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歴史の陰で生きる異種族  作者: 青枝沙苗
7章 江月建国

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12話 ドワーフの洞窟②~牢の中~

 ドワーフの洞窟は階層が幾つかある。

 マナ達が辿り着いた場所は入口、広場に当たる場所。族長もその階層にいる。そこから下の階層へ行くにつれて、居住区、宝物庫や貯蔵庫があり、最下層に牢屋があるのだ。

 とは言っても、罪人等は滅多に出る事はないので、牢屋はあっても五つ程度しかない。

 その五つの内、一番奥にマナ、その隣にフォルトアと別々に入れられた。


「私の軽率な行動のせいで、貴方まで捕らえられる事ありませんのに……」


「姫様一人にする訳にはいきません。僕は緋媛の代わりの護衛ですから、姫様に何かあったら僕が緋媛に怒られてしまいます」


 マナからフォルトアの顔は見えないが、苦笑いしているような言い方をしている。

 そんな事ない、と言いかけたマナだが、彼女自身が龍の里を発つ前に緋媛に怒られている為、安易には言えない。緋媛が本気で怒ると、何者でも切り捨てそうな冷徹さを見せるのだから。


「お優しいのですね。貴方が声を荒げて怒った所なんて一度も見たことがありません。もちろん、付き合いが短いのもありますが。……フォルトア、心優しい貴方でもお怒りになる事等ありますか?」


 思いつくように興味を示したマナの疑問に、フォルトアは牢の壁越しに口を閉ざす。曇った表情をした彼は、重々しく口を開き、呟く。


「怒り……、いや、怒りはないな。むしろ人間に対する恐怖と憎しみの方が強い」


 この声が聞こえなかったマナは、耳を傾けながら「フォルトア?」と声を掛ける。

 はっと気付いた彼は、いつもの笑みを取り戻して、


「時と場合によりますよ」


 と答えたのだが、その笑みは作り物のようであった。

 マナにはその表情は見えずに声しか聞こえないので、いつも通りのフォルトアにしか感じられない。

 話題を逸らしたいフォルトアは、現在の置かれている状況から別の話題を繰り出す。


「それより、そろそろここから出られる頃だと思います。イゼル様が族長殿と掛け合って下さっている筈ですから」


 するとその時、遠くからザッザッザッという音が聞こえてきた。一人や二人ではない、もう少し多めの足音のようだ。

 土を踏みしめるこの音がだんだん大きくなってくると、やがてマナ達の視界に五人のドワーフが入る。そのドワーフ五人はマナとフォルトア、それぞれの牢に二人ずつが立ち、もう一人は真ん中で仁王立ちをした。


 解放とは思えない空気を感じ取ったマナは、ごくりと固唾を飲む。

 仁王立ちをしている丸刈りのドワーフが口を開く。


「人間、お前の目的は何さー!」


 はっと目を見開いたマナは、「目的……」とぽつりと呟いた。

 丸刈りのドワーフが続ける。


「今、我々異種族と人間はダリス人の異種族狩りのせいで関係が悪化しているさー! お前は良い人間か? 悪い人間か?」


「私は……」


 良いか悪いかと言われては、マナ自身は良い人間の部類である。

 だが、異種族からの目線は如何だろう。『人間』は人間としてしか見えず、個人として見えないのではないか。人間同士が国毎に人種が違うと見えるように――。


(……私が良い人間なんて、安易に答えられない。それを決めるのは周りの人々)


 マナの考えを知ってか知らぬか、フォルトアは「姫様」と不安げに声を掛ける。

 彼女はすっと立ち上がり、ドワーフ達に向かって堂々と言い放った。


「善か悪かは私には答えられません。ただ、これだけははっきりと申し上げます。私は、異種族狩り等という愚かな行為は許せません! その行為を止めたいのです!」


 その眼光は固く決意されたものがあった。

 また、ドワーフ族の瞳に見えたマナはただの人間には見えず、何かしらの威厳すら感じたのだ。

 ――が、それに臆すわけにはいかない。仁王立ちのドワーフは「ぞ、族長判断を待つさー!」と若干後ずさりをしながらそう言うと、部下を引き連れてささっとその場を去った。


 緊張の糸が切れたマナは、ぺたりとその場に座り込んだ。


 ――直後、どすんどすんという音が聞こえてくる。それも一歩、また一歩進む毎に音が大きくなってゆく。

 何事かと思った瞬間、何かの影がマナを覆いかぶさった。


「ほーう、この人間が未来の人柱ダスか」


 振り向くと、軽く二メートルは超えるであろう身長に、はち切れんばかりの筋肉を持つ巨体の男が立っている。首を覆い隠すぐらいの黒い髭を撫でるように掴みながらマナを見下ろすと――、その場にしゃがんだ。


「で、禁忌を犯してまでこの時代を変えようというダスか」


 何故それを知っているのか、マナとフォルトアは疑念をいだきつつ警戒をしている。

 その目的を知るのはごく少数。この場にいない緋媛はもちろん、エルフの里で知られてしまったイゼルとフォルトアしかいない。フォルトアはマナの側にいた為、考えられるのは――


「人柱がそんな事をしちゃあいかんダスなぁ。なぁ、イゼル殿」


 やはり龍族の族長であるイゼル・メガルタであった。

 巨体のドワーフの後からふらりと歩み、やや険しい表情で申し訳なさそうに語る。


「すまない。フォルトアはともかく、人間である姫の説明をするにどうしても色々と明かす必要があった」


 そして彼は巨体のドワーフを見やった。


「ザクマ・アロンド殿。実際に対面してお解りだろう、姫に悪意がない事――」


「いやー! 人間の中でも可愛い娘ダスなあ!」


 イゼルが言いかけた時、マナを見て満面の笑みを浮かべるどころか、蕩けそうな表情になったザクマ。

 すると、即座にマナとフォルトアを入れていた牢を開錠するよう、見張りのドワーフに命じた。


 解放されたマナとフォルトアは、牢から出るなり族長の家――と言っていいのだろうか。洞穴の中なので、広い一室としか言いようがない。

 とにかく、そこへ案内された。それも、ドワーフ族の族長であるザクマ自らが先導して。


 彼は着くなり、マナに向かってこのような事を口にした。


「オイラはなあ、あんさんのやる事、反対派しないダス」


 それは、ドワーフ族の族長でありながら、過去を変えるという禁忌を犯すことに肯定した発言であった。






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