64:つたわる空回り
ひとみんのやる気だけが空回りしてます。まあ太田君が道しるべを次回示してくれるんじゃないかと思います。次は太田君回だよ!(いや、今回もそうですが)
真っ暗な街角。覗いた勤務先。書類とにらめっこ見覚えあるFUTOME☆
という訳で出直して来たよ。やっぱりこの時間でもまだ帰れないのか。まあ仕方ない。ちなみに他の人たちは帰ったらしく一人で処理してる。誰か手伝ってあげればいいのに。まあせっかくだからセンサー類全部騙して入る。鍵は持ってるし使わなくても入れるんだけどね。
「太田君」
「うわぁ!」
大声が響く。まあ誰も居ないから良いんだけどね。
「私だよ、私」
「あ? ああ、霜月さんか」
「はい、差し入れ」
地域によって呼ばれ方の違うあんこの入った焼き菓子を買ってきたのだ。
「あ、大判焼き。僕好きなんだよね」
喜んでくれるのは良いんだけどぶっちゃけ甘い物はだいたい好きだよね。
「それで、こんな時間にどうしたの? まさかとは思うけどわざわざ手伝ってくれに?」
「私がそんなお人好しに見える?」
「なんだかんだで結構なお人好しだよ。自分では気づかないつもりなのか分からないけど」
太田君がクスリと笑った。そして直ぐに真剣な顔に戻った。
「でも多分今回の件は違う。何が知りたいの?」
「暗崎興行について」
「……企業舎弟って言って分かるかな。暴力団のフロント企業だよ」
ああ、何となくそんな気はしていた。
「でも、なんでそれで太田君が慌ててたの?」
「実は丸角不動産は前から傘下に入るように脅されててね。何人か繋がりのある社員も居たんだけど。ほら、高宮さんの所を担当してた山城とか」
……誰だっけ?
「でも、まあ何度も失敗してこのまま終わりかなって時にあの振込だった」
「振込がそんなに重要なの?」
「つまりね、あれは上納金なんだよ。傘下に入りますって意思表明」
なるほど。そういう事か。
「三井さんと僕で社長を説得してる間の出来事だったからびっくりしてね。後で聞いたら社長の娘さんが誘拐されてたんだ」
おいおいおいおい! なんか物騒な話になって来たよ?
「それで方々探して居場所を突き止めてなんとか助け出したって寸法さ」
「あ、じゃあ太田君に懐いてたイマドキのJKって」
「お察しの通り、社長の娘だよ。助けたら懐かれちゃって」
ふうん……ってそれってかなり危ない橋を渡ってるって事じゃないの?
「そんな事してよく無事だったね」
「あー、まあ、なんとかね。大分苦労したけど見張りも少なかったから」
「で、今はどうしてるの?」
「助け出した事はもう知られてるから次の動きがあるかもしれない。三井さんが入り込んでるヤクザの見張りをしてくれてるけど」
てことはカレー屋であったあの人がヤクザの責任者かあ。
「で、ここまで喋ったからもう全部バラすけど、今、恐喝とか誘拐の証拠を集めてるところでね。居残りで整理してたんだよ。ここなら怪しまれないからね」
つまりはまた誘拐される前に相手を追い出そうという事か。それならそれで協力してもいいかなあ。この街の平和の為に、というか私の心の平静の為に。
「それで、証拠は集まったの? なんなら手伝うよ?」
「あー、霜月さんの魔法があればかなり違うと思うんだけど……でもいいの?」
「何が?」
「だって、どう考えてもこれは「日常」とはかけ離れた世界の話だよ」
その通りだ。私は平凡な普通の日常が送りたい。でもね
「あのね、これは私の日常を守る為の活動なの。周りの人が嫌な目にあってるのに自分一人で悠々と暮らしてるなんて出来ないよ」
太田君はしばらく腕組みをして考え込んでいたようだけど、やがて目を開いた。
「よし、分かった。そういう事なら手伝ってもらおうかな。その前に……話さなくちゃいけないこともあるしね」
話さなくちゃいけないこと?




