33:ストーカー水無月 発動編
襲撃まで書こうかと思いましたが今日はここまで。次回の楽しみに取っておきます。
「おや、お取り込み中の様ですね」
ふと声が掛けられた。バカなっ、この私が接近に気が付かなかっただと!? ……すいません、猫に心奪われてただけでした。
「……取り込み中じゃ帰ってくれ」
凄まじく不機嫌そうな高宮さん。
「山城さん、今は私たちが先客ですので……」
「おお、これは太田さんじゃないですか。すいませんが、譲っていただけませんかね?」
「いえ、高宮さんとは約束してますので」
「そうですか……まあそれならそれで私も社長に報告させてもらうだけですけどね」
そう言えば、丸角不動産も太田君の担当範囲だっけ。となると強くは出れないよね……よし、ここは私が。
「あのー、お知り合いですか?」
「おや、あなたは?」
さも今気づいたかの様に言う。……いや、本当に眼中になかったのかもしれないけど。
「あ、はい、テラーの霜月ひとみと申します」
丁寧に頭を下げた。そのまま見てると睨みつけそうだったからね。
「……なるほど。では今日の所は帰りましょう。後悔しないうちにいい返事を聞かせてください」
そう言って奴はスマホを取り出しつつきびすを返した。
「何なんですか、あの人?」
「奴は不動産屋でな、ここの家を売ってくれとずっと言われておってな」
「丸角不動産の社員でして。腰は低いですが押しが強くてね」
高宮さんの説明に太田君が付け足す。という事は太田君知ってたんだ。
「売られないんですか?」
「ここにはバァさんとの思い出が詰まっておるからな。それに無くなったら猫も遊びに来れなくなるしの」
とても優しそうな声だった。本当に猫が、この場所が好きなんだ。
「とは言っても高宮さん、彼は諦めないで来ると思いますよ。この辺りで残ってるのは高宮さんのお宅だけですから」
という事はこの辺の他の区画は買取済みなのか。ならなかなか諦めないよね。マンション建てるにしろ何にしろ。まあこのド田舎でマンション建ててどうすんだって話はあるけど。
「ワシがくたばった後なら構わんよ。その時は息子に任せる。ほんの一、二年じゃろうに」
いいえ、高宮さん、このお姿見てればあと十年くらいは大丈夫だと思います。多分奴もそう思ってるんじゃないかな?
太田君の都合もあるのでそのままおいとました。風の精霊に見張っててもらおうとこっそり呼び出して庭で遊ばせておく。ここは緑もいいし、車もそんなに通るような道じゃないから空気は汚れてないし置いといても大丈夫でしょ。そして私は支店に戻るよ。お仕事中だしね。しかし、これはまた少し急がないといけないかな。
その日の仕事終わり。
「お姉様、お疲れ様です!」
いつもの様に澪ちゃんがらいた。そう、特に描写してないけどいつも居るんだよ……
「ああ、澪ちゃん、お疲れ様」
「何か考え事ですか?」
「うん、ちょっとね」
まあこの子に話しても仕方ないだろう。いや、また調査してもらってもいいけど。
「山城真司、丸角不動産社員。年齢は34歳、血液型はB型、交際関係は少し後暗いところあり」
「えっ?」
「お姉様の悩みの種、なのでしょう?」
「ど、どうしてそれを……」
「運命ですから」
サラリと言ってのける澪ちゃん。いや、ありがたいけど怖いよ!
「でも、どうして……」
どうして手に入れたのか、手段を聞いたつもりだったのだが、返ってきた答えが……
「だって、お姉様が猫と戯れる姿はとても可愛かったですもの。永久保存版ですわ!」
おい、ちょっと待て、なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ?
「あの、澪ちゃん? なんでそれを……?」
「運命ですから」
だから、理由になってないよ!
「それはともかく……この方、随分と借金があるみたいですね。かなりなギャンブル好きだとか。あの区画の地上げに成功すれば完済できるだけのボーナスが出るそうです」
いや、あのね、私が知りたいのは確かにそういう情報だけどアナタはそれをどうやって入手したのか……あー、うん、考えるのは後回しだ。一刻も早く何とかしなきゃ高宮さんが危ない。
「ひとみ、たいへん、たいへん」
突然聞こえてきたのは風の精霊の声だった、何があったの!?




