4、君に演技は向いてない
流石は王城。
すこし狭くとも部屋は超快適!
ホームレスにならずに済んでよかったー! 一時的だけど。
離宮にある一室を与えられた私は、とりあえず我慢させられていたフカフカのベッドを堪能していた。
だってさっきまで、あの強面団長サマが説明のため居座っていたからね。名前呼び捨てにしろとか無理難題押しつけてきたからね。
悪い人じゃないのは分かったけど、目が恐い。視線で胃に穴を開けられそう。顔は美形なのに残念だ。
団長サマの話によると、私が王子に接触するのは十日後の夜。どうやら、合格した順に一日ずつ担当するみたいで、最後に合格した私は最終日になってしまったのだ。
つまり少なくとも十日はこの部屋とご飯を享受出来る。やったね!
とはいえ、初日から王子に「お前、役立たず。クビね」って言われたらこの生活も失ってしまう。それだけは何としても避けねば。
私がここを去るのは、たんまりとお小遣いをもらってからだ。
そのためにまずやるべき事は……王子の欲望リサーチ!
何の幻覚を見せたら気持ちよく眠ってくれるのか、王子の事を調べ上げる必要がある。
さて、どうやって調べよう。護衛を伴わなければ部屋の外へ出ることも出来ない。
あの目力の半端ない団長サマの力を借りなければ話は進まないと言うことだ。
いやまて、ここはこの呼び鈴だ。侍女さんに王子の話を聞いてみよう。
思い立ったら吉日と言うことで、早速ベルを鳴らした。
しばらくして──
「お呼びでしょうか、リア様。お初にお目にかかります。私のことはどうぞアリスと呼び捨て下さい」
私より二、三は年下だろう少女が現れた。
「アリスちゃん。実は聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何でしょうか?」
「不眠に悩まされてる王子ってどんな方?」
「る、ルーク王子は……と、とても聡明で、お、優しくて、皆の憧れの……お、王子様です」
どもりかた半端なっ! アリスちゃん、演技下手すぎる。これは完璧に台本渡されて、聞かれたらこう答えなさい! 的な感じで仕込まれてる。
「それで、本当の所は?」
ごく自然にさり気なく。友達感覚で本音をサラリと聞き出してみた。
「傍若無人、被害妄想に苛まれ不眠になられる精神虚弱なお方です……って、違います! 決してそのようなお方では!」
「大丈夫だよ、アリスちゃん。王子様は聡明で優しくて皆の憧れのお方なんだよね?」
「はい、そうです!」
「分かった、ありがとう。もう下がって大丈夫だよ」
「はい。また何かありましたら何なりとお申し付け下さい」
さーて、豆腐メンタル王子をどうやって寝かしつけようかな。










