ、わわ私は、さ、サクラと仲良しですわよ~サクラ、だ、だだーいすきっ!」

『ほんとだ~仲良しだねぇ~』

『怖い人間はサクラがだいすきなんだねー!』


 妖精達が徐々にこちらに寄ってくる。り、リリスがまさかここまで己を捨てて演技をするなんて……ならば私もそれに応えないと! 私はさらにリリスと距離をつめた。リリスの息が私の唇にかかる。


「なっ!? サクラ!?」

「私もリリス様のこと、好きです」

「なっ!! ん、え、な、なななんなぁぁあああ!?!?!?!」

「あ、リリス様!?」


 そうすると何故かリリスが暴走して凄い速さでどこかへ走り去ってしまった。

 デュナミスがため息を吐いて私の頭を軽く叩く。


「やりすぎだサクラ。リリス様は人と触れ合うことはあまり慣れてないのだからもっと加減しろ」

「えっ? そうかなぁ」

「まったく。君はちょっと無防備すぎだな。警戒するってものを知らなすぎる。……私にだって、あんなに真剣に好きだって言ってくれないのに……」


 デュナミスは小声で何か呟くと「私がリリス様を探してくる。サクラはここで妖精達と遊んでいてくれ。動くなよ」と私の顔を見ずに去っていった。

 ……人を警戒しろ、か。そういえば蓮もそんなこと言っていたな。

 少し反省しつつ妖精達と戯れていれば、不意に妖精達が一斉に私から距離を取り、地面に降りる。私がどうしたのかと首を傾げると、他の妖精よりも一際輝きの強い光が現れた。

 

 ──よく見たら妖精さん達、この光に向かって跪いてる?


「……あなたは?」


 恐る恐る声をかけてみる。すると光はふよふよと私の顔を一周した後、より強い輝きを帯びて、普通の妖精のような小人型に変化する。


『──こんにちは、サクラ』

「…………、」


 光の妖精さんは今まで見た妖精達の中で、一番美しい子だった。私は思わず数秒見惚れてしまい、返事ができなかった……。

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