特別編:帝国の行く末
大人しくしないと皇帝の刑だぞ!
「お姉様ぁ!」
勇者たちを連れて私たちのところに転移して来るなり澪ちゃんが私に抱き着いた。
「あのさ、さっきまでの女神っぽさはどこ行ったの?」
「お姉様の前には全ては無に帰すのですわ!」
あー、まあ澪ちゃんだけ仲間外れっぽかったもんね。少しくらいは仕方ないか。
「澪、私は無視?」
「楓は後で堪能するつもりでしたから」
私は逃げられると思ったんだと。カンのいいガキは嫌いだよ。まあ澪ちゃんはガキじゃないけど。
「御使い様、女神様、オラたち魔王を倒しただ!」
「ええ、凄かったわ。ご苦労様」
「そんで聞きてえ事があるんだども」
「何?」
「なんで皇帝陛下が簀巻きになっとるんだか?」
おおっとしまった。転がしたままだったわ。でもまあこいつら勇者たちも自分たちの兵器にしようと思ってたっぽいんだよな。
「実はね……」
一通り説明するとストラちゃんが憤慨した。
「なんですか、それは! 世界樹は、エルフは帝国に協力しません!」
「いや。それでさ、トーマスにお願いがあるんだけど」
「なんだべ? 早う畑に戻りてぇんだが」
「代わりに皇帝やんない?」
うん、これが一番良い選択なんだよね。皇帝陛下わーこのままにしといたら私が狙われそうだし、下手をすると私繋がりでグノーシスさんやアリスたんが狙われるかもしれない。グノーシスさんは自分でなんとか出来るだろうけど、アリスたんは放っておけない。なんかあったら帝国を灰燼に帰してやるぞ。
「申し訳ねえけんど、オラは普通の農家に戻りてぇだ」
「成り上がることとか考えてないの?」
「人間には分限ってもんがあんだ。オラは農民がせいぜいだ」
なるほど。じゃあ代わりに聖女のプリシラちゃんは?
「聖女なので国の統治とか出来ません。それにトーマスさんのそばにいる為に村の教会に居ようかと思います」
どうやら旅の間に随分と惚れ込んだようだ。あ、ならリューちゃんはどうかな?
「トーマスから離れるつもりねえよ。それに皇帝とかになったら戦えねえじゃねえの」
まあ自ら前線に出る皇帝ってのもいなかった訳じゃないけと。
「私はもちろん無理よ。世界樹へ戻らなきゃだし、何よりエルフじゃ国民が納得しないわよ」
全員に断られたぞ。皇帝って人気ないんだな。ならどこかに代わりの人間が居るだろうから適当に……あ、先帝の遺児とかいるの? 今の皇帝は先帝を毒殺したって?
なんかベラベラしゃべられたけど、その辺の経緯は割とどうでもいいんで、先帝の遺児とやらを探すか。ん? 城には居ない……追い出したの!? そいつは酷いことするね。今の位置は……スラム? うわー、これはめんどくさい事になりそうな。
貴族の家に引き取られたとかだったらある程度の教育が出来てるだろうけど、スラムだと最低限のことすら教わってないと思うんだよ。仕方ない。せめて道筋を着けておくか。
スラムに向かって行くと私の財布をスリ盗ろうとする子がいた。うん、顔は可愛いんだな。こんなに可愛い子が女の子なわけが無いよ!って顔だ。どことなく皇帝陛下に似てる。
「あんたがアレク?」
「なんだよ、オバサン。なんで俺の名前知ってん……」
「お姉さん」
「は?」
「私はまだ若い。お姉さんだ。いいね?」
「い、イエス、マム!」
辛うじて殺してはないけど殺気は叩きつけたから心に恐怖は刻まれただろう。いや、刻むのが目的じゃないって?




