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35.体育館完成!

体育館は公爵家の敷地内の離れにある夜会用ホールを改築して作られたため、少し歩く必要がある。


公爵家は敷地の南東側にあり、夜会会場は西側の道に面している。




リリーはジェイバーと会場に向かった。


「わー!!すごい!!広い!綺麗〜!!」

もともと夜会会場なので天井の飾り彫りや壁の装飾はそのままで、廊下にある置物の類もセンス良く配置されている。



そしてそして、リリー待望のクローゼットルームに入る。

クローゼットルーム内に造られたリリーの指示した特別スペース(新体操練習場であり表向きはくつろぎ場)は、床面に可愛い花がらのキルトが張られ、端が外れないよう畳の縁みたいな濃い柄の布枠で留められていた。



「可愛〜い!! イメージは無地だったけど、花がらも可愛い! 布を重ねるより、キルトの方が柔らかくて、手をついても痛くなさそうね!」


リリーは嬉しさを爆発させながらキルトの床にゴロゴロと寝転がった。


「はぁ〜〜っ… 最高!!」



それをなんとも言えない目でみつめるジェイバーに、リリーは、

『ウッ… 流石にはしたなさ過ぎたわね…』

と反省してむくっと起き上がり、




コホン。

「ジェイバー、ここに、公爵邸にある使っていないベッドのマットレスを持ってきて欲しいの。2つくらいお願いしたいな」


「マットレスですか… 2枚も何に使うんですか?」



そりゃ、これから宙返りの練習を始めるからね!

さすがに宙返りの練習で落ちたらシャレにならないから、怪我をしないよう、まずはマットレスの上でやりたいかな!!

… とは言えないので、



「えっと、休憩のため?かな? ちょっと横になりたい時もあると思うの」

ウフッと気まずい笑みを浮かべながら、そろそろこの病弱設定は使えなくなるだろうと思っていた。




リリーはもうちゃんと食べて熱も出さず、倒れたり伏せることなくずっと元気にしている。

相変わらず色は白くて手足も細いが、血色は良く肌や声に張りがある。


体育館をおねだりした3ヶ月前とはほぼ別人なのだ。

そろそろ怪しまれてもおかしくない。



だから、このマットレス搬入を最後の病弱令嬢ワガママにしようと思っていた。




「はぁ…  分かりました。さすがにひとりでは運べないので、騎士何人かに手伝ってもらいますよ」


「えぇ、構わないわ。 お願いね」


やや不信感と、嫌々ながら感は否めないながらも、何とか飲んでもらえたので、リリーはひとまず安心した。


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