160:夕べには骸に
やる事は決まってましたが難産でした。仕手戦書くのって難しいですね。読みづらかったらすいません。
浜の真砂は尽きるとも世に悪党の種は尽きまじ、とはよく言ったもの。右を向いても左を向いても犯罪者だよ!
それでも潰れないのは警察の天下り先で文句言えないから。というか大久保さんとか元警察官だったらしい。警察官僚が道を踏み外すと倫理観とか無くなっちゃうんだなーってお話。
まあ警察に限らず銀行もかなりなもんだと思うけどね。ウチみたいな弱小金融機関には関係の無い話なのかもしれんが。
そんな訳で西郷氏は置いといて近藤氏の方を何とかするってターン。と言っても株のトレードなんて普通に見てても面白くもないし特に困難な部分もない。
静かに買いを入れていく。実は拉致する以前から三十パーセントは既に超えている。でも名義は別のものだ。シティやウォール街に居る「知り合い」がそれぞれ買っている様に見せておく。物好きな外国人投資家がたまたま株を買ったみたいな。
ひとつの名義で買う量は一パーセントから三パーセント。いくつも集まれば塵も積もれば山となるである。十パーセントとか取得すると財務局に届け出を出さないといけないそうなので手続きが面倒になる。
それでもなかなか大口の株は手放さない様にしてるらしい。そこでTOB(敵対的買収)である。
公開買付け開始公告。名前やら住所やらの個人情報に公開買付けするよという宣言。買付けの目的、そして値段と数。これは集められるだけって事で。あとまあ諸々報告する項目はあるみたいだけど省略。
要するに「今からアンタの会社を買収するぞ」って宣言してからやらないとダメってこと。
ハルは実に手馴れた手つきで公告を作り上げた。というか何度もやっているのを見たことがある。公示期間は一週間ということにしている。だけどそこまで長々とやるつもりはない。勝負は一瞬で決まる。
「じゃあおっぱじめますかー」
公告を提示して直ぐに外国からの売りが殺到する。これはハルが予め仕込んであったもの。静かに水面下で買っていたものを表に出しただけ。でも、それは事情を知ってるこっちの主観。客観的に見れば「株券が次々と集まってる」って見える。あっという間に三割は超えて四割に届こうとしている。
「こんなにあっさりなの?」
「そりゃどこもこんな会社チェックしてないもの。社会的に意味のあるような会社でもなし」
それでも経営権が絡んでくる辺りになると動きが鈍くなってくる。社長夫妻のスキャンダル。それが決め手となる劇薬だ。噂は流れるが対策しょうがない。本人たちが居ないので否定もされない。
関わりたくないと感じた国内の投資家たちが次々と株を手放していく。この辺りは今までのハルの手並みもあっての事だと思う。正直こんなにすんなりいくとは思ってなかったよ。
「終わったよー」
習得株式数が割合で五十パーセントを超えた。これでいつでも会社を乗っ取る事が可能となった。一週間とか言っておきながら三日と経っていない。
「なんか随分とあっさりね」
「まあそんなもんだよ。結構一気になだれ込ませる為の仕掛け作りは頑張ったからねー」
こういう時のハルは実に楽しそうだ。時折見せるプロフェッショナル的な横顔もかなり魅力的だと思う。
私としてはいつものダメ人間なハルしか見てないから違和感バリバリなんだけど。
「あんまりひとみんには見て欲しくなかったけどねー」
「なんで?」
「だって、いやらしい顔してたでしょー?」
「ううん、なんか、かっこよかったよ」
「!」
素直な感想言ったら顔を真っ赤にして俯いてしまった。うん、反応に困るけどキリッとしたのよりはこういうハルの方が好きだなあ。




