75:混乱と把握
黒木さん再登場です。えーと、とりあえず出てきますがボス的な立場ではないと思います。なんだかんだで貧乏くじだし。あれ? もっとかっこよかったはずなのに……
地元に帰って来てから数日、私のところに再び黒木さんが現れた。……うん、イケメンのオッサンが仕事中に「あんたに逢いに来たんだ」なんて店頭で言われたらそりゃ先輩が食いつかない訳が無いよね。仕事終わりに待ってるって言葉を残して去っていく彼を見送りながら詰め寄り方が凄まじかったよ……
「ねえねえ、ひとみっち、今の誰? チョーイケメンじゃん!」
「あー、その、ちょっとした知り合いでして……」
「ええー? でもなんかすっげー意味深に笑ってたじゃん? あれは絶対ひとみっちに気があるね。見てる視線も熱っぽかったし」
熱っぽかったのはきっと怒りとかそういうのだよ、絶対! あと、手を出したくても出せない苛立ちとかそういう。しばらく追及は続いたけどさすがにヤクザとの問題に先輩巻き込む訳にもいかないのでなんとか取り繕ったよ。今日だけで対話スキル三レベルくらい上がった気がする。
「お疲れ様です。お姉様」
いつもの様に出口には澪ちゃん。そして今日はもう一人、黒木さんもいた。
「ちっ、あまり待たせんじゃねえよ」
「お嫌なら帰っていただいてもよろしいのですけど?」
「ああ? 嬢ちゃんには関係ねえだろ?」
「私とお姉様の邪魔をする奴は排除しますわ!」
あー、こらこら、待ちなさい二人とも。そんなにヒートアップしないでよ。ここ、まだ支店の前なんだよう。
「あー、とりあえずゆっくり話できるところに移動しましょう」
という訳でジョイフルへ。抹茶あずきのかき氷食べたい……アイス付きで。頭を冷やさせないと。
そして配置的には私、澪ちゃんが隣同士、対面に黒木さんという構図。
「それで、今日わざわざ来たのはなんでですか?」
「ああ、本部での採決が終わったからな。その結果報告だ」
あ、なるほど。そういや連絡先とか教えてなかったね。どうするんだと思ってたら直接伝えに来たわけか。しまったな、メールのアドレスくらい教えとけばよかった。
「結論としちゃこの街に手出しはしねえ。そんでほかの組織にも手を出させねえ。その為に出先機関を置くってところだ」
「出先機関?」
「そう。あんたが他の組織に取り込まれないように監視しとくって言った方が正しいか。敵に回したかないからなあ」
懐からタバコを出して咥えて火を探していたが、禁煙席であったことに気づいたらしくタバコをしまってため息をついていた。
「気持ちはわからなくもないですけど……私もおじい様から似たような事を言われておりますし」
あれ? 澪ちゃんのおじいさんって日本の黒幕とかなんとかいう人だよね? マークされてんの、私?
「あ、もちろん私がお姉様をお慕いしてるのは全く関係ありませんわ!」
堂々と胸を張って言われた。うん、そこは疑ってないよ、全然。
「まあ俺もこんな仕事は嫌なんだがな。あんたの危なさを一番よくわかってんのが俺だろうって事でお鉢が回ってきやがった。本当に厄介だよ」
うーん、なんというかすいません? まあ色々あるよね。
「って事でよろしく頼むわ、嬢ちゃん。なるべく目立たんようにはしとくからの」
下手に目立たれると先輩が色々うるさいのでその方が助かるのは助かる。
「しかし、ウチの子飼い、関西の大組織、地元のヤクザ……それに密入国の外国人、混沌とした状況ですわね」
そう言われちゃ元も子もないけど確かに一触即発かもしれない。あ、青年団の人たちにもこの件伝えとかないと衝突した時にヤバいかな? とりあえずハルから伝わってるといいんだけど。一応太田君には言っておかなきゃね。




