49:どこにでもある『正義』(私の基準だけど)
えー、今回はおしおき編その一です。悪人というかお仕置きしないといけない人はまだ居ますので次回以降のお話になります。
問題の場所はあるビルの三階にあった。まだ明かりがついてる。ふむ、これは好都合。書類だけでも確認しようと思ったんだけどね。遠慮なくおじゃましよう。突撃、隣の金融業!
「こんばんは」
「おや? こんな夜遅くに何のごよ……」
口ごもられた。いや、まあ例によってはんにゃのお面だから目立つっちゃ目立つけど。
「文月葵さんの借金の事でお話に来ました」
「そ、そうですか、こちらへ」
うーむ、再起動までの時間は割と早かったな。こういう事多いんだろうか。
「どうも、はじめまして。私は近藤と申します。ここの事務所の責任者をやらしてもらってます」
ご丁寧に名刺をくれた。なんか名前が太文字なんだけど……
「で、おたく様はどういうスジの方ですかね?」
「彼女の友人です」
「単なる友人……なるほど」
「彼女の父親の借金を彼女に請求してると聞いてどういうつもりか聞きに来たんですよ」
「どういうつもりも何もあなた、返さない方が悪い。違いますか?」
「父親の借金なんですけど?」
「そりゃ親が作った借金の責任を子供がとる。そんな間違ったことじゃないでしょう。我々としても善意で貸してるわけじゃない。返してもらわないとこっちが困るんですよ」
「貸金業法違反ね」
貸金業法第二十一条、貸付けの契約に基づく借金の取立ての時は、人を脅したり、人の私生活若しくは仕事の平穏を害するような言動をしてはだめ。借金した人以外の者に対し、代わりに借金返せと要求するのも勿論禁止。伊達に銀行員はやってないよ?
「うるせーな、そんな事知るかよ。ウチは貸金業法なんて導入しちゃいねえんだよ!」
「つまり、闇金ってこと?」
「その通りだよ。だからいくら貸金業法とか騒いだって痛くも痒くもねえんだよ!」
私は思わずニッコリ。いや、はんにゃで顔は見えないんだけどね。
「じゃあ、安心して実力行使出来るわ」
「は?」
「ストーム!」
私の一言に周りにいた風の精霊が呼応する。女を売っぱらって金を儲けようとする奴らなんてどうなっても構わない。だから、部屋の中に嵐を吹き荒らしてあげた。
「な、なんじゃこりゃー!」
恐怖に彩られた叫び声が響くが私は一向にかまわん! 悠然と鍵のかかったキャビネットを探す。書類だからこの辺りだよね。あー、風がちょっと鬱陶しいから止めよう。
「うわっ」ドサドサドサドサ
男たちが落下していった。気絶してる人もいるみたい。でも私は気にしないよ?
「てめぇ!」
あ、殴りかかってくる? まあそれならそれで構わないけど。銃弾よりも軽いものに私の障壁が破れるとは思わないし。まあでも邪魔だから……あ、観葉植物。
「おーい、ドライアドさん、いる?」
「いるよー。寝てたー」
そりゃいつもでしょ。
「あのさ、そいつら邪魔だから縛っといて。バインドだと自分で制御しなきゃだから面倒で。今から書類読まないといけないからさ」
「んー、まあひとみの頼みだしいいよ」
と言うが早いかツタがあっという間に男達を締め上げた。キャビネットはこじ開けたし、とりあえず書類を……あ、これかな? 文月雄一郎。借りた金額は100万ねえ……どうせ利息制限法よりも高い利息とってんでしょ、闇金だし。現在残高が……850万? いやいや、さすがにボリすぎでしょ、これは。あー、これ、根抵当で包括契約結んでんのか。限度額まで何回でも借金出来るってやつ。連帯保証人が葵さんになってる……でも、この筆跡明らかに女性のものじゃないよね? という事は偽造か。これは黒だね。真っ黒だ。よし、処分するか。多分これだけだと思うし、顧客ファイルの中に入ってないってことはこれ以上のものはないってことだものね。
「ファイア」
ぼっと契約書が燃えた。
「てめぇ、何しやがる!」
威勢いいな。ちょっと脅しとこう。
「今の見てわからない?」
「ああん?」
「じゃあ次は誰か実際に燃えてみる?」
息を呑む音が聞こえた。普通なら信じないであろう寝言みたいな話。しかし、さっき嵐が起こって、今は捕えられてるよね。この状況だとちゃんと認識出来るでしょ。
「……わ、わかった。もう文月親子には近づかねえ。約束する」
よし、満点。
「それならいいわ。ならあまりアコギな真似はしないようにね」
小腹も空いてきたし帰ろうっと。あ、ドライアドさんはそのまま捕まえておいて。で、朝になったらはなしてあげてね。




