72:上手なデートの誘い方
バトルよりはこっちの方が私の好みなんです。という訳でお話し合い、というか白旗です。次回は旅行かな?
街にそびえ立つ旅客会社の経営する高級ホテル。そのスイートルームにその人はいた。スイートルームのスイートって甘いって意味じゃないんだよね。sweetじゃなくてsuite。意味は一組の家具とかホテルだと寝室・居間・浴室までひとつづきになってるお部屋の事。お値段も甘くないしね!
そこのフロアをまるまるひとつ借り切ってたんだ。まあこれは調べたら分かったんだけど。そこには兵隊さんが沢山いた。地元のヤクザを抑え込むために連れてきたらしい。私たちの地元のヤクザはテキ屋系が多くてお祭りの時とかに屋台で売ってる気のいいお兄ちゃんやおっちゃんばかりで喧嘩はあまり好きではないみたい。だからこの警備も念の為以上の意味はなかった。
もちろん私は真正面からそれを突破した。エレベーターはキーを持ってないとその階に止まらないようになってたのでグレムリンにそこだけ壊させた。エレベーターの扉が開いて私が降りると誰何の声が聞こえた。
「こんばんは。黒木竜也さんはいらっしゃいますか?」
努めて丁寧に言ったが全く取り次いでくれなかったので見張りの方にはゆっくりしてもらった。弾丸は全てグラビトンで叩き落として私には一発も届かなかった。
そして部屋のドアを軽くノックする。
「誰だ?」
渋い声が聞こえた。あれだ、スネークだ。
「黒木竜也さんですね。少しお話ししたい事があるんですけど」
「なんだ? おい、見張りはどうした。なんでこんなやつがここにいやがる!」
「見張りの方ならお疲れで休んでおられますよ」
ニコニコと笑顔を浮かべた。
少しの沈黙の後、返答が返ってきた。
「わかった、入ってくれ」
さて、鬼が出るか蛇が出るか、いよいよラスボスだよ!
……って思ったらお茶が出ました。はい。なんかいい匂いのお茶です。
「ティーバッグですまねえな。世話役までやられてるみたいでよ」
「ああ、すいません、やりすぎました」
少し警戒するが水の精霊も騒いでないので毒物は入ってない様子。口をつけるとちょっと熱い。
「なあ、あんた、なんなんだ?」
「何、とは?」
「あんたからはやばい臭いがプンプンしてる今すぐ逃げ出したいくらいだ」
え? お風呂とかはちゃんと入ってるよ! レディにそんな事言うのは失礼でしょ。ぷんすか!
「チャイニーズマフィアと銃撃戦やった時もこんな絶望的な感覚はなかった……あんたが噂の魔女か?」
は? 魔女、だと?
「この街に来たばかりの時に銀行強盗があって、不思議な事に犯人が自滅した」
ぽつりぽつりと彼は話し出した。
「それからチンピラが不思議な力で叩きのめされ、地上げも何故か不思議な力で邪魔された」
間違いなく私だなあ。
「そして、闇金やカジノまで被害が及んだんで動かざるを得なかった。まあ恥ずかしい話、仕手戦での負けも堪えた」
あ、それはハルですね。私だけじゃなかった。
「そんで最終的にはこのザマだ。全てが上手くいかなかったことなんて俺の人生ではじめてだよ。あんた、スゲーよ」
「えーと、それだけなの?」
思わず聞いてしまった。だって絶対許せないとかそういうのが来ると思うじゃない?
「いや、さすがに身の程は知ってる。あんたにゃ近づいちゃいけねえって分かるよ。だからさしあたって俺たちはこの街から手を引く事にした。本部に言えば失点免れねえが仕方ねえ。命あっての物種だ」
全面降伏……まあそれでいいなら私たちとしても楽は楽だけど。
「それで、ものは相談なんだが……いっぺんうちのオヤジに会ってくれないか?」
え? 両親に会うってプロポーズ的な? そんな、私まだ会ったばかりなのに……いや確かにイケメンだしちょっと歳はいってるけどまだ許容範囲だと思う。
「……そうして貰えたら二度とこの街に手を出そうって阿呆も出ないだろうから」
あ、そっちの意味ね! も、も、も、もちろん知ってました!




