47.お茶会終了
ローズ嬢は、不覚にも感動してしまっていた。
噂の割にショボい歌声だとバカにしてやるつもりでわざわざ今日このお茶会に来たのだ。
なのにまさか自分が感動して、涙を流すことになるなんて。
悔しくて情けなくて、ドレスを握りしめた。
リリーはたくさんのご令嬢から声をかけられ、ぜひうちのお茶会、誕生日会に来て欲しい、歌をまた聴かせてほしいという類の話で誘われまくっていた。
皆自己紹介をしてくれるが、名前が長いから全然覚えられない。
とりあえず、お友達(?)がたくさんできたようだ。
そしてふと、ローズ侯爵令嬢がポツンと立っていることに気がついた。
取り巻きA、B、Cは、少し離れて気まずそうにその様子を見ていた。
「ローズ様」
今度はこちらから声をかける。
名前を呼んでも返答はない。
「ローズ様が、私を誘って下さらなければ、私は皆様とこのようにお近づきになれてはいなかったでしょう。ありがとうございました。」
リリーは当初、お茶会では空気でいる予定だった。
ただ、空気でいれば結局お友達はできないし、社交の練習にはならない。
結果的に、リリーはローズ様のお陰でお友達やたくさんの人とのつながりを得られたのだ。
リリーがにこにこしてローズに御礼を言うので、ローズは何も言えなくなってしまった。
「…ふん。 歌はまあ、思ったより良かったわね。
でも本来、歌には伴奏がつきものよ。機会があれば、私がバイオリンで伴奏をして差し上げても宜しくてよ」
「あら、ありがとうございます。それは歌いやすそうですね。ですが、この歌には楽譜がないのです…」
「何それ、リリー様の創作ってこと? まぁ、どちらにしても大丈夫。私は一度耳で聴いたら、音として記憶し、すぐに再現できるから」
なんとローズ様は相対音感(耳コピなら鍛えているのは相対音感。そして誰でも持っています。)の持ち主だった。
結局、音楽に魂を捧げていたローズ様は、同じく音楽に秀でていて可愛いリリーを認めてしまい、王子妃奪取計画は一旦白紙に戻したようだった。
この後はまた和やかな雰囲気で、何人かの令嬢が楽器の演奏を行い、お茶会は無事に終了したのだ。
リリーはマルグリット先生に御礼を伝え、家路についた。
はぁー!!
疲れた!
今日はよく頑張った!
おやすみなさい…




