264:日溜まりの君
ちょっと二人にバトらせました。まあ二人とも「本気じゃない」そうなのでまたいずれ(笑)
二人の姫が立ち上がり、火花を散らしていた。いや、なんか実際バチバチ聞こえるんだよ。ヤバくね?
「あなたの水と私の糸、どちらが優れているか解らせてあげましょう」
「そんな事やる前からもう分かってるではないか」
「負けを認めるなんて殊勝な事ですわね」
「逆じゃ逆!」
乙姫さんが扇を翻すといくつもの水の槍が突き出される。同じように織姫さんが手を払うと糸が煌めいて水の槍を絡めとっていく。
「小賢しいっ」
絡めとられたのにも構わず、水のチェーンソーを飛ばしていく。糸で止めようとしても切れてしまうだろう。
「甘いっ」
糸で玉を作ってチェーンソーをくい込ませる。そのまま二つとも地面に落ちた。
「今度はこちらから」
あっという間に手足に絡みついた糸がギリギリと乙姫さんを締め付ける。乙姫さんは自らの体を液化して下に逃れた。
そんな事も出来るんだ。
「二人とも、おやめなさい」
制止の声がかかった。とても落ち着くいい声だ。でもそんな事で二人が止まるとは.......あ、止まってる。
声のした方を確認したらそこにいらっしゃるのは優しそうな微笑みを湛えた美女だった。そして虎のような耳としっぽがついていた。虎耳娘?
「西王母様!」
二人の声が綺麗にハモった。二人とも息ピッタリだね。それはそうと西王母様.......確か仙桃の番人とかそんな感じだったなあ。西遊記に載ってた。
「せっかくの宴席なのですから騒ぐのは構いませんがお痛はダメですよ」
優しく諭すと二人とも黙った。すごいな。あっ、こっち見られた。
「こんにちは。はじめまして。あなたがひとみさんね」
「あ、はい、ハイエルフの霜月ひとみです!」
「お会いしたいと思っていたのよ。こんなおばあちゃんで悪いんだけど一緒にお話してくださるかしら?」
.......どう見ても私よりちょっと歳上くらいの絶世の美女なんですけどそれは()
ともかく私には拒否権なさそうなので素直に頷くよ。
「まあまあ、それは大変ねえ」
天界のお酒はとても美味しくてしこたま飲んでしまった。口当たりいいしほのかに甘いけど甘すぎないでしゃっきりしてるのでおつまみによく合う。おつまみも魚やら山菜やらお酒が進むものばかりだ。さすが龍の一族の宴会。
「そうなんですよ、いきなりハイエルフなんかになってどうしたらいいやら.......」
「多分隔世遺伝でしょうね。何千年かに一度は良くあるのよ、そういう事」
何千年に一度を「良くある」で片付けるのもどうかと思うけどこの人達に言っても仕方ないだろう。時間の感覚が全く違うのだ。
「私は人間に戻れるのでしょうか?」
「無理ねえ」
あっさりだった。
「というより元からハイエルフだったのが人間として押し込められて暮らしてただけだもの」
どうやらある日突然ではなくて私は産まれた時からハイエルフだったらしい。赤ん坊の時からある程度成長するまでは人間と同じように成長するそうな。
「他のハイエルフ達はどうしたのでしょう。半永久的に生きるんですよね?」
「私は単なる番人だから外の事はよく分からないのよ。ごめんなさいね」
これはいよいよもって思兼神に聞かなきゃらないなあ。素戔嗚尊様は「ひきこもり」とか言ってたけど。
「それで、なんで私に会いたかったんですか?」
「ちょっとうちの仙桃の件で相談があるのよ」
お悩み相談でしたか。




