59.ラピス公国
「おはよう、リリー。突然すまなかったね」
翌朝、さわやかに王子がやってきた。
「いいえ、構いませんわ。いつでも気軽にいらして下さいませ」
挨拶をして応接室に案内をする。
傍らに立つオリバー様の様子がいつもと違うので、リリーも少し緊張をし始めた。
雑談から始めようかとも思ったが気になるので、多少はしたないが、リリーの方から切り出した。
「エルム王子様、それで、今日はどのようなご用件ですの?」
「あ、ああ。そうだな。何から話そうか…
リリーは、ラピス公国を知っているかい?」
「はい、マルグリット先生の授業で習った程度ですが…」
確か、この国を徳島県としたら、愛媛県の位置にある製布と製紙産業が盛んな国だったわね。
リリーは思い出しながら聞いていた。
「あの国は、このクルール王国と違い、公国だから、王政ではなく大公が治めている国だ。
ラピス公国は、クルール王国と1番接している面積が小さく、これまであまり交流はなかった国だ。
だが、国の面積は当国の2倍近くある大国で、しかも製紙産業が盛んで書籍が多く、教育も進んでいる。
頭が切れる人が多いから頭脳国家と言われているんだ。
その公国の君主が、マティータ大公様だ」
ふんふん。
だいたい、聞いていた内容と一緒だわ。
「マティータ大公様にはご子息が3人いらっしゃる。
大公様は今年で50歳になられ、そろそろ長子のイパロン様に大公の位を譲られるおつもりと聞く。
確かイパロン様は25歳、次子のトュシュカ様が19歳、三子のピンゼル様が7歳になられる。」
子供さんの年齢が幅広いな…
大公様の奥様は頑張られたのね。
と思いながら聞いていると、
「そのピンゼル様が、なぜか急に我が国に行ってみたいと言い出したそうなんだ。
マティータ大公様は、歳が離れて生まれたピンゼル様を殊のほか可愛がっておいでで、そのお願いを聞くことにしたらしい。
表向きは交流を兼ねた視察だが、実の所はピンゼル様のための旅行だ。
さっき年齢の話をしたのは、ピンゼル様と年の近い僕が、ピンゼル様のお相手をしてはどうかと父様に言われたんだ。」
「なるほど。そんなことがありましたのね」
ほほー…
7歳というと、小学校1年生くらいかぁ。
百合子だった頃、父さんと同じ大道具をしてた隣の家の子が今年小学校に入ったって言ってたから、あのくらいの子ね。
1番わがままでヤンチャな年頃かもしれない。
でも、それが私とどんな関係が??
「それでね、最初の夜の歓迎会の余興として、王国の国立オーケストラが演奏をすることになったんだけど、でもそれだけじゃありきたりだって大臣達が言うんだ」
ふんふん
「何か、他の国にない珍しい催しがないかと話し合ったら、」
ふんふん
「リリーの歌の話になったんだ」
なんで!?




