42:よろしい、ならば戦争だ
お仕置きタイムですが、メインはそこじゃない気もします(笑) ともあれ、これで澪ちゃん編は終了です。
さてと、指示を出してる人の位置は分かるからそこまで行ってみよう。周りを警戒しながら私はそのリムジンの方へと向かった。数台車が停まっており、その中でも一番立派なリムジンが真ん中に鎮座している。私は迷うこと無く魔法を使った。
「サイレンス」
辺りを静寂が包み込んでいった。そしてもう一つ。
「ダークネス」
空間を闇で包む。これで中で何が起きてるか聞こえないし見えない。準備はおっけー。
「こんにちは」
コンコンと窓をノックする。パワーウィンドウが降りて澪ちゃんの兄が顔を表した。
「柳賢三さんですね?」
「なんだ、貴様は?」
「澪ちゃんの、お友達、ですよ」
「なんだと!? おい、誰かコイツを……」
「呼んでも誰も来ませんよ。二人きりです」
「貴様!」
賢三さんは懐から銃を取り出し、迷うこと無く発砲した。パァンという乾いた音が響く。しかし、その銃弾は私には効かない。薄くチタンで体表面をコーティングした上にそれを二層重ねている。余程のパワーがないと貫通しない。という訳で打つ度に鈍い音を立てて銃弾が弾かれていく。でも、賢三さんは構わず連射を続けた。効かないことを理解出来ても納得出来ないのだろう。弾を撃ち尽くしてもカチンカチンと音をたてながら引き金を引いているトリガーハッピー状態だ。
「クソ、クソ、何故だ!」
賢三さんの顔が恐怖に引きつっていた。そんなに怖いかねえ、私? あ、そういえばはんにゃのお面は着けたままだね。
「私からの要求は澪ちゃんから手を引く事。呑めますか?」
「だ、誰がそんなの納得するか、アイツは俺の道具……」
皆まで言わせない。私はリムジンのボディに手を当てて思い切り圧力を送り込む。べコンという音がして防弾仕様のボディが陥没した。
「答えは聞いてないんですよ。あなたに出来るのはただうなずくか、力なくうなずくかです」
もちろんハッタリなのだが。さすがに人を殺すのは私も気が咎めるし焼肉が美味しく食べられそうにないもの。
「ひっ、わ、わ、わかった、いえ、わかりました。今後一切澪のやつには関わりません!」
「もし、約束を破ったら今度はあなたの頭がこうなりますから覚えていてください」
と陥没した車体を指差しながら言い放った。そして気絶させるべく魔法をかました。
「シェイド」
黒い塊が賢三さんの頭に飛んでそのまま賢三さんは気絶した。そしてその場から離れる。夢でなかったことを示すようにそこにはんにゃのお面は置いておいた。離れた場所で魔法を解くと車の辺りが騒がしくなった。そして、彼らは撤収準備を慌ただしくはじめてそのまま撤退していった。
「ふう、これで一先ずは安心かなあ」
さて、それじゃあ戻りますか。澪ちゃんとハルが待ってるからね。
さて、後日談というかそれから澪ちゃんの周辺には賢三さんの手は伸びなくなった。なんでも賢三さんの持っている暴力装置だった警備会社が潰れたそうだ。賢三さんはお金を回そうとしたらしいが、大量の売り浴びせがあって焼け石に水だったのでそのまま手を引いたとの事。という話をハルから聞いたんだけど……それってハルが仕掛けた仕手戦だよね? 空売りで大分儲かったって言ってたもんね……そして、今日の焼肉パーティーの予算はそこからだって聞いた。まあ収入に比べて微々たる額ではあるんだけど。
「それじゃあ、澪ちゃんの無事を祝いまして、かんぱーい!」
ハルの音頭で焼肉パーティーが始まった。と言っても参加者は私とハルと澪ちゃんだけなんだけど。あ、もちろん澪ちゃんは未成年だからノンアルコールです。
「良かったの、ハル」
「何がー?」
「や、だって、今回柳グループの三男坊に喧嘩売ったんだよ? 私は良いし、澪ちゃんは仕方ないけどハルは巻き込まれる必要なかったじゃない」
「なーにいってんのさ。ひとみんがやりたいから私がバックアップする。その為に私は金稼いでんだもん。まさか魔法使いになるとは思ってなかったけどねー」
ハルが楽しそうに笑う。
「でも、それでも目をつけられたらヤバいよ?」
「ひとみんが笑ってて澪ちゃんも楽しそう。それでいいじゃんよー」
「でも……」
「それ以上言うなら……責任取って結婚してくれる?」
「はあ?」
思わず変な声が出た。
「いや、だって元々はひとみんとの結婚資金貯めるために始めたんだし」
知らんわ!
「ちゃんと養ってあげるって言ったよね?」
言われた……気もする。だけど、だけど……
「抜けがけはいけませんわ。お姉様は私のものです!」
いや、ややこしくなるから澪ちゃんは黙ってて欲しいんだけど。
「恩は恩に感じてます。でも、それとこれとは話が別ですの」
「よろしい、ならば戦争だ!」
と、ギャーギャーと言い合いを始めた。内容については「どれだけ私の事が好きか」みたいなやつだったので割愛させてください。お願いします、なんでもしますから!(なんでもするとは言ってない) ともあれ、夜は喧騒のうちに更けていきましたとさ。




