アフター3:楓ちゃんサイド
澪「本当に飛ばされましたわ! 私の出番、返してくださいまし!」
私は水無月楓。元々は中村楓ってごく普通の名前だったんだけど、澪と結婚して水無月姓になりました。だって、水無月姓の人が少ないからね。中村姓は沢山あるし、お兄が居るから大丈夫。
昔はお兄第一のブラコンっ子だったんだけど、ひとみさんや澪のおかげでそれも軽減されました。乙女義姉さんもいい人だし、可愛いしね。
澪との出会いは高校の入学式の時。ずっと一人で何となく凛として時雨……じゃなくて凛としてて近寄り難かったんだよね。同じクラスになってもそれは変わらなくて、澪は水泳部でずっと一人でタイムをつきつめていたんだよね。
なんで私が知ってるかって言うと、私は部活の助っ人みたいな事をしていて水泳部にも呼ばれたんだ。私はメドレーで澪が居るのに呼ばれたんだよ。
「あの子出せばいいんじゃないの?」
「水無月様? あの方は私たちと群れるのがお嫌いじゃないかしら?」
そうなのかなとは思ったけど、誰も寄せつけないような彼女の様子に半ば納得しながら助っ人していた。
そんな彼女が話し掛けてきたのだ。最初は幻聴かと思ったよ。
「あなた、中村様?」
「楓でいいよ、えーと、水無月さん?」
「私をご存知でしたのね。話が早いですわ、楓さん」
ご存知も何も、あなたの方が有名人なんだけど?とか思いながら要件を伺う事にした。
「中村豊さんというのはあなたのお兄様でよろしいかしら?」
その質問が来た瞬間、私は警戒を最大限に引き上げた。お兄に近付く羽虫なの? 私が認める人じゃないとお兄とは付き合わせない!
「あなた、お兄の事、好きなの?」
「は? 殿方には興味ありませんわ」
「え?」
いや、本当にポカーンって感じだったよ。この人は何を言ってるんだろう……いや、もしかしたらお兄が何か仕出かした?
「私の知り合いの話なのですけど、その、その方のご友人があなたのお兄様が気になっておられる様で」
あー、わかった。そのご友人とか存在しないやつだ。
「ですので、少し調べされていただきたいと」
「まあ、それくらいいいけど、その「ご友人」とやらに会わせて貰えない?」
きっとお兄の相手になる人だから見極めなくちゃ。
「……相手の同意が取れたらそうしますわ。私だけでは決められませんもの」
まあそりゃそうだ。でもまあ、それからひとみさんに一目惚れみたいになって、だんだん惹かれていって、澪にも惹かれて、どっちを取るか迷ってたら澪が「両方」ってやっちゃったから楽になったんだよね。全く仕方ないよね。
とか思ってたら何故か私は捕まってた。なんか水無月がどうとか柳がどうとか言ってた気がする。なんだよ、ミリオンって人の名前なの?
ぶっちゃけ、脱出するのなんて簡単だし、いつでも抜け出せるんだけど、今日はバイトもないし、待ってたら澪が助けに来てくれるかなってちょっと期待してる。いや、来なきゃ晩御飯ぐらいまでに帰らないと澪が晩御飯作っちゃうよねえ。そうなったらひとみさんに食べさせて貰おう。
「お前は人質だ。澪が来るまで大人しくしてればそのうち家に帰らせてやろう」
来てくれるよね? 私なら大丈夫とか見捨てたりしないよね? いや、澪なら大丈夫。きっと大丈夫。という訳で私は心置き無く囚われのヒロインをやるよ!
「キャータスケテー」
……ちょっとわざとらしかったかも。でも誰も聞いてないから良いよね?




