特別編:荒野を走る死神の列を蹴散らす
抗うすべは吾が手に十分ある。
地表を埋め尽くす獣の群れ。いや、獣だけではなく人型のモンスターも居る。デカいのはサイクロプスだろう。目からビームは出ないと信じたい。
「なんなのだ、このモンスター共は!」
「どうやらそこの元勇者の闇の力に惹かれたものと」
皇帝陛下の横で宰相殿が説明している。でもそうか。なるほど、闇の力だとモンスターを引き寄せるのね。ブラックホールかな?
「勇者殿!」
「さすがにあれだけ多くのモンスターはどうなるか分からねえだ」
「オレが全部ぶっ飛ばすって言っても限度があるよなあ」
「防御結界なら張れますけど……」
「魔力がもたないと思うわ」
どうやら勇者御一行は厳しい様だ。さあ、どうするかなあ?
「澪ちゃん聞こえる?」
「勿論ですわ、お姉様! あまり長くは持ちませんが」
「あのさ、魔王は勇者が倒さないといけないんだよね? じゃああのモンスターたちは?」
「倒してしまっても構わんですわ」
その言い方は死亡フラグを想起させるからやめて欲しいなあ。でも大丈夫なのね。
「葵ちゃん」
「呼びましたか?」
「勇者パーティを魔王城まで運べますか?」
「大丈夫ですね。乗騎用のドラゴンは何体も居ますから」
よし、それなら大丈夫そうだ。
「トーマス君!」
「何だべ使徒様?」
「あなたたちは魔王を倒しに行きなさい。ここは私たちに任せて!」
「だ、だどもオラ……」
「心配要らないわ。あなたたちが魔王を倒すまで持ち堪えて見せるわ!」
殲滅するつもりですがまあ嘘は言ってない。
「す、すまねえだ!」
「さあ、このドラゴンたちに乗って行きなさい」
「げっ、ババア……」
「何か言ったかしら、リュー?」
「なんでもありません!」
斯くして勇者パーティは魔王城へと飛び立った。さてと、じゃあ後はこっちの番ですね。
「ハル、葵ちゃん、楓ちゃん、遠慮なくやるよ」
「おっけー」
「勿論です」
「ちょっと暴れたりなかったんだよね」
「いいなあ」
最後のは澪ちゃんからの通信だ。いや、澪ちゃんは直接干渉するのも無理っぽいから管理に専念してね。
「じゃあ行ってきます!」
不安に溢れた皇帝陛下と宰相殿を置いて私たちは帝都の外に陣取った。
「ゴングがないけど一番槍は私だよね!」
楓ちゃんが突っ込んで行く。周りのモンスターをなぎ倒しながら一番目立ってるサイクロプスのところに行くとジャンプして顔面に拳を叩き込んだ。サイクロプスはその一撃で下のモンスターを巻き込んで倒れた。楓ちゃんはそのまま暴風の様に暴れ回ってる。
「じゃあ私もやろっかなー」
ハルは身体を黒い沼の様に変化させた。そしてそこから狼、蛇、コウモリ、蜘蛛など様々な黒い獣が生まれ、次々とモンスターに襲いかかっている。一人で軍隊かな? 一体一体がかなりの強さでどんどんとモンスターの群れが侵食されていく。
「私も僭越ですけど。あ、出来たらひとみちゃんは見ないでね」
葵ちゃんはそう言うと向かって来るモンスターたちに大きく口を開けた。次の瞬間、その口から凄まじい熱量が生まれ、直線から少し広がる感じでモンスターを焼き払った。おおう、ドラゴンブレス。人型形態でもブレス吐けるってすごいよね。口の中とか火傷しないのかな?
「さあて、じゃあ私もやりますか」
みんなが頑張って都市防衛という名のストレス発散をしてるので私もやっとこう。




