55:穏やかな幕間(まくあい)
保育園の交渉本編は次回です。今回は顔見せです。まあこの展開なら誰が悪いかなんてだいたい分かるよね?(笑)
保育園は駅の近くにあるいい立地で利便性が高い。おかげで利用者も多く助かってるお母さん方も多いと聞く。スーパーなども近く、私が通り掛かるのもそのスーパーでタイムセールがあるからだ。また、病院も近いので万一の時にもすぐに対応出来るという好条件。まあ、元々はお寺で、保育園を併設したらそこの近所に色々集まってきただけらしいんだけど。
「しかし、なんでまた地上げが……」
「住職の息子さんが借金まみれで土地を勝手に売っちゃったそうで」
「正確には母屋の方ですわ。だから残りの保育園の土地があればまとまった広さになりますの」
あ、居たのね澪ちゃん。というかあなたはまたいつの間に……
「どうせお姉様は首を突っ込まれるだろうと思いまして調べておきました」
ああ、その通りだよ、チクショー。放っておけるわけないじゃない。友だちの事だもの。
「代替地は一応用意してあるそうで。まあだいぶ遠くなるんですけど」
と指さしたのは山。この辺りでまあまあ大きい山。道の途中にラブホが建ち並ぶくらいの山。って、さすがにラブホの近くに保育園は認可おりんだろうが!
「そんなこと向こうには関係ないんですの。用途は二の次で、飽くまで単なる土地取引ですから」
しっかしまた不動産トラブル。こんだけ田舎だと他に悪事のやりようもないということなのかもしれない。お隣の県まで行けばヤのつく人たちがしょっちゅうバンバンやってるらしいけど。
「で、その人たちは今来てるの?」
「あ、いえ、もうちょっとしたら来ると思います」
「じゃあご一緒させてもらっても良いかな?」
「園長先生に聞いてみないと。多分大丈夫だと思うんですけど」
という訳で園長先生にお会いしたが余り良さそうな方ではなかった。ええ、この人なんです。借金して母屋売っちゃった人。
「なんだね、君たちは女子供には関係ない。帰りたまえ」
とても居丈高で些かカチンと来る。まあ関係ないのはその通りなのでそれを言われると……ん? あれは澪ちゃんのボディガードの人? 園長先生を引きずって行ったけど何をコソコソ話して……
「お、お待たせしました! いやあ、丁度困っていたところなので大歓迎ですよ!」
華麗な高速テノヒラクルーでした。
「と、とりあえず話を聞かせてください」
応接室のソファーに腰掛けて話を聞いた。まあ掻い摘んで話すとお金ないから借りたらいつの間にか借金の額が膨れ上がったそうだ。それで増えた借金のかたにこっちも寄越せって言われたそうだ。やっぱり悪党ってのはやり方が汚いよね。
「こんにちは。どなたかいらっしゃいますかな?」
おっと来客のようだ。これはきっと地上げ屋だろう。
「私達も立ち会っても構いませんか?」
「あ、ありがとう、助かるよ。なんとかしてくれ」
とまあ縋られたから私も出張る。澪ちゃんは未成年だからこういう場には出したくないので裏方待機。私と園長、そして葵さんで話を聞くことになった。
「こんにちは。どちら様でしょうか」
事あれば威圧しようと思って顔を出してみたけど出てきたのは人の良さそうなオジサンって感じの方。
「あー、私、丸角不動産の三井と申します。土地の売却の件でお話をお伺いに来たのですが」
「あ、は、はい、こ、こ、こちらへっ」
思いっきり意表をつかれて戸惑ってしまった。ともかく彼を応接室に。彼は応接室に入ると資料をカバンから出し始めた。
「えー、こちらが現在提示させていただいてる予算です。今のところここの土地の買い手はまだついて居ませんが、買いたいと言う方は何人がいらっしゃいますので売っていただけるならすぐにでも売買は成立すると思います」
…………あれ? なんか思ったよりも腰が低いんだけどどういう事?




