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Black File  作者: 葱鮪命
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File051 〜砂漠の鎮魂歌〜 前編

 彼からの連絡が途絶えて半年が経つ。あれから何人かの研究員を派遣したが、誰もが無事に戻ってきている。超常現象の消失を意味するとブライスは判断して、研究員名簿の「コーデル・ローチ」の欄に「死亡」の文字を付け足した。


 *****


 今から六年前。B.F.星5研究員のコーデル・ローチ(Cordell Roache)はバレット・ルーカス(Barrett Lucas)という赤髪の少年を助手にとった。


 バレットは好奇心旺盛でどんな超常現象にも興味を示す性格で、常にコーデルに着いて回っていた。コーデルの師匠でもある星5のデビット・フィンチ(David Finch)には「まるで鶏とヒヨコだ」などと笑われていた。


「お前はバレットをすぐ甘やかすんだから」

 デビットが朝食の席で、自分の皿に乗ったハムが食べたいと言ったバレットにすかさずハムを渡したコーデルに呆れ顔を向けた。


「まあまあデビットさん。もしアンタが俺にねだられたらちょっとは甘やかしたくなるでしょ? それですよ、それ」

「あのねえ、可愛いのは分かるけれど、この先甘やかし続けたらバレットのためにはならないんだよ」


 デビットの言葉は耳に入っていないのか、コーデルは「これも食え!」と、ハニーマスタードを付けたポテトをバレットの口に押し込んでいる。次々と食べ物を貰って頬が膨らんでいくバレットを見て、デビットは「まったく.....」とため息をついた。


 *****


 バレットが星3になる頃、コーデルはブライスから新しい調査の依頼を引き受けることになった。バレットも研究員として成長してきたからか、実験や調査の難易度はぐんと上がる。


 今回引き受けたのは、バレットにとってそれなりの危険が及ぶもので、コーデルはかなり迷った。


 もしかしたら命を落とすかもしれない。いよいよ自分もそのような実験を任される立場まで来たのだな、しみじみ思うと、やはり尚更バレットを連れて行く気にはならない。


「なあ、バレットちょっといいー?」

「はーい」


 オフィスにてコーデルはバレットを呼んで、互いに向き合う形をとった。


「どうかしましたか?」

「んー、ちょっと頼みたいことがあるんだわ」


 コーデルは考えた。もし自分が死んだとして、残されるバレットはまだ星3なので独立することはできない。そうなればバレットはデビットに頼むしかないだろう。


「そろそろ星4昇格も視野に入れるべきじゃんか。だからアンタ、単体実験とかやってみないか?」

「単体実験!」


 バレットはすぐに食いついたようだ。これが好奇心旺盛の良い所である。

 実験が好きな彼は、きっと自分で好きなように試行錯誤できる単体実験を気に入るだろうと思っていたのだ。


 それに、もしバレットをデビットに引き継いだ時、彼はコーデルの死を確信するかもしれない。そうなればきっと実験どころではないだろう。ならば、今のうちに経験を積ませて星4に昇格できる貯金を貯めていた方がいいのだ。また、B.F.をいつ辞めてもいい状態を作れる。


 実験を一定数こなすことと、星4以上の資格を持っていることがB.F.を辞職する条件なのだから、もし心に傷を負ってこの会社から逃げたくなればいつでも逃げられるように、とコーデルはかなり考えていた。


「お前ってやつは......本当にバレット思いだ」


 デビットに事の詳細を伝えると、彼は悲しげに言った。


 これからコーデルが挑む超常現象はB.F.の星5研究員の間では密かに噂になっているほどのものであるという。


「何でも行った人間は一人として戻ってこないそうだ」

 デビットが声を暗くして言う。


「なあに、ちゃんとアンタのために戻ってきてやりますよ。俺はへっぽこじゃないんで、戻ってくるくらい容易いことだと思うんですけどね」


 コーデルはわざと明るい声を出した。


「......お前はこの超常現象が危険だと知って引き受けたんだろう? どうしてバレットをあれだけ可愛がっていながらこんな選択をしたんだ?」

 デビットの問いに対してコーデルは「んー」と首を傾げる。


「何となく?」

「お前ね」

「ま、良い機会だと思っただけですよ」


 コーデルがにっと笑った。


「機会?」

 デビットが眉を顰めたが、コーデルはその先を教えてはくれなかった。


 *****


 その超常現象の発生条件は、部屋の床を砂で埋めることであった。その砂の上を裸足で歩いているうちに、少しずつ周りの景色が変わってくる。


 気づけばそこは太陽の熱が降り注ぐ砂砂漠であった。


「無事に異空間の中に入れました。資料で読んでいた通りの砂砂漠です」


 コーデルは持ってきた無線機にそう言った。


『その地点から太陽の方向に集落が見えるはずだ』


 無線からはブライスの声がする。コーデルは太陽の方向に体を向けた。あまりにも眩しくて手で庇を作って目を凝らしてみたが、確かに遠くにうっすらと人工物のようなものが見える。


