18:こういう事にはみんな積極的なんですよ
翌日の目覚めはとても爽やかなものだった。小鳥のさえずり(田舎ですから)に耳を傾けながら出勤の準備をする。戦闘態勢を整えていざ、行かん!……と言ってもまあいつもの出勤と変わらないんですけどね。予測されるひとつの事柄を除いてはいつも通りのはず。
「おはようございます、お姉様!」
……いつも通りじゃなかった。
「あ、お、おはよう、水無月さん」
「そんな他人行儀な……澪って呼んでください」
いや、他人だからね?
「まだ夢を見てるみたいなんです……昨日のお姉様のぬくもり」
いや、確かに抱きしめたけれども。私のハグは魅了効果でもついてんのか?
「そして、あの不思議な力……ツタのようなものがあっという間にあの男を……」
しまったぁ、記憶消してないよ! いや、記憶消せるのかどうか分からないけど……
「あ、あの、水無月さん……」
「澪です(ニッコリ)」
「み、澪ちゃん? ちょっとお話があるんだけど……」
「大丈夫です。分かってます。待ってますから! じゃあ行ってきますね」
そう言って学校の方へと消えていった……
「どうしよう……」
爽やかな朝が行方不明だ。とはいえそのまま居ても仕方ないので会社に行く。太田君は今日も早く来ていた。
「やあ、霜月さんおはよう」
「……うん、太田君、おはようございます」
「……なんかテンション低いね。寝不足?」
「ううん、ちょっとね……」
そう言えば太田君にもバラしちゃったんだしこれ以上バレてもそんなに影響ないのかも……って事はないよね。 女子高生とか噂の伝播スピードハンパないから一瞬で街中に拡がるよ!
「おはよう、二人とも。いつも早いね」
副支店長まで来たのでお仕事の準備に戻る。臨店2日目の帳票も出しとかないといけない。ダンボールとか重いよね。それからも続々と人が来るが、支店長と臨店の方々がいつもより遅い時間に来た。案の定、水島の姿はない。
「えー、昨日こちらに来た水島君だが、体調不良の為ひと足早く本部に戻った。なので臨店は彼抜きでやる」
支店長が苦々しげに言った。本当に本部に帰ったのかは分からないがここには来なさそうなので何よりだ。
「あれ? あいつそんな病気持ってたっけ? 心配だなあ……」
太田君は同期なのでそれなりに心配してるみたい。本当にお人好しな人だ。ともあれ、彼一人来なくても仕事は進むわけでその日も仕事を一通りこなして無事終業。普段ならお疲れ様でした、とタイムセールに行くところではあるが……本日はこれから戦場へ向かわねばならない気分だ。足どり重く入口から出ると彼女はそこにいた。
「お疲れ様でした、お姉様」
「……いつから居るの?」
「まだ一時間も経ってませんから大丈夫ですよ。心配してくださったんですね!」
違う違う、どこの出待ちよそれは。
「ま、まあ、会えたから良かったわ」
「運命ですから」
いや、待ち伏せしてたよね……あれ?
「ねえ、なんで私の職場分かったの?」
「運命ですから」
……うん、深く考えたら負けな気がする。
「じゃ、じゃあ行こうか。近くのジョイフルでいいかな?」
「え? でも、お姉様、今日のお昼ジョイフルでしたよね?」
「……」
「……」
「あのさ、なんで……」
「運命ですから」
まだ何も言ってないよ!




