260:妹はずっと、そばにいた
兄離れの時です。頑張れ楓ちゃん!
泣きじゃくってる先輩を落ち着かせながら広間へ。見よ、色とりどりの料理たちを!
いや、そんな手の込んだものは作ってないんだけど。一番手を掛けたのはケーキ。ウェディングケーキ入刀とかやってもらうためにデカいの作りました。もちろん食べられるものだよ。サイズの違うケーキを三段分焼いただけなんだけど上手く重なってくれてよかった。重さで潰れましたとかシャレになんないからね。
「うわぁ.......」
先輩が泣くのをやめてケーキに魅入ってくれていた。ちゃんと作った甲斐があったよ。
豊さんに包丁を渡す。ケーキカット用のやつだ。二人で握って.......入刀! 周りからは拍手が鳴り響きました。
宴はそのまま続く。まあ知り合いもそんなに居ないので先輩には申し訳ないけど.......あれ? 澪ちゃんのお屋敷の人たちとは結構話してる? 楓ちゃん繋がりだろうか。
「うちのひとみっちがご迷惑を掛けてると思いますがよろしくお願いします」
エルフイヤーで聞いてみたらなんて事を!
そんなに迷惑掛けてないよ、多分。
というかなんで先輩が保護者役なの?
「あの、乙女お姉様はひとみお姉様の先輩なんですよね? ひとみお姉様の事を教えていただけませんか?」
「そうねえ、ひとみっちが初めて支店に配属されてから三日目くらいだったかな」
その話はやめてください。ストップ、ストップです!
「あはは、冗談冗談。さすがに言ったりしないよ」
バラされるとなんというか大人としての威厳が.......
「誰もひとみっちに威厳なんて求めてないと思うよ」
「頼れるのは頼れますがお姉様に威厳とは程遠いかと」
なんか悲しい。いやまあ自分でもあるとは思わなかったけど。
くれぐれも私の事は話さないようにと釘をさして豊さんの所へ。こちらでは楓ちゃんが絶賛コバンザメ中だ。
「えへへー、お兄おめでとう」
「分かった分かった。ほら離れなさい」
豊さんにお構い無しにひっつき回す楓ちゃん。これで自覚症状ないとかどうなんだか。
「そう言えば二人はどうするんですか?」
「どうするって?」
「ほら、新婚家庭じゃないですか。楓ちゃんはどうすんのかなって」
楓ちゃんのうちは兄妹だけで暮らしている。当然、豊さんが先輩と結婚したら一緒に暮らすだろう。いきなり別居とかありえない。
「そりゃ勿論一緒に暮らすさ。家族だからね。なあ、楓」
「えっ? 私家出るけど?」
さも当然のように楓ちゃんは言った。
「ええええええええええええ!?」
「いや、だって、新婚家庭に妹なんて完全におじゃま虫じゃん?」
「でも、お前、どうやって一人暮らしなんか.......」
「一人じゃないよ」
あー、そういう事か。あの日楓ちゃんは兄離れしなきゃって言ってた。きっとその時が来たと言うことだろう。当然一人暮らしじゃないと言うなら.......
「お義兄様、楓はうちで引き取りますわ」
まあどう考えても澪ちゃんのお屋敷だよね。うん、知ってた。
「でも、そんな.......」
「来年は私たちも受験ですから。新婚家庭で受験勉強なんて出来ないと思いますけど?」
「うっ」
まあごもっともな話である。まあ半分くらいは建前だろうけど。でも受験するの、あなたたち?
「それに保護者としてひとみさんが一緒ですから」
いや、ちょっと待てい!