「あります。あの集落に入って三日後に黒い霧が現れるんですよね」

『そうだ』


 この超常現象は砂砂漠の異空間にて集落を見つけ、そこに三日間滞在すると、黒い霧に襲われるというものであった。

 黒い霧の正体は未だ不明だが、それに飲み込まれると命の保証はない。現にあの霧に飲まれた全員が消息を絶っている。


 ただあの霧は走れば追いつかれることはなく、今まで三人の研究員があの霧から逃げ切っていた。


 だが帰ってきてはいない。霧から逃げ切ったという音声の記録だけを残してその三人とは皆それぞれ連絡が途絶えた。

 霧から逃げ切った先に何があるのかは、消えた三人しか知らないのだ。


『集落に着いたらまずは泊まらせてくれる家を探せ。前の研究員はリンジーという女性の家に滞在している』

「分かりました」


 砂砂漠を歩きながらコーデルは辺りを見回す。


 あの集落以外に人工物は何処を見回しても見当たらない。あの集落に足を踏み入れれば、自分の命のタイムリミットが始まる。


 だが自然と怖いとは感じないのだった。


 寧ろこれが自分の最期を飾る超常現象なのかと考えると、コーデルはどんな映画よりも素晴らしい結末にして見せようと考えるのだった。


 集落は本当に小さかった。トタンで作られたような、嵐が来れば簡単に飛んでいってしまいそうな簡易的な家が数件。家々の屋根に張り巡らされたワイヤーには、砂埃にまみれたシャツやズボンが頼りなくぶら下がっていた。


「ごめんくださーい」


 ある家にコーデルは入ってみた。中は薄暗く、人の気配はない。


 砂の上に壁と屋根だけを乗せた、本当に簡単な家だった。いや、家とも呼びがたい。床は砂そのままなのだから、小屋という表現の方が合っているのだろうか。仕方なく他の家にも顔を出してみるが、どの家も誰の気配もなかった。


「ブライスさん、誰もいないですよ?」


 コーデルは全部の家を回ってみたが、本当に誰も居ない。聞いていた話と違う。前の研究員はこの集落に着いた時点で住人に話しかけられていたというのだ。


『そうか。人が住んでいる気配はあるか?』

「そうですねえ......」


 コーデルは家の中を再度覗いてみる。洗濯物が干してある辺り人は住んでいるのだろうが、あれが一体いつ干されたものなのかは判断できない。家の中には食料のようなものもなく、人が住んでいるとは考えられにくい状況だった。


『取り敢えず少し待機してくれ。もしくは集落を見失わない程度に辺りの散策をしろ。熱中症には気をつけろよ』

「ほーい」


 熱中症よりも恐ろしい死が待ち受けているのだろうに、そんなことで気をつけろと言われると、コーデルは腹の底から笑みが這い上がってくるようなくすぐったい感覚があった。


 さて、ブライスに言われたので彼は集落の周辺を散策してみることにした。


 人が住んでいないのだとしたら、自分は三日間何をしていればいいのだろうか。資料を読み込んだ限り、この集落に最初から人がいないという情報はない。超常現象は気分屋なところもあるのできっと遊ばれているのだろう。


「しっかし本当に何も無いなあ」


 見回しても砂、砂、砂。人の気配は愚か動物の気配すらしない。そもそも砂漠に動物というのはいるのだろうか。真っ先の頭に思い浮かぶのはラクダだが、生き物がいる気配は微塵もない。


 コーデルは砂に触れてみた。サラサラと一粒一粒がはっきりしていて、全く水分を感じない。掬っても指の隙間から流れていってしまうようだ。


 長い間太陽に晒された砂は熱かったが、砂漠に来るなどということは、なかなかない経験なのでコーデルは夢中になって砂に指を突っ込んでいた。


 そのため、遠くからやって来る人の群れに気づかなかった。


 五分ほど触って流石に飽きが来たコーデルはやっと顔を上げた。


「......ん??」


 遠くに何かが見える。人工物ではない。


「んん???」


 それは二本足を使って此方に歩いてきているのだ。


「人だっ!!」


 コーデルはぱっと立ち上がった。しかし次の瞬間、ぐらりと視界が揺れた。立っていられずに彼は砂の上に腰を下ろした。


 視界が白くなっていく。頭もガンガンと割れそうな程に痛い。


 コーデルはこれが熱中症であると瞬間的に理解した。さっきまで馬鹿にしていたのに、まさかこんなに早くなってしまうのか、と驚いているうちに此方に向かってくる一人の人物にコーデルは見つかった。


