139:暴走するは我にあり
ビショップさんへの敬称略は誤字ではありません()
畑仕事を一段落させてママがお茶をいれてくれようとする。いや、私やるから座っててママ。
勝手知ったる自分の実家。どこに何があるかくらい分かる。とりあえず緑茶を出そう。反対側の端っこで取れた地元のお茶で農協が安く売ってくれるそうだ。地産地消ってやつ。
味が濃いので外郎と一緒にいただきます。あん? 誰だ、外郎が愛知名物とか言ってる奴は!?
……ふう、失礼しました。お茶うけは平和に一口大のまんじゅうにしましょう。栗まんじゅうも好きだけどこの一口大のやつがお手軽でいい甘さなんだよね。
「ハグハグもぐもぐ」
効果音じゃなくて言いながら食べる人は初めてだよブランちゃん。
「ほう、これは良い味ですね」
ビショップさんはお茶がお気に入り。日頃は紅茶なのかな?
「好きなのは紅茶ですが仕事が溜まってくるとコーヒーですね」
ご苦労さまです。
「それで、ここで預かったらいいの、この子?」
「そうそう、なんなら畑仕事とかさせててもいいよ」
「なっ!?」
「あら、助かるわ。ちょうど収穫で大変だったからひとみを呼ぼうかと思ってた所だったの」
いや、まあママに呼ばれたら帰るし魔法でもなんでも使って手伝うけど……あ、そうだった。
「それでね、ママに言わなきゃいけないことがあるんだけど」
「「「「「ママ!?」」」」」
「あらあら、何かしらひとみ?」
「私さ、エルフになっちゃったんだよね」
そう言って耳を見せる。
「あらあらまあまあ……よく聞こえそうね」
「よく聞こえるよ。……じゃなくて私、人間じゃなくなったの!」
「ふうん?」
「それでね、魔法とかも使えるようになっちゃったの」
「ふむふむ」
「ついでに言うと精霊とかがその辺にうろついてるのも見えるし割となんでもできるの」
「ひとみ」
「はい、ママ」
「収穫手伝ってね」
それ以上は言わずにっこりと笑うママ。本当に分かってんのかな?
でもなんでみんなびっくりしたんだろう?
ママだって自己紹介もしてたし改めてママって呼んでも不思議はないと思うんだけど。
「ひとみ様」
「どうしたんですか、ビショップさん?」
「ひとみ様のお母様は普通の人間でいらっしゃるのですね」
「ええ、ハイエルフだっけ? それは私だけよ」
「でしたら別に我々が従う義理はどこにも……」
「あぁん?」
ビショップの身体がビクンとなった。なにかに怯えているようだ。別に大した殺気は振りまいちゃいないと思うけど。
「ママに従えない、そう言ったの?」
「え?」
おかしいな、秋だからってまだそんなに寒くは無いはずだけど。どうしてそんなに震えているの?
「つまり私のママは尊敬するに値しないという事?」
「ひいっ!」
あれ? 高校生組も震えてる。やっぱり寒かったのかな? そう言えば薄らと霜みたいなのが見えるね。
ブランちゃんが目に涙溜めてる。そんなに寒いのなら言ってくれたら良いのに。
「ビショップ?」
まあ今はどういうことかビショップに話を聞かないと。にっこり笑って話し合えばきっとママの素晴らしさが分かってくれると思うし。
「なにやってんの! 早く、ひとみんママ褒めて!」
ハル? ああ、ママの良さを説明してくれようとしてくれてるのかな?
「ひとみ、皆さん疲れてるみたいだからお風呂入れてくれない?」
「あ、はーい、ママ。ビショップさん後でね」
久しぶりのおうちのお風呂。ママと一緒に入りたいって言ったら引かれるかなあ?
とりあえず手っ取り早く精霊で入れて褒めてもらおうっと。




