105:険しき道
先輩の下の名前が決まりました。ギャップのあるものにしようと思ってたのですがなかなか浮かばなかったので。名字は感想でいただいたものを使用する予定です。ありがとうございました。
神代の昔、空の上にある高天原という神々の世界。
素戔嗚尊は大変な暴れん坊で高天原で好き勝手をしました。
いたずらがひどすぎて怒ったのか弟の行為を恥ずかしいと思ったのか高天原を治める太陽の神、天照大御神は天岩戸と呼ばれる洞窟に隠れてしまった。
太陽の神様が隠れてしまうと世の中は、真っ暗になりました。食べ物が育たなくなったり、病気になったりと大変なことが次々と起こります。
迫り来る夜の世界。夜の世界を支配する妹、月読命は高天原の支配を目指して動き出したのであった。
ん? そんな話だっけ?
天照大御神のひきこもった理由はともかく、先輩のひきこもった理由は多分勢い。
でも引っ込みつかなくなって出てこれないと思う。
まあ神話と違ってお腹すいたら出てくるんだろうけど。
「あの、乙女さん、ご飯の時間で……」
「要りません!」
オトメサン?
確かに先輩は乙女だけど……あれ? そういや私、先輩の下の名前知らんかったわ。
まあともかく乙女先輩は完全にへそを曲げてるみたい。
とりあえずどうするのがいいか……
選択肢は三つだ。
1.鍵を壊して部屋に入って壁ドゥーンからのディープキッス
2.とりあえず今はそっとしておいて落ち着くのを待つ
3.何もかも忘れて女子高生とイチャつく
さあ、どれだ?
豊さんは二番を選択しました。
まあそりゃそうだよね。
豊さんにはこの事態が起こった時に楓ちゃんから私の事は説明して貰ってる。
という訳で先輩のいない夕食。
例の女子高生たちが豊さんの周りにまとわりついていた。
どうやら本格的に「豊さんの彼女」になりに来てるみたい。
口々に「すみませんでした」とか謝罪の言葉を口にしながらも「でも、あれはひどすぎます、豊さん、何も悪くないのに……」と伏し目がちに呟いて項垂れてる。
うなじを見せつけつつ守ってあげたい欲をそそらせる高等テクニックだ。
しかもさりげなく豊さんが悪くない事を盛り込んでる。
そして豊さん呼び。
「妹さんも中村さんだから紛らわしいので豊さんと呼んでも良いですか?」
とまあどさくさ紛れに盛り込んできたのである。
楓ちゃんとも話したけど「あっという間の出来事で止める間もなかった」という結論。女子高生恐るべし。
……いや、楓ちゃんも女子高生なんですけど。
その女子高生さん、お名前を苺さんと言うそうで。
残りの二人は特に豊さんに絡んでこなかったんだけど英子ちゃんと美依ちゃんと言うお名前だ。
食事の際も甲斐甲斐しく世話を焼いて、いや、必要な事はオーナーさん夫妻がやってくれるんだけどお皿並べたりとかおかわりよそったりとか気の利く女アピール。
まあ彼女たちからしてみたら先輩の事を考慮に入れなくても「マイナススタート」なのだから少しでもプラスな所を積み重ねていこうという話だろう。
食事が終わって豊さんはお風呂に女子高生組もお部屋に引っ込んだ。
私は楓ちゃんにお願いして先輩の晩御飯をオーナー夫妻に運んでもらう様にお願いしてもらった。
楓ちゃんでも今なら先輩とぶつかっちゃうかもしれないので。ちょいブラコンだもんね。
「温かい……」
先輩はお部屋で一人ポツリと呟いていた。
部屋に置いてある観葉植物をドライアドにジャックしてもらって覗き見だ。
「なんで、なんで、こうなっちゃったんだろう……」
先輩は激しく後悔していた。
うん、沸点低いもんね、先輩。
「明日は、ちゃんとごめんねって言えるかな……」
かなりしょげてる先輩。
こんなのあまり見たくない。
どうやら明日には出てきてくれそうで少し安心はしたけど。
明日以降どうなることやら。