「大丈夫ですか?」

 青い布を被った女性が軽い足取りで走ってきて、コーデルの背中を支えた。


「ああ、すみません......ちょっと、目眩が......」


 女性が「大変」と言ってコーデルに肩を貸してくれた。一番近くの建物に連れてくると、何かを渡してきた。それは瓶だった。中には透明な液体が入っている。


「これ、どうぞ」


 コーデルは瓶の蓋を開けて中身に口をつけた。無味無臭の液体だ。水のようだが、この近くに水場などなかった。この集落を見ても水道は通っていないようだった。

 コーデルはあっという間に水を飲み干して、建物の壁に背中を預けた。砂の上に壁と屋根を乗せただけの場所に過ぎないが、太陽の熱からしっかりと守ってくれる役割はしているようだ。


「この辺では見ない顔だけれど、旅人さん?」

 青い布の女性が空っぽになった瓶を受け取って問う。コーデルは「まあ、そんなとこです」と頷いた。頭の痛みは無くなっていた。


「そう。こんな場所までよく来たわね。私はリンジー。この家の家主です」

「アンタでしたか......」


 コーデルは納得した。ブライスが言っていた女性は彼女のようだ。女性はコーデルの言葉に「え?」と不思議そうな顔をして首を傾げた。それを見てコーデルは慌てて「こっちの話です」と付け足した。


 彼女とは初対面だ。いくら此方が彼女のことを知っていようと、それは前の研究員が会っただけであって、コーデルの話ではない。しかし、やはり興味深い。


 資料によれば、リンジーという女性は何人か前に送り込まれた研究員の時に霧によって亡くなったという話だった。その前もその後もきっと彼女は亡くなっているのだろう。

 だが、今彼女はコーデルの前で生きている。水の瓶をくれた彼女の手は確かに温かかった。


 何が分かるか、この超常現象は同じ時間をループしているのだろう。


 新しい研究員がこの世界に来る度、彼女らは生き返ってまた新たな犠牲者を産んでいるのだ。もちろん、彼女が今までの研究員を殺めてきたということではないのだが。


「あの......他の人は?」

「ああ、それなら」


 リンジーは微笑んで目を外に向けた。コーデルも外を見てみる。外は賑やかだった。色とりどりの布を被った人々が、水の入った瓶をリヤカーから抱えあげてそれぞれの家々に運んでいるのだ。


「週に一度、何キロも離れたオアシスに水を汲みに行くの。村の人全員でね。水はこの辺じゃとても貴重なものだけれど、生活には欠かせないから」


「なるほど......それで村を留守にしてたんですか」


 村に誰もいなかった理由がわかってコーデルは納得した。


 それにしてもこんなに小さな集落だが人の数はそれなりらしい。子供も多いようで、大人の手伝いなのか、枝のように細い腕で水が入った重そうな瓶を抱えて家の間を行き来している。


「これから夕飯だけれど、あなたもどう?」

 リンジーに問われて、コーデルは大きく頷く。


「いただきます!」


 *****


 リンジーには一人の子供が居た。父親は昔に病気で亡くなったようで、今は幼い息子を女手一つで育てているらしい。


 集落の住人は全員が仲良しだった。水を汲みに行く時も狩りに出る時も集落全員で動くのがきまりのようで、一つの家族のような関係なのだと言う。


 炊事はコーデルも手伝った。何も無いと思っていた家の中には実は巨大な食料庫があった。それは家の中の床_____砂を掘ると出てきた。

 大きな木箱に野菜を入れて土に埋めるのだという。動物や他の集落の人に盗られないための工夫で、他にも熱によって傷まないようにするためでもあるという。他の集落もあるのか、とコーデルは食料庫の仕組みより其方に気を取られていた。


「コーデルはずっと遠いところから来たのね」


 リンジーと肩を並べながらコーデルは野菜を刻む。


 生まれてこの方全く包丁を握ったことがなかったコーデルだが、リンジーに教えて貰って葉物は刻めるようになった。ただ、まだ危なっかしいところがあり、リンジーが時折手を止めてコーデルの代わりに切ってくれた。


「旅人なんて珍しいから、村の子供たちに沢山お話を聞かせてあげるといいわ。この辺に住んでいるとね、どうしても流行りに疎いの」


 リンジーは肩を竦めて言った。コーデルは「そうなんですか」と相槌を打った。

 砂漠の中に住んでいるとキャラバンでも来ない限り真新しい話というのも聞けないのだろう。


 コーデルはそう思いながら葉物を沸騰したお湯に入れた。この集落では葉物のスープがメインの料理らしい。葉物はオアシスに生えているものだという。


「この辺は明かりもないから、すぐに眠らないとならないしね。コーデルが話をしてくれたら、きっと皆寝る間も惜しんで耳を傾けるわ」


 咄嗟に自分は旅人だと言ったコーデルだが、旅などしたことがない。話せることとして、B.F.の話や入社する前の話になるが、そんな話を聞かせたところで子供の興味は引けないだろう。


