159:葬られた宴
黒木さんとひとみんのコンビもいいなあ。黒木さんが一方的に苦労しそうだが(笑)
歴史は夜作られる。昔の人はよく言ったものです。古来より秘密の会談というものは夜陰に紛れてと相場が決まっています。
黒木さんと一緒に会談場所に向かう。場所は一流と言われてる料亭。和食よりもフランス料理とかの方が美味しそうに思うんだけど。
あ、このお刺身美味しい。
黒木さんの前には小太りのおっさんが座っている。大久保さんというらしい。専務さんだってさ。
「それで、失脚させる材料というのは?」
「ええ、これを」
黒木さんが取り出したのは一枚の写真。そしてレコーダー。写真には西郷氏とどう見ても反社会的な顔をしている人が写っていた。反社会的勢力との金銭の授受。普通の企業でさえ一発アウトというのに、ましてや警察の天下り先となったらバレる前に何としてでも揉み消さなくてはならないスキャンダルとなる。
黒木さんは地元の暴力団の皆様に「手を切らなければ一緒に潰す」と脅しをかけて奪い取ったらしい。わー、ゆする気満々だよ。
本人に言わせれば「これくらいの見返りがなけりゃ協力とかやってられん」らしいのでまあ仕方ないと思う。自業自得な案件だしね。
「こ、これは……」
大久保さんもこれが失脚どころでなく会社の趨勢を左右すると思い当たって絶句していた。
「もちろん証拠から何から一式全部譲ってもいい。値段はそっちで決めてくれ。折り合わなきゃナシだ」
「二千万。それ以上は出せん」
「桁がひとつ違うんじゃねえか?」
「……出処を問われると苦しいからな。これが限度だ」
黒木さんはゆっくり首を横に振った。
「話にならん。帰るぞ」
「タダで帰れるとでも思っているのか?」
大久保さんがそう言うと隣の部屋の襖が開いて数十人の警備員が待機していた。
「せっかくだから貰っておくよ。君たちには入院費くらいは出してあげよう。兵隊も連れて来ないでやり合おうとは随分と過信した行動だったな」
うきー、ムカつくコイツ!
企業のトップってこんなやつしかおらんのか!
「こっちは穏便にいこうかと思ってたんだがな。おい、やっていいぞ」
「……なんで命令口調なの?」
「その方がかっこいいだろうが。この為に連れて来たんだからいっちょ頼むわ」
行動原理がかっこいいとかそういうのはやめた方がいいと思うの。まあいいや。料亭壊すのもアレだから穏便にいこうか。
「エアスクリーン」
男たちの周りを空気の壁で囲む。
「な、なんだこりゃ?」
「動けないぞ」
「くそ、銃もダメだ」
いやいや、銃まで用意してたの? それはもうギルティだよ!
「ボイル」
沸騰させるための水もセットだ。血液沸騰とかも出来そうだけど怖くてやってない。冷凍食品の解凍は出来たから多分いけるとは思うけど。
水蒸気が発生すると人は不快感を覚える。不快指数というやつだ。高湿度が続くと汗が気化しなくなり熱中症になる。太陽に当たってなければ平気って訳じゃないから良い子のみんなは気をつけてね。
そんな状態にしてると次々と倒れていく。エアスクリーンで空気の逃げ場も無いので湿度は上がりっぱなしだ。今回は何も壊さずに制圧できた。じょうずにできましたー!
後で説明すると黒木さんは「えげつねえな」って言って目線を合わせてくれなかった。そうかなあ?
「さて、それでここまでしてくれたら迷惑料も上乗せしてくれねえとなあ」
「わ、わかった。三億出そう」
「それだけか? もっと……いや、それでいい」
私が険しい顔をしたら引っ込めてくれた。三億でも十分なのにそれ以上はやりすぎでしょう。
「五億まではいけた」って後で言われたけど私は黒木さんに儲けさせるためにやってるんじゃないんだから。




