59:私にできること
このお話で葵さん編は完結です。次はお仕事関係かな。忘れてないとは思うけど、このこの本職テラーだからね!
銃弾飛び交う砲煙弾雨の中、私たちはただ、歩みを進めた。一歩。また一歩。相手の顔が余裕から焦燥に、そして恐怖に次々と歪んでいくのが見える。私たちは蹂躙する。ただただ蹂躙する。これは戦争などではない。全くの虐殺、いや、単なるゲームにすぎない。跪いて命乞いをする奴らを一つ一つアリのように潰す。そこには一切の慈悲は無く、一切の躊躇もなかった。
などという光景が繰り広げられると考えてた時期が私にもありました。あれかな。ハルの家でやったぴーゆーなんとかってゲームのせいだよね。心が荒野になるよね、あのゲーム。
実際にはドア吹っ飛ばして部屋に入ったら全員が呆然としてたから、そのままバインドで全員縛っただけ。観葉植物ある所はドライアドさんにいつもお世話になってます。今度、良さげな肥料とか買ってあげよう。
「それで組長さんは誰かな?」
「……オレだ。これは一体なんのマネだ?」
「保育園から手を引いて欲しい。園長先生からも。言ってる意味分かるよね?」
「は? 何言ってやがる。あそこを落とすためにどんだけ手間かけたと思ってんだ! 寝言は……」
ドコン! 床が派手に凹んだ。賃貸ビルだったらごめんなさい案件だわ。
「あのね、私たちはお願いに来てるんじゃないの」
「は?」
「受け入れられないならこのまま潰すだけだから」
「てめぇ、ふざけんなよ。こんなことしてタダで済むとでも思ってんのか? ウチのバックには丑寅連合がついてんだからな!」
ジタバタ暴れる組長。なんというか無様ではあるが鬱陶しい。ん? 澪ちゃんどこに電話? あ、はい、丑寅連合のお偉いさんと知り合い? 昔遊んでもらって可愛がってもらった?
「あのー」
「なんだ? 怖気付いたのか?」
「いえ、その本部長と名乗られる方と電話が繋がってるんですが、会話します?」
「はあ? 本部長がテメーらなんかと知り合いな訳が……オイ、本部長名乗るとはいい度胸し」
し? あれ? 止まった。
「え? あの、いえ、そんなつもりは、ええ、本当です。いや、違うんです。そういう訳では、はい、はい、いえ、もちろんです。あの、その、知らなかったんです、本当に、そんなつもりは、戦争とか、勘弁してください……」
どんどんと声のトーンが下がっていく。何か話してるみたいだけどまあ悪い方向には進んでないよね。
あ、電話終わった?
え? 土下座? いや、縛られてるままだからなんか罪人が首を切られるために差出してる感じ?
「大変申し訳ありません。もう二度と手出しはしませんのでどうかどうか許していただきたい。なんなら案を持ってきたやつとか仕置して破門しますから!」
すごい変わり身だね。高速のテノヒラクルー、私じゃなきゃ見逃しちゃうね!
「まあ、私としてはもう手出ししないならこれ以上何もするつもりもないけど」
そこでやれやれとか言ってる高校生組とハル。あなたたちには後でお話があります。
とりあえず確約の誓約書をもらって組事務所から出た。あ、拘束は解除したけど誰もかかっては来なかったよ。
「終わったねー」
「ありがとうございました!」
葵さんが深深と頭を下げる。縦だとよく揺れるよね、うん。
「やめてください。友だちじゃないですか。出来ることをするのは当然ですよ」
私の言葉に心底嬉しそうににっこりとした葵さん。この笑顔こそが最高の報酬だよ。つられて私もニッコリ。
「あー、これは……」
「なんかまたライバルが増えそうな予感しかしないのですけど……」
「でも分かるな。ひとみさん素敵だもん」
「ちょっと、楓? 詳しく聞かせてもらってもいいですわよね?」
「澪、ちょっと顔怖いんだけど……」
なんかわぁわぁ騒がしいけどこういうのって日常が帰ってきたって気がするよね。
さて、また明日からも頑張ろう!