 スープが出来上がって、リンジーは軽く味見をさせてくれた。葉物は独特の苦味があり、コーデルが眉を顰めると彼女は楽しそうに笑った。


 *****


 コーデルは自分の分を皿に取り分けた。リンジーも同じく皿に取り分ける。自分の分と、それから息子の分だ。三つの皿が並ぶとリンジーが言った。


「さて、彼を呼んでこないと」


 コーデルはその「彼」がすぐ彼女の息子のことだと理解した。体の向きを家の出口に変えて、


「ああ、俺が呼んで来ます。名前は何て言うんです?」


 と、振り返って問う。彼女は答えた。


「バレットよ」


 リンジーの口から出てきた名前にコーデルは目を丸くした。


 なんという偶然だろうか。

 まさか自分の助手と同じ名前の息子だったとは。


「......どうかした?」

 リンジーは固まってしまったコーデルを不思議そうに見上げる。コーデルはハッとして「いや」とすぐ外に出た。


 バレットという名前など沢山居るだろう。リンジーという名前だって、コーデルが小学生だった頃の担任の名前であるのだから。


「バレット〜」

 コーデルが家の周りを回りながら名前を呼ぶと、集落の中心部から笑い声が聞こえてきた。それは子供の笑い声だった。コーデルはその笑い声に導かれるようにして集落の中心部に歩いていった。


 民家が囲むそこは小さな子供たちの遊び場だった。砂に丸い模様を描いていて、その丸の中に一回り小さい丸がまた描いてある。それが四重になっていて、真ん中に小石のような小さなものが置いてあった。

 子供たちはその円を囲み、その石に向かって遠くから手の中の色の着いた石を何個か投げていた。その投げた石が真ん中の石に当たった子は嬉しげな声を上げている。


 どうやら、真ん中の石に誰がどれほど近づけられるかという勝負をしているようだ。カーリングのようなルールのようで、真ん中の石に近ければ近いほど得点は上がるという。


 面白そうなのでコーデルは少し離れた位置でその遊びを観察することにした。


 子供のひとりが真ん中に石を置き直した。子供たちはそれを見届けて、円から一定間隔を空けて離れる。かなりの距離があるが、子供たちはじゃんけんで決めた順番に石を投げるらしい。


 初めに石を投げたのはオレンジ色の布を被った四、五歳程の小さな少女だった。彼女が持っている石は緑色。それを手に三つ持っており、その一つを円の中心に向かって放るように投げた。


 石は綺麗な放物線を描いて飛んだが、その距離は伸びず、外から二つ目、三つ目の円の間に落ちた。少女の口から「あー」と残念そうな声が出る。


「ヘレンは力無さすぎるんだよ!」


 遠巻きに見ていた茶色の布を被った六歳程の少年が言った。周りもそれに同調するように大きく頷いた。ヘレンと呼ばれた小さな少女は肩を竦めて、手の中に残っている二つの緑色の石をカチャカチャ言わせた。


「膝を使うんだ! こう、ジャンプするみたいに!」


 青い布を頭から被った少年がアドバイスを投げた。九歳くらいの少年だったが、此処の子供たちの中では最も年長に見えた。


 ヘレンと呼ばれた幼い少女はもう一度石を投げるチャンスを得たようだ。青い布を被った少年のアドバイスをもとに膝を使って石を投げた。

 石はさっきよりも飛んで、真ん中の石に限りなく近づいた。見る場所によっては真ん中の石に当たったのではないかと思うくらいのところだ。


 子供たちの中からわっと歓声があがった。


「ヘレン、上手!」

「バレットのアドバイスが良かったんだよ!」

「それをすぐやって活かせるヘレンもすごい!」


 子供たちの目はヘレンと、青い布の少年に向けられた。あの少年の名前はバレットというようだ。


 彼か、とコーデルはバレットをじっと見つめる。


 自分の助手では無いことは分かっている。しかし、やはり同姓同名だと意識してしまうようだ。


「良い子達だろう」

 突然聞こえてきた嗄れ声にコーデルは驚いて振り返った。すぐ隣にその人物は居た。灰色の布を被った男性だった。足が悪いのか木の杖を一本持ち、小さな椅子に腰掛けていた。皺の刻まれた目元は柔らかい色を孕んで、子供たちに向けられていた。


