190:未だ、彼の求める答えには手が届かず、 本物はまちがい続ける。
あっという間に制圧される室内、残された彼はそれでも余裕の表情を崩さなかった。ひとみたちの運命や如何に!?
わーピンチだー(棒読み)
医大前のタワーマンション。学生が住むには分不相応と思われる場所がそいつらの根城らしい。
殴り込みから完全に私一人でやろうと思ってたんだけど、先輩がどうしても行きたいって言うから連れて行くことにした。
うん、別に肉体的な話で言えばタイマンくらいなら先輩十分強いんだ。豊さんに迷惑がかかる事だけが気掛かりで抵抗出来なかったらしいからなあ。
インターホンを押すとドアが開いて下卑た笑いを浮かべながら大学生くらいの男が出てきた。奥の部屋にも何人か居るようだ。靴から割り出すと.......だいたい五人くらいかな?
「おっ、なんだ? オトモダチまで連れて来たってのか? 気が利くじゃねえか」
「うるせえ!」
先輩が拳を顔面に叩き込んだ。鼻っ柱が物理的に折れてると思う、あの威力は。
「ぐおおおおお」
「おい、何やってんだ!」
仲間の呻きを聞きつけて二人目が顔を出す。
私の隣で黒い影が動いた。低姿勢からのタックルで腰を掴むとそのままバックにするりと移動。そのまま引っこ抜く様にジャーマンスープレックス。物凄い音がして謎のオブジェが出来上がった。あっという間だね楓ちゃん。
近所迷惑にならない様に結界状にサイレンスを貼ってあるから突然の悲鳴にも安心。そのままズカズカ部屋の中へ。
中は煙がすごかった.......これ、大麻じゃね?
煙を見て咄嗟に空気のフィルター張ったけど正解だったみたい。
目の焦点が微妙に合わないヤツらだったので話を聞いてもらうために空気を浄化する。うん、澪ちゃんや楓ちゃんをこんな空気の中に居させるのは気が引けるからね。
「あんたがトップ?」
「あん? なんだ、あんたは?」
「私は単なるしがない銀行員よ。先輩の事でオハナシに来たの」
それを聞くとニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら言った。
「おいおい、こんなに沢山女が居たらさすがの俺でも体がもたねえなぁ」
「俺は後ろの気の強そうなお嬢様っぽい子を選ぶぜ」
「じゃあ手前の元気良さそうな子は俺か? まあ良いか」
なんというか不躾にも程がある。本人の目の前で品定め?
しかも私を選ぶ人は誰も居ないのか!
.......いや、そこじゃないんだけど。
澪ちゃんがすっと前に出てきた。
「ご指名のようでしたから」
そう言うとニッコリ微笑む。
「おお、準備いいじゃねえか」
いやらしく手を伸ばす男。その手を取り引き込むようにバランスを崩して膝を叩き込む。男は崩れ落ちた。
それを見るや否や楓ちゃんが動いた。その場飛びドロップキックで別の男の顔面を蹴り飛ばす。そのままそいつは後ろに飛んでベッドに倒れ込んだ。
「おい、お前ら、こんなことしてタダで済むとでも思ってんのか?」
残ったひとりが怒りに顔を真っ赤にして言った。
「俺の親は市会議員だ。お前ら、この街で居場所が無くなってもいいのか? あん?」
それに対して私は声を大にして言った。
「市会議員だから偉いとか勘違いしてない? 議員なんて公僕でしょうが。住民の役に立つのが仕事なのに圧力かけるとか間違ってるでしょうが!」
「うるせー、見てろ!」
男はスマホを取り出して電話を掛けた。
「もしもし? オヤジ、俺だ。例の女が歯向かいやがった。他に女どももいやがる。まとめてお仕置きしなきゃいけねえんだ。頼むよオヤジ」
ニヤニヤした顔を崩すことなくスマホに喋ってるのを私たちはただ見ていた。




