76:問題は山積み
黒木さんと太田君の因縁についてはどこかでやるかもしません(笑)
とりあえず犬猿の仲って事だけ理解しててください。
「で、問題がないとでも言いたいのかい?」
開口一番に太田君が言う。次の日の朝、挨拶ついでに黒木さんの事を報告したらこうなった。
「えーと? むしろこれでこの街が平和になるんじゃ……」
「あのね、霜月さん。分かるように説明すれば、この街が火薬庫になってるってことだよ。一触即発。一次大戦期のバルカン半島を思い描いてくれれば分かるんじゃないかな?」
あー、まあ、あれは民族紛争だったけど、各組織の利害を考えたらそうなのか。
「反社会的な組織が増えれば僕らもそれに対応しなくちゃいけなくなる。考えるだけで気が重くなってきたよ」
どうやら太田君の理想としては大組織を追っ払ってその勢いで地元の組織と不法滞在外国勢力を排除したかったみたいなんだけど……そういう訳にもいかなかったみたいね。いや、私も和解できるとは思ってなかったもん。トップに座ってる人ってなんかこう考えてる事がよく分からないよね。
「まあこうなっちゃった以上は仕方ない。状況が動かないように成り行きを見守らなきゃな。増員できればいいんだけど……」
「え? でも前にやりすぎたって言ってたくらいだから戦力過多じゃないの?」
「そうじゃないよ。一人一人の能力が高いだけで人員的にはちっとも足りてないんだよ。助っ人状態の人も居るしね」
ハルの事かな?
「まあ、なんにせよ知らせてくれて助かったよ。これで次の手も打てるってもんだ」
「次の手?」
私は小首を傾げた。
「うん、とりあえず地元の束ねだね。特に問題は不法滞在外国勢力かな。大陸と近いから割と来やすい地理だからね」
確かに西日本で一番大陸に近い県だけの事はある。船で日本海を渡ってくる人も多いらしい。
「私はそっちの方はさすがに手は出せないよ?」
そこまでやるとお節介な正義の味方になってしまう。そういうのは適任者に任せないと。
「いや、むしろ大人しくしていて欲しいんだ。君たちが動くと大きくなるからね」
多分バレないようにできるとは思うけどそこまでやる義理もないし、情報提供だけでも十分でしょう。
などと話してたら副支店長が来た。
「やあ、二人ともおはよう。いつも早いね」
「「おはようございます」」
とりあえずいつも通りの日々が始まる。
そう思ってた時期が私にもありました。
仕事中に黒木さんが来た。それで定期をして行った。
「ノルマとかあるんだろう?」
って言いながら。いや、大変にありがたいんだけどこのタイミングだと……あ、太田君帰ってきた。
「ただいま戻り……何故ここに居るんだ?」
すうっと太田君の目が細くなる。身体は横に太いけどね!
ごめんなさい、ちょっと緊張感に耐えられなかったんや。
「ほう? 貴様もここだったか……こりゃ盲点だったな」
黒木さんが舌なめずりしてる。何が起こってんの?
「大人しくしてくれるんじゃなかったのか?」
「組織としては大人しくするが個人的には暴れても構わんよ、俺は」
「……ここでやる気か?」
「いや、そんな事したらこのお嬢さんにボコられちまう。表に出ろ」
「確かに、ね。それならとっとと決着つけてやる。首を洗って待っ」
「はい、そこまで!」
私が堪らず大声を出した。
「太田君は帰ってきたんだから伝票の処理とかあるでしょうが。早く出してくれないと手形交換に出せなくなるよ? それから私たちの事務も滞るんだから」
くるりと黒木さんに向き直って言った。
「黒木さんはお客様ですが店舗近辺での暴力行為は御遠慮ください。もうすぐ定期証書が出来上がりますので今しばらくお待ちください」
「「……あ、はい」」
と声を揃える二人。こんなことで喧嘩してもらっちゃ困るし、原因が私にあるとかで叱られたらもっと困るじゃないか!