「退屈な顔を大人たちに見せないように、ああして頑張っているんだ」


 優しい顔とは裏腹に男性の声は悲しげだった。コーデルは子供たちに目を戻す。


 彼らも死ぬ運命。何度も、研究員がこの世界に入る度に殺されてきた。今回も、そうなってしまうのか。


「旅人さんは、何処に向かう途中なんだい」

 再び男性を見ると、彼は目を細めてコーデルの顔を見ていた。


「行先は......俺も分かんないです」

 咄嗟に思いつかずにコーデルは言った。


「そうかい。私たちはね、終わりに向かっているんだ。その途中まで、今来ている」

「......」


 コーデルがポカンとしていると、男性がゆっくり立ち上がった。椅子から腰が離れた時少しふらついたのでコーデルが慌てて支えると、彼は「ありがとう」と言って杖を片手に持った。


「子供たち」

 よく通る声だった。子供たちがパッと此方を見た。何人かが此方を指さした。その指先はコーデルに向いているらしい。


「みんな家に帰るんだ。もう時期夕ご飯の時間だぞ」

「はーい」


 子供たちは素直に自分の家に戻っていく。コーデルはバレットに近づいた。


「バレット、今日お前の家で夕飯を食うことになったんだ。一緒に行ってもいいか?」


 バレットという少年は突然話しかけられて驚きを隠せないようだった。周りにいた子供たちも何人かは興味深そうに近寄ってくる。


「おじさん、誰?」

 バレットが眉を顰めて聞いてくる。コーデルは「おじさん......」と軽くショックを受けつつ、名前を教えた。


「旅をしているんだ。アンタの母ちゃんにさっき助けて貰ってさ」

「ふーん」


 バレットは特に興味もないのか、家の方に歩いていく。コーデルもついていこうとしたが、彼の周りに居た子供たちに囲まれてしまった。


「おじさん、旅してるんだ!?」

「何かお話聞かせてよー!!」

「オアシスに行ったことある!?」


 完全に行く手を塞がれてコーデルは前に進めなかった。バレットはその間にもずんずん行ってしまい、周りの子供の好奇心に溢れた目は増えていく。


「あー、後でお話してやるから!! な! もう家帰れ!」


 コーデルが言うと子供たちは簡単に散ってしまった。


 これは食後までに色々話すことを考えておかないと子供たちのガッカリ顔を拝むことになりそうだ。コーデルは困ったな、と頭を掻きながら家に戻った。


 *****


 バレットは夕食を食べている間、ずっとコーデルを見ていた。あまりにもコーデルを見つめるので、リンジーが「バレット、ちゃんと自分のお皿見て」と注意していたが、彼の目はなかなかコーデルから離れなかった。


 警戒されているのか、それとも嫌われているのか......同じ名前の彼にはやはり好かれていたい。


「バレット」


 リンジーがため息混じりに呼ぶと、バレットがハッとした。


 何度も同じようなことを繰り返したからだろうか、バレットの頭から青色の布がゆっくりずれて、やがてフードが脱げるように取れてしまった。


 コーデルは思わず彼の髪色に目を奪われる。


 バレットの髪は、よく知る赤色だった。毎日のように見ていた助手の髪色だった。


「......まさかな」


 呟くコーデルに、バレットに布を被せていたリンジーが「え?」と振り返る。


「あ、ごめんな。何でもない」

 コーデルは慌てて言って、スープを飲み干した。


 まさか、そんなわけがあるのか。


 *****


 夕食を食べ終えて、コーデルは集落の子供たちに中心部に連れてこられた。真ん中にはコーデルが座るための椅子まで用意されていて、子供たちはその周りに座った。


 さて、困ったな、とコーデルは子供たちの顔を見回す。人生において、これだけの子供の囲まれた経験は無いので謎に緊張してしまう。


 自分は今旅人ということになって此処に座っているわけだが、はて、旅人は一体どんな話をするというのだ。


 嘘だとバレるのも困るので、コーデルは仕方なく自分が旅行で行ったことある場所の話に、少しだけ嘘を交えて話すことにした。子供たちはそれを嘘の交じっている話だとは思ってもいない様子で顔を輝かせて聞き入っている。その中にバレットも居た。彼もまたキラキラと顔を輝かせている。


