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97.別邸の晩餐

「お帰りなさいませ、ウィリアム様、リリーお嬢様」

公爵家別邸に戻ると、満面の笑みのジニアが出迎えてくれたから、何かほっとした。



ゆっくりお風呂に浸かってから、夕食の席につく。



今日は兄様も一緒の晩ごはんだ。



本日のスープはトマトのスープだった。

完熟トマトをトロトロに煮込んで、パセリを添えたシンプルな味付けだが、疲れた身体にトマトの甘みと酸味が染み渡る。


前菜は、ほうれん草のキッシュとキュウリのピクルス、カボチャとアスパラガスのソテーで、やはり少量ずつ可愛く盛り付けられている。


メインは、鯛のフリットだった。

サクサクした衣と、ほろっと崩れる身のバランスが良く、オランデーズソースがよく合う。


パンは焼き立てのフォカッチャで、香草の風味が鼻を抜けて、やはり美味しい。



デザートは旬の果物のタルトで、ブルーベリーやいちぢく、ぶどうが乗っていた。



今日も大満足な晩ごはん!と、食べ終えてからふきんで口を少し拭いていると、



「リリーの歌が素晴らしいと、もう王城で評判になっているそうだね」

嬉しそうに眉尻を下げた父が声をかける。


「しかもとても賢いという噂まで耳にしたよ。」

ウィリアム兄様まで加わる。




「こんなに可愛くて歌が上手で賢いなんて、才色兼備とはリリーのことだなぁ」

扇子があったら扇ぐんじゃないかという上機嫌ぶりだ。



「当日は、私も迎賓席でお前の歌を聴くことになっている。

他にもグルナ侯爵やアゲート公爵も列席する。

皆に娘自慢ができると思うと、今からものすごく楽しみだ」


ワインをグラスにくるくる回しながら饒舌に話す。



リリーは公子達のことしか頭になかったが、そういえば自国の重鎮達もたくさんいるのだと気づいて、少し胃が痛くなった。






明日も音合わせと練習がある。

明日からはヴェルメリオ先生は来られないため、今日教えてもらった滑舌の練習と、チェストボイスの練習をすることになっていた。



ジニアの渾身のマッサージを受けた後は、早めに寝ることにした。



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