174:まだこんにちはも言わないのに…
とりあえず波乱の種は蒔きましたのであとは芽吹くのを待ちます(笑)
すぱーん、と乾いた音がした。ブランちゃん、そのハリセンどっから出したの?
「てーな、何すんだよ!」
「それは喋るなって言われてたでしょうが!」
「はあ? なんでお前は良くて俺はダメなんだよ」
晶龍君が食ってかかる。
「何も聞いてなかったのですか? 私は小国の姫と言うことにすれば詮索されません。どうみたって見た目が日本人ではありませんもの」
「それとこれとはなんの関係があるんだよ?」
「大有りです。今の香港に王族なんていませんもの。葵先生に習ったでしょう?」
「うっ.......」
そうなのだ。晶龍君も王族というか青龍王さんの息子なんだから名乗っても不思議ではないのだ。でも、そんな事をすれば正体がバレる可能性が高まる。
ブランちゃんはいいのだ。いざとなれば「すみません、日本語まだよく分からなくテ.......」があるし、西洋系の人には気後れするのが日本人である。どうとでもなるのだ。
それにブランちゃん本人もしっかり対処できるみたいだしね。
で、問題は晶龍君。絶対ムキになって対抗心とかでポロッとやっちゃうに違いない。早まったかなあ?
「ねえ、どういうこと? 説明してよ」
先程の仕返しとばかりに天宮寺さんが詰め寄ってくる。
「晶龍君は私としばらく一緒に居ましたからそれで勘違いをしているみたいですね」
ブランちゃんが助け舟を出す。うん、嘘は言ってない。
「なんだと!? この.......」
まだ喋ろうとしたのでミュート。パクパクしてるけど声が出てない。あ、気づいたみたい。私が見てるのもバレちゃったかな?
「まあ、そういうことなら仕方ないわね」
釈然としないものはあるだろうが勝手が違うためか上手くつっこめない。その場は引き下がってくれた。
そのまま授業を受けて給食。今日はシチューみたい。あ、私もお腹空いたな。なんか持ってくれば良かったかな。
晶龍君はがっつくかと思いきや普通に食べてた。その事を後で聞いたのだが「ママのより美味しくなかったから」って答えが返ってきた。
ブランちゃんも優雅に食べてた。見事なテーブルマナーだ。ビショップさんに仕込まれただけの事はある。ん? そう言えばビショップさんはブランちゃんが学校に行ってる間何をしてるんだろ?
昼休みになって私は二人にだけ聞こえるように囁いて屋上に呼び出した。
「来てやったぞ」
「お待たせしました」
「はい、お疲れ様。とりあえず晶龍君は正座」
「は? なんで?」
「正座」
「.......ちっ」
渋々座る。
「さて、なんでこんな事されてるのか説明するね。口を滑らせすぎ。口は災いの元って言うでしょうが」
「でもよ.......」
「バレたらおじいちゃん」
「気をつけます!」
背すじをピン!と伸ばして大変好い姿勢だ。ブランちゃんの方に向き直った。
「ブランちゃんはよく出来てたね」
頭を撫でてあげる。
「い、いえ、葵先生に教わった通りにやっただけです。でも、あの.......」
「天宮寺さんのこと?」
「はい。大人しくなってくれたらいいのですけど、気性的にそうもいかなそうで」
うん、まあ今まで自分の天下だった所にサッと自分と同等かそれ以上の奴が入ってきたのだ。排除に動いても不思議はない。
「まあなんかあったら私も出るから。早めに言ってね」
「わかりました。その時はお願いしますね」
「.......はーい」