 罪悪感も感じるが、これだけ信じてくれるとは思っていなかった。


 それにしても何かに夢中になっている子供というのは可愛らしい。


 コーデルは日が暮れるまで自分の話をするのだった。


 すっかり日が沈み、子供たちは自分の家に戻って行った。今度はさっきとは異なり、バレットはコーデルと共に家まで行ってくれた。


「いつまで家にいるの?」


 すっかり心を許したのか、バレットがそんなことを聞いてきた。


 その質問でコーデルは、リンジーに三日間滞在したいと言うのを忘れていたことを思い出した。家に戻って尋ねると構わないという話だった。


 それにしてもこの集落は明かりがない。中心部に小さな焚き火があるが、それもそろそろ消えそうになっていた。砂漠なので周りに明かりというものは全くないのだ。


 暗くなったら寝る、というのがこの集落では徹底されているらしく、コーデルがバレットと共に家に帰る頃には周りの家からほとんど物音が聞こえてこなかった。


「さ、バレット。ベッドを作って」


 ベッドというのは自分の体にまとっている布を砂の床の上に敷く、というだけの簡単すぎるものだった。


 コーデルはもちろんその布を持っていないので、リンジーはコーデルの分も用意してくれていた。肌触りが良くて、よく眠れそうだ。

 しかし、真っ暗な中で色までは判断できなかった。明日の朝に確認するという楽しみができたので、コーデルは大人しく布を敷いてその上に横になった。


 こんなに穏やかな気分なのに、今からこの集落の者たちに待ち受けるのは死という残酷な運命なのだ。


 コーデルは目を閉じてもなかなか眠りにつけなかった。リンジーとバレットはもう眠ってしまったようだ。


 コーデルは彼女らを起こさないように起き上がった。布を手にして家を出る。


「うわお......」


 砂漠なので明かりがない、というのは間違いだったようだ。空には満天の星があった。


 そう言えば、星空が見たければ、田舎や周りに明かりがない場所に行くのが良いとコーデルは聞いたことがあった。砂漠は星を見る条件が完璧に整っている場所と言えるだろう。これだけ何も無ければ空を遮るものもない。


 コーデルは星の綺麗さに思わずため息をついた。


 少し前の自分なら、絶対にこんな星空を見ても何も思わなかっただろうに。助手のおかげで、少なくとも感受性が豊かになったのだな、とコーデルは嬉しかった。


 そして、集落から少し離れた場所にやって来て機械の電源をつけた。


「ブライスさん、聞こえますか」

『コーデルか。無事に人は見つかったか?』

「はい。リンジーって人の家に泊めてもらえることになりました」

『そうか』


 久しぶりに聞いたブライスの声にコーデルはホッとした。


 まだ無線が繋がることにも感動だが、彼には伝えなければならないことが沢山ある。コーデルは集落の人間は週に一度水を汲みにオアシスに行くこと、そしてリンジーの息子にバレットという名前がつけられていることを話した。


『髪も赤いとなると偶然にしては話ができすぎているような気がするな』


 ブライスも驚いているようだ。それは無理もない。


 コーデルは其方のバレットの様子を聞いてみた。


『デビットと上手くやっているそうだ。デビットはかなり経験のある研究員だ。心配はいらないだろう』


「まあ、そうですよね」


 デビットに頼んだのは、彼が自分よりもずっとベテランだからだ。自分が育てるなかで欠けていたものをバレットに教えこんでくれることだろう。


『この超常現象は長期滞在になる。前の研究員は二週間で無線が切れた。それから連絡は一度も取れていない』


「二週間......」


 聞いてはいたが、その研究員は最期苦しむ声をあげて無線を切ったらしい。おそらくこの集落に三日間滞在してから現れる霧ではないもので命を落としたのだろう。


「霧の他に何か危険なものが存在するってことですよね」

『ああ、そうだ。それが何かはまだ分かっていない。お前にはどうにかその正体を掴んで欲しい』

「任せてください。デビットさんには絶対帰ってくるよう言ってるんですよ」


 コーデルは砂の上に胡座をかいた。


『......デビットが言っていたぞ。どうしてお前がバレットを置いてこの超常現象の調査を引き受けたのか分からないと』


 コーデルは「あー」と曖昧に返して空を見上げる。数え切れない星々がコーデルの視界を埋め尽くすようだった。


「罪滅ぼし、ってやつですかね」


 コーデルが小さく言った。ブライスは無線の向こうで黙った。


「バレットには黙っておいてくださいね」

「俺が、何だって?」

「!!!?」



 コーデルは慌てて無線を切った。いつの間にか自分の後ろにバレットが立っている。彼は布を被っていなかった。地面に引き摺るようにして布を持っている。眠そうに目を擦っていた。


