165:千載一遇
ファンタジーなモンスターは出ませんが民俗学的なものは出ないとは言ってない()
古くは地方豪族が風鎮の為に立てた海の神様ワタツミと雨乞いの為の八大龍王宮を建てた事に名前の謂れがあるという。
一説によれば元々住んでた悪龍が暴れ回っていたのを海神がえいやっとぶち殺して死骸を祀ったという説もある。
まあこんな低い山に封じられてるくらいだから大したことはないんだろう。
とまあ由来は置いておいて、この山は昔から近所の小中学校の遠足コースとして制定されていたりする。お陰でアスレチックコースとかいつも綺麗に手入れされているのだ。
竜の形を象った遊具の数々。あー、懐かしい。まあ、私は遠足で来た時はそんなのには目もくれずに本を読んでましたけど。
まあでも遊具の難易度も高くないのでブランちゃんでも十分に遊べるはず。あ、楓ちゃんがブランちゃんをさらっていった。
竜の背中の様な長いすべり台。登るの自体大変そうだけど楓ちゃんはものともせずに登っていく。しかも背中にはブランちゃんを乗せて。
「うそっ、高い!」
「あー、大丈夫。私ならここから飛び降りたとしてもちゃんと着地出来るから」
「いや、そんなこと言われても実際飛び降りたりしませんよね?」
「ちゃんと掴まってないとそうなるかもだよ」
「それはどうい……うひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
楓ちゃんがニッコリ笑うと、ブランちゃんを両手で持ち上げたまま……すべり台を駆け下りた。
いや、それ、すべってないから! というかむしろすべったらブランちゃんが大事になるよ!
地上に着く頃にはブランちゃんは泡を噴いていた。うん、まあ無理もないと思う。そんなブランちゃんを抱えたまま楓ちゃんは次々とアスレチックをクリアしていく。
なんでブランちゃんを連れてたのか聞いたら「重さがちょうどよかった」って答えが。
後から澪ちゃんも追いかけてアスレチックをクリアしていった。楓ちゃんに追いつけ追い越せかと思ったら「あんな体力バカに勝てる訳ありません」ってキッパリ言われた。
でも、あなた立派なアスリートの筈だよね?
ハルもひょいひょいクリアはしていくけど途中で飽きたらしく戻ってきた。
私? 葵さんと一緒にお茶飲んでのんびりしてたよ。こういう時には紅茶でもコーヒーでもなくて緑茶。水筒にたっぷり入れてきたからどんどん飲んで……飲んで……あれ?
ふと見ると葵さんの隣にちっちゃい男の子が居た。しかもなんか美味しそうにお茶飲んでるんだけど。
「あー、なんか、この子見つけた時一人だったから放っておけなくて」
まあ葵さんなら仕方ない。保育士という職業病みたいなものだ。
「美味しい?」
私は一心不乱に飲んでいる男の子に声を掛けた。とりあえず迷子だろうから親御さんを探さないといけない。それにはまず名前などの基本情報を聞かないといけない。迷子札とか着けてたら有難かったんだけどどこにも見当たらなかった。
「不味い」
ああん?
「雑味が混じってる。大していい葉っぱじゃねえな」
まあそりゃスーパーで安売りしてた緑茶だけどいれ方自体は精霊さんたちに協力してもらってるんだからそこまで言われる筋合いはない。
「偉そうに、あなた、名前は?」
「俺の名前? ショウリュウっていうのさ」
珍しい名前。DQNネームって奴かな?
「名字は?」
「ねえよ」
は? それはどういう……
「よく聞け! 俺はこの地に封じられし竜王、東海青龍王が十七子、晶龍だ!」




