79:らしく、いきましょ
豊さんの人間性、こんな人ですよ、皆さん。覚えてましたか?
「そいつらってどんなやつ?」
とりあえずそいつらをなくとかしなくちゃいけないみたい。下手すると豊さんが無事では済まなくなる。
「見た目は普通の大学生っぽかったんです。普通に合コンで知り合ったので」
医大生が主催してる合コンで医者の卵と知り合えると割と人気の合コンらしい。そこに来てた中にいたのだという。
「自分たちは医者の息子で金とか持ってるし、別荘とかもあるから連れて行ってやるって言われて、舞い上がってたんです」
「その後、私たち三人とその人たち三人でカラオケに行ってそこで飲み物に睡眠薬混ぜられて……」
「気がついたらホテルに連れ込まれて写真とか撮られて……金払えって。持ってこなければネットにバラ撒くって」
「お金なんかないって言うと身体で稼げって言ってきて……客なら紹介してやるって」
「その内、街でも引っ掛けるようになって、知り合ったのが豊さんです」
「三人まとめて買ってくれたかと思うと何もせずに話を聞いてくれて、「僕がなんとかしてやる」って意気込んで……」
「少しの間、私たちをカモフラージュにして色々調べてたんです」
本当に豊さんらしい展開。
「てことは今日も会う予定だったの?」
「あ、はい。この後待ち合わせをしてました」
駅前の夢た〇んにはベンチが置いてある。そこにスーツ姿の男性が座っていればかなり目立つ。まあさすがに通報とかはされないだろうけど。公園とかじゃないし。
「待ちました?」
「いや、待ってない……よ」
声を掛けられて振り向いた豊さんが凍りつくのが目に見えて分かった。そりゃそうだろう。声を掛けたのが自分の妹なんだから。
「で、お兄はこんな所で何してるの?」
にこやかに笑う楓ちゃんの額には青筋が浮かんでるように見えた。あのー、経緯はちゃんと聞いてたよね?
「お兄のバカ!」
夢た〇ん内にあるドーナツ屋の中で楓ちゃんは叫んだ。あのさ、周りにお客さんいるんだからトーンは落として欲しいんだけど……
「いや、なんで楓がここに居るんだ? それに……水無月さんだっけ? いつも楓と遊んでくれてありがとう。あと、なんで霜月さんが一緒に?」
「運命ですから」
間髪入れずに澪ちゃんは答える。つっこまないよ!
「それはそれとして豊さん、あの三人から事情は伺いました。これからどうするおつもりですか?」
「決まってる。誰がやってるのか分かったら直接乗り込んで説得するつもりだ。話し合えばきっと分かってくれる!」
「豊さん、世の中には話の通じない人間とか自分の都合の良いようにしか物事を考えられない人間も居るんですよ」
ため息を吐きながら豊さんに言う。
「今のまま行ったら十中八九豊さんがボコボコにされて終わり、酷ければ入院とか命の危険とかありますよ」
今の世の中、そういう人間多いんだよね……こないだも地上げとかであったし。
「しかし、僕は彼女たちを放って置く訳にはいかないんです」
ギリッと拳を握って豊さんは声を絞り出した。決意は固いようだ。
「……分かりました。つまり、その人たちをとっ捕まえればいいんですね」
「勿論だ。だが、警察に言えば彼女たちが傷付く結果になるかもしれなくて……」
悔しげに豊さんは言う。
「僕にもう少し力があれば……」
「力が欲しいですか?」
「いや、本当は欲しくない。暴力は嫌いでね。でもこの件は解決しないといけないんだ。どうすれば……」
歯を食いしばって俯く豊さん。
「簡単ですよ。私がやればいいんです」
「……は?」
私があっけらかんと事も無げに言うと、豊さんの目が点になっていた。