「おいおい、寝る時間なんだろ? 寝てないとダメじゃんか」


 コーデルは立ち上がってバレットの元に行く。


「トイレしてただけだし......起きたらコーデル居ないから」


 バレットはそう言って、空を見上げた。綺麗な彼の目の中に星空が映りこんだ。


「わあ......」

「初めて見るのか?」

「だって夜は寝る時間だから。こんなに綺麗だったなんて知らなかった」


 バレットは眠気が覚めたのか、その場をくるくると回っている。コーデルはその場に座って、バレットを膝に乗せてあげた。


「凄いよな、俺も驚いてる」

「旅してるのに星空を見たことがないの?」


 バレットの純粋な疑問に、コーデルは「あー......」と言葉に詰まった。


「俺が旅してた所は星があまり綺麗じゃなかったからな。旅人だからっていつも綺麗な景色を見てるわけじゃないんだぞ」


「ふーん」


 バレットはコーデルの胸に背中を預けた。


「もう寝ないと、母さんに怒られる。だから眠れない時は眠くなる歌を昔はよく歌ってもらったんだよ」


「へえ、どんな歌だ?」


 コーデルが問うと、バレットは小さく息を吸い込んだ。


「地に始まり、空に終わる 幾多の亡者から逃げず背を背けずして戦え しばしの別れを楽しもう 我が英雄」


「なんか難しい歌だな」


 コーデルは聞いて首を傾げる。しかし、返事がない。


「......バレット?」


 声をかけると小さな寝息が聞こえてきた。どうやら効果は抜群のようだ。コーデルは自分の布を彼にかけて、まだ少しの間満天の星空を眺めていた。


 *****


 コーデルに手渡された布はバレットが持っている青色の布と同じものだった。リンジーも同じものを持っているので、その家々で色は決められているようだ。


「綺麗な色だなー」


 太陽に透かしたり、触ってみたりしてコーデルは言う。外に出る際にこの布を纏うことで、太陽の熱から体を守ることができるらしい。


「コーデル、今日はコーデルの国の遊びを教えてくれよ!」


 朝食を取り終えると、家の前に子供たちがやってきた。皿洗いをしていたコーデルが「え」と目を丸くすると、リンジーは行っておいで、と皿洗いを引き受けてくれた。


 果たして自分が知っていて、この子らが知らない遊びがあるだろうか。


 コーデルは考えた結果、小さい頃に幼稚園でやった簡単な遊びを思いついた。


「よし、じゃあ一人狼役を決めるな」

「狼?」

「そうだ。じゃあバレット。アンタ狼してくれ」

「わかった」


 コーデルはバレットの手を引いて皆の前に連れてくる。残りの子供は少し離れた場所に一列に並ばせた。


「なあなあ、狼さん」

 コーデルはバレットに声をかける。


「今何時だ?」


 コーデルの問いにバレットは「えっと」と困った顔をする。

「好きな時間答えな」


 コーデルが言うと、バレットは「五時!」と言った。


「じゃあアンタらは五歩バレットに近づくんだ」

 コーデルは子供たちを振り返る。


「バレットがさっきの質問に対して『ご飯の時間!』って答えたら追いかけてくるから、皆バレットから逃げるんだぞ? 狼に捕まったら次はソイツが狼になる。簡単だろ」

「楽しそう!!」


 子供たちはすっかりその遊びに魅了されたらしく、飽きることなく何時間も楽しんでいた。コーデルは少しだけ遠くでその様子を眺めて、ブライスに無線を繋げた。


「ブライスさん、聞こえますか」

『ああ、どうだ。体調は大丈夫か』

「まあ、ピンピンしてますよ。それにしてもこの集落は娯楽が極端に少ないですよ。大人は飯の準備か、子供が遊んでいるのを眺めているくらいしかやることがないんです」


 コーデルは子供たちの周りでぼんやりとしている大人たちを見る。皆楽しくても楽しくなくても子供を見るしかすることがないらしい。


 もしかしたら大人は子供に時間を教える時計の役割をしているのかもしれない。昼食なら昼食の時間だと教え、寝る時間になれば寝るように言う。昨夜も夕食の時間だと言ったのは年老いた男性だった。


『前に派遣した研究員の話によれば、子供は大人に交じって家のことをしていたと言っていたがな』

「そうなんですか? この超常現象に迷い込むタイミングによって変化があるんですかね」

『ああ。もしかしたら霧が発生するタイミングも変わるかもしれん。今日は眠らない方がいいかもしれんな』

「......霧」


 忘れそうになってしまうが、この超常現象はそう言う性質があるのだ。この集落にいる人間のほとんどが、霧に飲み込まれて死ぬのだ。バレットも、リンジーだってそうだろう。


「霧から逃げ切っても死んじゃうんですよね」

『前の研究員はそうだったな』

「......どうにかなりませんか。あいつらが死なない方法って、どっかにないんですか」


 コーデルは狼から逃げる子供たちを見る。全員無邪気な顔で遊んでいる。


 たった短い時間で彼らに自分は情が移ってしまったのだろうか。何て簡単な心の作りだろうか。


『......砂漠には本当に何も無いか、自分で確かめろ。もしこの超常現象に終わりがあるなら、どうにかして見つけるしかないだろう。今はお前しかその方法を見つけられる奴が居ない。分からないことはできる限り俺がサポートをする。霧から逃げた先にある何かからも逃げる方法を見つけろ』


