12:『出会い』
魔法実験の手を逃れたひとみを待っていたのはまた、地獄だった。破壊(お茶碗類)の跡に棲みついた欲望と暴力(が沢山のマンガ)ハルのズボラさが生み出した、ソドムの部屋。悪癖と怠惰、退廃と混沌とをコンクリートミキサーにかけてぶちまけたここは、親友ハルの自室。
次回、『掃除』。来週も、ひとみと地獄に付き合ってもらう。
……っじゃなくて! にちようびにおかたづけにいってきました。このよのものとはおもえないふうけいにようじかしてかんじをわすれました、まる
という訳で私はせっかくの日曜を掃除に費やした訳です。仕方ないよね。他にやる人居ないんだもん。なんか高いもん奢らしてやる。叙々苑だ、叙々苑! いや、この辺にはないけど。まあ何はともあれ月曜日なので仕事があるから会社に行かねば。
支店まで歩いて行く。朝の空気は気持ちいい。
「おはようございます」
分厚いドアを開けて店内に入る。
「あ、霜月さんおはよう。今日も、その、普通そうだね」
声を掛けてくれたのはいつも一番に来て掃除をしてる同期入社の太田君。ほうきとちりとりで掃除をしてるのはいつもの風景だ。
「うん、太田君、おはようございます」
まあよっぽど先週のが印象に残ったんだろうなあ……。
「おはよう、二人とも。相変わらず早いね」
副支店長が来た。本当にこの人マイペースだな!
「そう言えば今日、本店の人が来るらしいけど知ってた?」
えっ、なんか早くない!?
「あのー、それは、一体、どういう……」
「おや、聞いてなかったのかい? 臨店だよ。新人研修も兼ねてるらしいけどね」
金融機関には臨店というものがある。融資や業務がしっかり行われてるかどうかを本部の監査役が見に来るのだ。なんでこんなめんどくさいことをしてるのかと言うと、本番のような金融庁の臨店検査ってのがあってそれに引っかかると色々あるらしい。下っ端にはあまり関係ないけど。
「まあ君たちにやってもらうことなんか殆どないから安心しててよ。帳票取ってきて、くらいじゃないかな」
副支店長が言うなら大丈夫かな? 雑談をしながら朝の準備をしていると先輩たちも来た。相変わらず軽そうな言動と見た目だけど仕事はすごく出来るんだよなあ、この人。
「ちょっとー、聞いてよ、ひとみっちー」
「先輩……もっと早く来て準備手伝ってくださいよ」
「いやいや、これも愛のムチなのだよ。それよりさあ、土曜の合コンが酷くって……」
「はあ、そうですか」
「どっかにイイオトコ落ちてないかなあ」
「さあ?」
「ひとみっち、つれないなー?なになに、彼氏いるの?」
「いえ、居ませんけど」
そう、生まれてからこの方この街で彼氏なんかいた事がない。
「またまたー、ならさあ、どんなのが好みー? 太田君?」
被害が太田君に飛びそうだったので話を切上げる。
「あー、準備戻りますよ!」
開店準備をしてたら支店長のお出まし。今日は誰かと一緒の様だ。あの人が本部の臨店検査員なんだろうか。それに続く形で数人が入ってきた。私は地元採用だから面識ないけど、太田君が嬉しそうにしてたからきっと同期なんだろう。印象的にはまあ顔はいい部類に入るが好みではない、という所だろうか。背は高そうだし、モテるのかもね、この人。それから午前中いっぱいで検査が行われた。私はお茶を運んだり帳票運んだりのお手伝いをしていた。係長が申し訳なさそうにペコペコしてる姿はちょっと胸がスっとした。ちょっと視線のようなものを感じるんだけど……耳ちゃんと変えれてるよね?




