38.体操本格始動②
「イチッ ニッ サンッ シッ」
ふっ ふっ ふっ …
今日は逆立ちで腕立て伏せトレーニングだ。
崩れたら危ないので、足首をマリーに持ってもらっている。
倒立回転はまだ一度しかできない。
つまり… 縄跳びで言うと、二重跳びを一回なんとかやってしゃがみ込んでしまう状態といえる。
二重跳びを続けて何回も飛ぶにはまだまだ鍛錬が足りないのだ。
そんな感じだ(例えが分かりにくいかな…)
とにかく上肢のちから(瞬発力、一回の威力、持久力)が足りない。
鍛えるぞーっ!
マリーの瀕死の顔を見ないようにして腕立て伏せを続ける。
「こんなこと、旦那様やウィリアム様に知られたら…」
マリーは恐怖で震えていた。
だがそこは、もとはヤンチャなお転婆マリーだ。
1週間もしたら慣れて、色々離れ技ができるようになったリリーをちょっと羨ましく思い、トレーニングを一緒にしだしたのだ。
マリーはメイドで、屋敷じゅうの洗濯や掃除をしているから全身の筋力はもともとある。
足りないのは柔軟性だ。
16歳。ちょっと新体操を始めるには遅いかもしれないけど、トレーニング仲間がいるととても楽しい。
体操も好きだけど、自分の剣の実力も知りたい。
お兄様からもらったレイピアは切れ味ばりばりの本物だから、マリーにこっそり騎士たちの練習用の剣を借りてきてもらった。
細い木の棒のような練習用の模擬剣を構える。
マリーは最近リリーのことを令嬢と思っていないので、あまり抵抗なく相手に構えた。
合図をマリーに教える。
サリュー(礼)
アンガルド(構え)
アレ(始め)
だ。
アレ!!の合図でふたりは斬りかかる。
仮にも貴族の女性だから、身体にできれば(←?)傷はつけたくないので剣を払うことに集中する。
剣を先に落とした方が負け、というルールにした。
結果は圧勝。
すぐに決着がついた。
もちろん、
マリーが勝者だった。




