103:惑いの先
という訳で楓ちゃん編スタートです。正確には「先輩」編なんですが(笑)
連休があると仕事に行くのがとてもめんどくさくなる。
まあ私は性分としてズル休みとかは必要でなければ出来ないのだけど。
仕事は仕事できちんとやらなきゃだもんね。
ともかく出勤だ。
仕事のやり方は忘れてないよ!
……忘れるほど量がないし忙しくもないんだけど。
特にお盆の期間は商店も休みが多くて来る人もそんなに居ない。
多少居眠りしながらでも勤まってしまうのだ。
私は居眠りしないけど。
「おはようございます」
分厚いドアを開けて店内に入る。
「あ、霜月さんおはよう」
声を掛けてくれたのはいつものように太田君。
ありゃ、心なしか黒くなってる?
「うん、太田君、おはようございます。なんか雰囲気変わったね」
「あー、うん、ちょっと合宿みたいな事をやって来てね。日焼け止めとかは使わなかったから」
「あ、そうなんだ。私も海には行ってきたよ。日焼け止めはきちんと塗ったけど」
「おはよう、二人とも。相変わらず早いね」
副支店長が来た。
相変わらず早いご出勤で。
「昨日から娘夫婦が来ていてね。孫も可愛かったけどずっと眺めてたら怒られてね」
あー、なんかわかる気がする。甘やかしてくれるおじいちゃんって感じだもの。ほっといたらそのままずっと眺めてそうだよね。
「おや太田君は見事にこんがりだけど、霜月さんは焼けてないんだね」
「私はちゃんと日焼け止め使いましたので」
「日焼けしても霜月さんは美人だと思うけどね」
あははと副支店長が笑った。
この人なりの冗談なんだろう。
「はあ、ありがとうございます」
とりあえず返事はしとこう。
「おっはよー、ひとみっち!」
先輩が元気な姿を見せてくれた。
先輩は明日からお休みを取っているので今日一日で引き継ぎだ。
「おはようございます。明日からお休みですね」
「そうなの! あのね、実はちょっと旅行に行くことになってさあ……」
食い気味に、でも照れ臭そうに言ってるって事は多分豊さん絡みだろう。
楓ちゃんとも話したけど上手くいってくれたらいいなと思う。
引き継ぎ業務は三十分程度で終わって残りの時間はほぼ先輩のノロケ話だった。
ドライアドにお水と栄養剤をあげながら聞いてあげる。
植物にクラシック聞かせると綺麗に育つって話あったけど、ノロケ話聞かされたら甘くなるのかね?
ドライアドかじってみようかな?
痛い痛い、本当には齧らないから、冗談だから、ツタでつねるのやめて!
で、ノロケ話だけど相当豊さんにベタ惚れみたい。
先輩曰く「向こうが私にベタ惚れ」だそうなんだけど、「豊さんのご飯が美味しい」だの「けっこう背中がガッチリしてる」だの聞かされたら誰でも分かると思う。
それに、一人の人の事で喋り続けられるのってとってもすごい事だと思う。
上手くいくといいなあと思いながらも多分豊さんなら大丈夫だろうという安心感はある。
あの楓ちゃんのお兄さんだもの。
正義感は強いし、行動は実力伴ってないかもしれないけどかっこいいし、女子高生たちもハートマークを……
あれ?
そう言えば女子高生たち、明らかにあの時ハートマーク飛んでたよね?
その後どうなったのか全く確認してない……
というか気にしても居なかった。
私に直接関係無いんだもん!
なんかきな臭い臭いがするよ。
明日から先輩旅行って言ってたけどこのままかたまってくれたら一番なのかも。
その日の勤務が終わり、外に出ると澪ちゃんと楓ちゃんの女子高生コンビがそこに待っていた。
「あの、ひとみさんにご相談があるんですけど」
楓ちゃんがおずおずと切り出した。
「お兄と彼女さんをくっつけたいんで協力して貰えませんか?」
まあある程度の状況は知ってるけど詳しい内容を聞くために近くのファミレスへ移動しましょ。