「わかりました」


 コーデルは立ち上がった。向かうはリンジーのところであった。


 *****


 彼女は昼食の準備に勤しんでいた。青い布をまとったコーデルを見て「似合ってるじゃない」と笑いかけてくれた。


「実は、少しだけ此処を離れようと思うんだ」

 コーデルは彼女に言った。


「まあ、急に?」

「ああ、なんて言うか、少しやることを思い出した。すぐに戻ってくる。出来れば明日の朝に」

「そうなの。じゃあちょっとのお別れね」


 リンジーは微笑んだ。コーデルは「それで」と続ける。


「この砂漠はどのくらいの強さで風が吹くんだ?」


 *****


 砂漠が織り成す模様は毎日違う。この前は遠くにあった砂の山が今日は隣にあるなど、風によって砂は動くのだ。

 砂漠で迷う原因として、昨日と同じ景色がなかったり、または全て同じに見えてしまったりすることが挙げられるだろう。


 コーデルは集落を見失わないために考えた。


 今から自分は、どうにか彼らが生き残ることができるように、安全なルートを見つけるつもりだ。


 集落に来て今日で二日目。三日目には人を殺す霧が現れる。それから逃げた先にも死というのは待っているという。できることなら全員が生存するルートを確立してやりたい。


 だからコーデルは、明日までにできる所まで安全なルートを見つけに行くことにしたのだ。


 それに必要なのは空と風だ。星や月、太陽は方角を知る上で大事な手掛かりとなる。また、この超常現象では風は南から北に吹くそうだ。風の吹く方向は砂にでき上がる模様で分かる。これで東西南北は把握できるだろう。


 そうなればあとは出発するだけである。


 なるべく早く帰るよう伝えてコーデルは集落を出た。


 資料によれば、黒い霧のスタート地点はあの集落らしい。そうなれば早めの避難を心がけるべきだろう。


 砂の上は歩きづらいが、靴を脱げば火傷は免れないだろう。歩くスピードはかなり遅い。


 一方、太陽の熱は確実に布のおかげで遮断されていた。昨日のような熱中症が起こる心配は無さそうだ。


 コーデルは太陽の熱に負けないようにしっかり布を被った。


「ブライスさん、聞こえますか」

 コーデルは無線のスイッチを入れた。


「集落を出ました。取り敢えず安全に避難できるルートを探しに出てます。集落から出て東の方向に歩いているんですが、霧から完全に逃げ切るにはどのくらい時間が必要ですか」


『前のやつらの情報から考えるに約四日だな。霧の速度は人の方が早いから歩き続けていれば追いつかれることはない』


「分かりました」


『......本当に住民全員を避難させるつもりなのか?』


「もちろん」


 コーデルは振り返る。集落は既に見えなくなっていた。


 今頃バレットが自分の行方を探しているかもしれない。彼には心配をかけたくなくて何も言わずに出てきてしまったのだ。

 もし言えばついて行きたいと言いそうな気がした。


 少なくとも、自分の助手ならばそう言うだろう。


「もう少し歩いてみます。暗くなったら集落に引き返すつもりなので」

『そうか。くれぐれも気をつけろよ』


 コーデルは無線を切った。


 砂漠は風が吹かない限り音がない。草木が擦れる音などするわけがないし、ただ砂に反射した熱が顔の肉を焦がしにきている感覚と、自分の少し荒い呼吸音だけがあるのみ。


 生物の気配を全く感じないが、果たしてこの砂漠にあの集落の人間以外生き物は存在するのか。


 黙々と歩き続けること数時間。コーデルは遠くに人工物を発見した。


「......何だあれ?」


 それは明らかに人の手によって作られたものだった。集落にあった家よりも立派な建物だ。壁があり、屋根もあり、窓までついている。だがその大半が砂に埋もれていた。


 コーデルは軽く走って建物に近づいていく。人の気配はない。


「誰かが住んでいたのか......?」


 その建物は砂漠の暑さを耐えるには十分な大きさだった。中に入ると砂丘のようになっていて、奥まで行くと天井に簡単に手が届くほどだ。


「此処なら休めるな」


 二週間も歩くとなれば、所々に休む拠点は必要だろう。ゴールがあるのかまだ分からないが、それでも全員を簡単に死なせるような覚悟は彼にはなかった。


 少し歩くとまた同じような人工物があった。今度は近くにオアシスまである。これならば飲水に困ることは無いだろう。オアシスの近くには緑もあって、食料も此処でどうにかなりそうである。


 しかし、そろそろ時間も限界だ。空が赤くなってきて夜は刻々と迫ってきていた。もう少し時間があれば更に先のルートを予習できるが、明日の朝までに帰るのならば此処までが限界だろう。


 コーデルは来た道を戻り始める。風が弱いので自分の足跡はまだ砂の上に残っていた。


 既に空には星が見え始めている。コンパスもないので頼りにするのは空と風だけだ。夜も移動するとなれば、砂の模様など見えないだろうから、星だけが頼りになるだろう。


 どうか一人でも多くの住人が救えますように_____。


 輝き出した一番星に、コーデルはそんなことを祈った。

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