29:出発(恋の)と新たな絆(次の敵)
一応第二部というか先輩編はひとまず終了です。先輩の名前はそのうち出してあげようと思います(笑)
翌日。いつもなら憂鬱な月曜日。線路へぽっぴんじゃんする人も都会では居るという話だけどこんな田舎じゃ聞かないよねえ。それに今日は楽しみな日である。あの後どうなったかを先輩に聞かなければならないのだ。鼻歌を歌いながら支店まで歩いて行く。
「おはようございます」
分厚いドアを開けて店内に入る。
「あ、霜月さんおはよう。機嫌良さそうだね」
声を掛けてくれたのはいつも一番に来て掃除をしてる同期入社の太田君。ほうきとちりとりで掃除をしてるのはいつもの風景だ。
「うん、太田君、おはようございます。ちょっとねー」
顔が緩むのを我慢できない。
「おはよう、二人とも。相変わらず早いね」
いつものように副支店長が来た。
「「おはようございます」」
雑談をしながら朝の準備をしていると先輩が来た。いつもより二割増で軽そうだ。なんか羽根でも生えてそう。
「やっほー、おはよう、ひとみっち」
「おはようございます。昨日は行けなくてすいませんでした」
「いやいや、風邪なら仕方ないって。気をつけなよ〜。そ、れ、に! 結果オーライっていうか」
「すごく機嫌良さそうですね」
「えっへへー、わかるぅ?」
なんというかもうデレデレである。むしろわからない方がおかしい。
「ちょっと聞いてよ、ひとみっち、実はさー」
「先輩……とりあえず始業準備してからで良いですか?後で聞きますから」
「そうだね、パパッとやっちゃおうか。その方がゆっくりおしゃべり出来るしね」
なんだかんだで準備を終えて席に着く。
「それで、何があったんですか?」
「うん、こないだ気になってる人の話したじゃん? その人と遊園地の前でばったり会って、それだけでも奇跡なのにその人もドタキャンされちゃって、あ、その相手って妹さんらしいんだけどね……」
ええ、奇跡とは起こすものなんですよ。
「それで色々あって一緒に回る事になってさ、その観覧車で告白されて、どうしてもって言われたから付き合ってあげることにしたんだ」
ゲホッゲホッゲホッ。……そう来たか。えーと、先に告白してたの先輩ですよね?と言う訳にもいかず大人しく聞いていることにした。
「初めてあった時から私の事が気になってたとか言われちゃって……いやー、モテる女は辛いよねー。こうしてる間にも一目惚れを連発されてるかも!」
「そ、そうですね……」
むしろ苦手って言われてませんでした?
「それからねえ……」
まあ幸せそうだからいいかな? その日はずっと先輩のノロケ話を聞かされてたのでした。
私がそんなことをしていた間、裏ではこんな事が起こっていたそうです。
「なんかシケた面してんじゃねえか」
這う這うの体で逃げ出したモブ共は一人の男に出会った。長身。金髪のチーマーとかではなくて歴としたヤクザという風体。高そうなスリーピースに足元も磨き具合まで完璧なスタイル。暴力的にスタイリッシュな男がそこにはいた。
「あ、アニキ! じっ、実はですね……」
「何? ケンカで負けて帰ってきただ? ふざけてんのか? しかも相手は女だと?」
「そ、それが、なんか火の玉みたいなやつが出たり、いつの間にか縛られてたりしたもんで……」
「いつの間にか縛られた? そう言えば密入国した奴らが銀行強盗した時もそんな事が起こってたって情報があったな。あの銀行は確か……」
男は少し考えた後「これはシノギになるかもしれんな」と呟いた。
今、私の銀行に魔の手が延びようとしていた!ってヤクザなの? ヤバくない? 快適な生活からは遠くなっていくような感じなんだけど大丈夫なん?




