特別編:ビッグなベア
右手は珍味
ある日、森の中、くまさんに、出会った。花は咲いてないけどくまさんは居たよ。森の中の集落に。村の中に入って人を襲っている。しまった、間に合わなかったか?
「ハル!」
「任せて!」
移動が速いハルを先行させて熊の攻撃を受け止めて貰おう。村人に熊の右手が叩き付けられる。あー、うん、確か右手が美味いんだっけ。あれだよね、右手で蜂蜜舐めてるからとかそんな感じだったと思う。
ガシッとハルに右手を受け止められたくまさん。暗黒熊。体長は五メートルくらいか。シロクマでも三メートル、ヒグマだと二メートル半くらいが最大だろう。それを遥かに凌駕する。こいつら何食ってんのかな? 雑食って話だよね。日頃は木の芽とか草とか食べてんだろうな。
ハルと相対してるくまさんは口からヨダレを垂らしている。食欲からなのかは分からないがきっとこいつは人間の味を覚えているんだろう。ハルに対しても迷うことなく突っかかってきた。
「残念無念、またらいしゅー」
もう一方の左手も掴むとそのままくまさんを地面にねじ伏せた。力技だな、おい。
「ひとみーん、こいつどうするー?」
「討伐が目的なんだし、どう見ても人間を襲おうとしてたんだからアウトでしょう」
「おっけー。じゃあ砕いとくねー」
何をっていう暇もなく、ゴキャッという鈍い音がした。ハルは両手を離すとそのまま後ろ足の方に手を伸ばした。再度ゴキャッという音がしてくまさんは動かなくなった。いや、動けなくなったんだろう。ハルはトドメとばかりに頭を掴んで……砕いた。
「終わったよー、ひとみん」
「いや、村人引いてるから」
ハルを遠巻きに見てる村人たち。武器を向けてる人も居る。
「へぇ……よろしい。ならばクリー」
「やめろっての」
ペチンと頭をはたく。そして村人たちに向かって言った。
「皆様、冒険者ギルドから暗黒熊退治のために派遣されたヒトミと申します。村長さんはいらっしゃいますか?」
「わしじゃが」
お年寄りが名乗りを上げ歩み寄って来た。ふむふむ、確かにそれっぽい貫禄はあるな。
「私はゴールドクラス冒険者のヒトミと申します。こっちは私のテイムしている吸血鬼です」
「どーもー、ひとみんのペットでぇーす」
「吸血鬼をテイム……なるほど。なかなかのお人のようだ。どうぞこちらに」
村長の家に通された。家の中には若い奥さんが家事をしていてお茶を淹れてくれた。クスリとかは入ってないと思う。まあ入ってても効かないけど。
「暗黒熊を退治していただいてありがとうございます。ですが最低でもあと一頭、下手をしたら数頭居るかもしれません」
「その辺の調査も我々の仕事ですから。この辺りを詳しく調べたいのでどこか空き家を貸していただいて拠点にしたいんですが」
「でしたらあちらを。先程の暗黒熊にやられて死んだ男の家で、他に身寄りもありませんでしたからな」
言われて借りた家は食料がそこそこ揃ってて生活感を感じさせた。今にもひょこっと人が顔を出しそうな。でも、その家主はもう居ないのだ。
「さて、それじゃあハル、森の中を探索しましょうかね」
「この村はどうすんのー?」
「ううーん、まあ用心して見回りつつなんかあったら戻れる様に精霊さんに見張りお願いしとくよ」
ハルも頷いて私と共に森の中へ。まだ居るのかねえ? 巣でもみつかりゃ分かるんだろうけど。




