アフター1:ひとみかえる
という訳でアフターストーリーをいくつかお届けします。まずはひとみが主人公で始めます。
「ちょっと、終わったんじゃなかったの?」
私の悲痛な叫びは誰に聞かれるともなく晴天の夏空へと溶けていった。こんにちは、私です。霜月ひとみでございます。
えーと、苗字は変わってないんかって話ですが、楓ちゃんが水無月に変わっちゃったので、短期間にホイホイ変えるのは良くない、と、霜月姓にする案は無くなりました。
そうすると誰の苗字にするかなんですが……
「手っ取り早くおねえさまは水無月で良いと思いますわ」
なぜ手っ取り早くなのか分からないが、楓ちゃんと澪ちゃんの二人が居るからなのだろう。そういう事にしておく。でもね、水無月だと柳の関係に絡まれそうなんだよね。
「私は……別に文月でなくても大丈夫なんですけど。せいぜいが父との絆だけですし」
それ、大事だってば! いやまあ今一緒に暮らしてないからだろうけど、葵ちゃんの為にお仕事頑張ってんじゃん? え? 生活費入れてもらってない? 葵ちゃんの方が稼いでるから? ハルの保育園、待遇いいもんね。
「私も如月の姓は邪魔っちゃ邪魔かな。会社たくさんあるから手続きが面倒だけどね」
うん、まあ、ハルのところはアレだから私の苗字にしても良いんだけど……それやると他の人がなあ。私が他のに変わる? 水無月だからとか何とか言ってたけど、ママと苗字変わるのが嫌なんだよ、分かれよ。ママはお腹の赤ん坊に夢中なんだけど……
そんな訳でしばらくはこのまま。でもそのうち戸籍に載せられない年齢になってくるからその時は素直に偽名使うかな。日本から出て行くんじゃなければ政府も手助けしてくれるそうだし。
で、終わったんじゃなかったの?ってのは晶龍君の夏休みの宿題です。ブランちゃんは夏休みに入って早々にやり終えたらしいんですが、晶龍君はほぼ手付かず。それでカミナリが落ちたわけです。葵ちゃんの。
んで、私はなんかみんなより比較的に暇ってことで何故か手伝いをする事に。あの、澪ちゃんと楓ちゃんは夏休みでは? と思ったら学校で大学受験の為の夏期講習があるそうで。大学行くかは分からないけど受験はしたいって事だから絶賛勉強中です。
というかうちの市にあるのは国立大学の医学部と開拓者的な名前の心理と看護の短大もあるよな大学しかないんで、将来の道がある程度決まってしまう。大学行く時点である程度決まってんだろってまあソウデスネ(遠い目)
そんな訳で私は実家に帰る事にしました。まだ大丈夫だけどママの手伝いもしたいしね。ほら、妊婦って大変だから。
長い坂道を駆け上がるのも歩いて上がるのも面倒なんで風の精霊さんに運んでもらう。あはは、楽チンだわ。
見慣れた我が家に着くと変わらない実家にほっとした気持ちになる。あ、そうだ。ママとついでにパパにも結婚報告しないとなんだろうな。パパとかいつ居るかわかんないから伝言してもらおうかな。
「ママ、ただいま!」
満面の笑みで玄関のドアを開けたら、クマがフリルのエプロンを着けていた。そのエプロンはママの! 貴様ぁ、ママに何をした!?
「よく帰ったな、ひとみ」
あれ? クマが喋った気がするんだけど。お嬢さんお逃げなさいなら話は分かる。でも私の名前呼ばなかった?
「あらひとみなのね。おかえり」
「ママ、無事だったのね! クマがクマが!」
「ひとみ、パパに失礼よ」
え? エプロンからゆっくり視線を上にあげると髭面でにっこりと笑ってるクマ……パパが居た。




