アフター2:ハルの邂逅
過去のお話です。もうちょい続くんじゃよ。
始まりがいつだったのかは正確には覚えてない。でも、私がひとみんと友だちになりたくて声を掛けたのは本当だ。
私がこの街に来た時、父親と呼べる奴は居なかった。母親を捨てて逃げた奴だから。今もどこで何をしてるのかは知らないし、調べる気もしない。
母親は看護師で忙しそうに働いていた。帰ってくるといつも愚痴のような言葉を垂れ流して「アンタサエイナケレバ」などと呪いじみた言葉を投げ掛けてきた。だから私はあまり感情を見せないようにいつも笑顔でいた。お金はなくても無邪気にしてれば街の人は優しかったからだ。
そんな風に過ごしてて一人の女の子に気付いた。ずっと勉強してる暗い子。もっと明るくなれば良いのに。そう思いながら遊びに誘った。その子は最初嫌がったが、そのうち、少しずつ会話をしてくれる様になった。思えば笑顔が可愛かったなあ。
そんなこんなである日、私と仲良かった人たちがその女の子を囲んでいた。なんでも私と仲良くしてるのが気に食わなかったみたいだ。浴びせられてる罵詈雑言は聞くに耐えないものだったが、その女の子はあまり意に介さない様だった。
「あんた、生意気なのよ!」
パンッと乾いた音がしてその女の子の左の頬が赤く腫れた。その女の子は呆然としていた。というか殴った方も呆然としていた。つい手が出てしまったんだろう。
それでも何も言わないその女の子に腹が立ったのか、もう一発殴ろうとした。だから私は……
「やめなよー」
「ハルちゃん!?」
「なにやってんのー?」
「だって、コイツがナマイキだから!」
半分泣きそうになりながら言う。うんうん、びっくりしちゃったんだね。でもこういうのはいけないことなんだよ?
「それ以上この子に手を出すなら、私はこの子につくよー」
「え? ハルちゃんが?」
「そうだよ、だからそんな事はやめて……」
「だったらハルちゃんも敵なんだからね!」
そのぶった子はクラスでもカースト高い方だったから、私が離れるのが許せなかったんだろう。私は、と言うと、顔自体は整ってたと思うんだけど、母子家庭でカースト的には低い。で、この女の子も母子家庭じゃないかと言われてたからやっぱり低い。その世渡りのための愛想笑いだったんだけど。
「いいよー。いじめるような子と同じになりたくないもーん」
その子は悔しそうにしながらも取り巻きを引き連れて去っていった。私は女の子に向き直る。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。でもなんかごめんね」
「いいんだよ、私が勝手にした事だもん。でも、それでもちょっと寂しいから、私と友達になってくらる?」
はにかみながら差し出した私の手をぎゅっと握ってくれたその温もりを今でも忘れない。思えば友だちと言いながらあの子たちは私に触れようともしなかった。
その女の子は学校帰りに私を家に招待してくれた。農家で優しそうな女性が出迎えてくれて、晩御飯まで食べさせてくれた。私は晩御飯というのはレンジでチンして食べるものだと思ってたから、心の籠った手料理は本当に暖かくて心がポカポカしていた。
「うちのひとみと仲良くしてね」
言われずとも仲良くしますとも。だって学校の他の誰と居るよりも心が暖かくなってるんだから。そして、そのままお風呂に入らせて貰って母親が心配するからと名残惜しかったけど帰った。
それが私とその女の子、霜月ひとみとの出会いの物語。




