164:こーゆー時間
ハイキング編(仮称)スタートとなります。学校に行くまで出さないと言ったな?(言ってません)
あれは嘘だ。
山に紅葉が色づき、谷川の清流のせせらぎが時期外れの暑さをもたらす令和の残暑に涼しさをもたらす今日この頃。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
今、私たちはハイキングに来ております。面子はハル、澪ちゃん、楓ちゃん、葵さん、そして……
「ほら、早くこっちに来るのです!」
「ブランちゃん、走ると危ないよ?」
そう、ブランちゃんだ。
というのもそもそもこのハイキング自体がブランちゃんの息抜きなのです。現代の常識と低学年の勉強を詰め込みに詰め込んだブランちゃんは来月から小学校に通う事になっていた。
通う所は普通の公立学校。というか私立の小学校なんてこのド田舎にある訳ない。
勉強と畑の手伝いを頑張ったブランちゃんへのご褒美にみんなでハイキングと相成った訳である。
ずっと面倒観ててストレス溜まってそうなビショップさんはママと一緒にお留守番。ゆっくりしてください。
ママが行かないなら私も待ってたかったけど、「ブランちゃん預かったのはひとみなんだからちゃんとお世話しなさい」って言われたからね。
ともかく地元の山には途中で愛に溢れたホテルが存在感を示す様にキラキラと輝いているのでお隣の市にある竜王山へ。
夜景の綺麗な場所で夜景遺産とかにも選ばれたらしい。
あ、もちろん夜までは居ないよ?
そんなロマンチックな場所がデートスポットでないわけがないでしょ?
地震もないのに車がそこかしこで揺れる怪奇現象が頻繁に起こるんだよ……滅びろよ、もう!
「しかし、見事な紅葉ですわね」
「見事さなら澪ちゃんの御屋敷も大概でしょう?」
「見るためのものでは無いですから」
澪ちゃんの御屋敷の木々は外からの視線を遮るものだからね。紅葉する様な木はほとんどないとの事。まあそりゃそうか。
ハルは運動してるし、私も山道とかには慣れてるからそこまでキツくはない。なんだかんだで澪ちゃんもアスリートだし、楓ちゃんは言わずもがなだ。ブランちゃんも今の所元気いっぱいである。だいぶ体力ついてきたみたい。
なので問題というかバテバテなのは一人だけである。
「葵さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫、ですよ、まだ、いけます」
絶え絶えな息の下で葵さんは答えた。体力的にはあるはずなんだけど重りを常備しているから疲労が蓄積されてるのだとか……うん、重そうだし肩も凝るよね。とりあえず重力いじってちゃんと歩ける様にしとこう。
葵さんのペースが戻ったので意気揚々と山頂を目指す。
山頂へと続く階段を登り切るとそこは草原の様になっていた。涼しげな風が吹いていた。
ちなみに標高は百二十メートルちょっと。そんなに高さはないけどハイキングとかするにはいい高さなのだ。
葵さんは登り切ったと同時に地面に倒れ込んで仰向けになっていた。豊かな山脈がそこには広がっていた。
「本当の山はここにあったのかー」
ハルが感慨深げにぷるぷる震えてるそれを見ていた。お巡りさんこっちです。
「もう、馬鹿やってるとお弁当食べさせないよ?」
と言って私は重箱を置いた。かさばったけど持つのに苦労は無かった。うん、浮かべてただけだから。
「うわぁー!」
楓ちゃんが歓声をあげる。弁当の内容は運動会のお弁当みたいなやつ。卵焼きやエビフライ、肉団子、唐揚げ、そしておにぎり。
「いただきます!」
欠食児童の様にみんなががっつく。今回のお弁当は精霊の力を借りて火加減や水分調整などを頑張った逸品だ。これ以上の品とか三ツ星レストランでも難しいでしょ。
「今まで食べた中で二番目に美味しいわ」
「一番は、ブランちゃん?」
ブランちゃんが聞き捨てならないセリフわ言った。これより美味しいものがあるって?
「ひとみのママのお弁当」
あ、うん、それは勝てない。ブランちゃんがいい子だから思いっきり笑顔で撫でてしまった。




