1202:真打は遅れてやってくる
自力で来ましたで賞
両手両足を拘束されて万事休すというか、まあこれほどまでに求められてるならまあ、とか思うなどして、でもさすがにユグドラシルの中ってのはどうなのかと考えをそこはかとなく巡らせていると
「はーいっ、みんなー、そこまでー、!」
「ハル!」
「ハルさん?」
ハルさん?は三人の声が重なってた。そういや三人とも呼び方ハルさんなんだね。
「私が居ないのに先に始めないでよー」
「ハルさんも来たんですのね。全く、どうやって」
「誰のコネ?」
「自力だよー、自力」
てっきりロニさんが誰かに頼んでとか思ってたんだけどなあ。そういえば「真祖にしか出来ない」とか言ってた様な。
「ハルはどうやって来たの?」
「ひとみーん、今説明したげるねー」
ユグドラシルへの道は人が死へと向かう刹那の領域。まず、それを認識出来ないといけないらしい。そこで行われたのが「思考加速」である。え? バーストリンク? 電脳化してないから違うんだってさ。
んで、思考加速が出来たら、次に自分の存在を薄めること。「存在希薄」というんだとか。これはユグドラシルに行くのが目的ではなく、滅ぼされる直前に気配を極限まで決して黄泉の世界に避難するってのが目的らしい。ちなみに一歩間違えるとそのまま消滅するらしい。
「なんで、そんな危ない事したの!?」
「早くひとみんのところに行きたかったんだもーん」
「でも、それで滅んだら元も子も……」
「ロニが見ててくれたから大丈夫だよー。いざとなったらサルベージするってさー」
ロニさんを信頼してないわけじゃないけど、あの真祖時々抜けてるからなあ。
「でもまあどっちも一発で出来たから問題ないよー」
うーん、そっか。まああれか。病院で手術の時に「安全なんだけど念の為、万が一くらいだけどこんな事も起こりうるからその為の同意書」を書くみたいな話か。実際は同意書とかあっても起こったら発狂して文句言いに来る御家族の方とか御本人とかいらっしゃるらしい。
「あーあー、テステス。聞こえるか、どうぞ」
「その声は……ロニさん?」
「いやあ、無事到着出来たようで何よりじゃな」
「ロニさん、ハルがありがとうございます。ロニさんもこっち来ます?」
「いや、ワシは無理じゃからゆっくりしとくれ」
ん? ロニさんには無理? 真祖だから出来るんじゃないの?
「言っとくが、希薄な存在のまま思考加速して黄泉路を渡るのはかなり至難の業じゃぞ。自力じゃと再生に百年単位の時間が要るからの」
おいおい、やっぱり危ねぇじゃねえか。
「ひとみんが目的地に居るなら細胞がそこを目指すから問題ないよーとは言うておったが……こんな短時間で無事到着したのは奇跡じゃぞ」
絶句だよ! 下手したらハルと数百年会えなかったって事でしょ? あ、いや、千年や二千年ぐらいは覚悟して待つとは言いましたけど。それはみんなが無事である事を確認しながら眺めながら待つ場合で、行方不明になったままで待てる自信はないんだよ。
「まあそんな訳じゃから褒めてやれ。他に辿り着ける者も居らんじゃろうからゆっくりするが良い。ニアもごゆっくりと言っとったぞ」
あー、うん。有り得た可能性の話をしても仕方ない。ちゃんとみんながここに来てくれたんだ。それも誰一人として欠けず、極端に遅れることも無く。
みんな、ありがとう!




