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318.SIDE リリー①

ピッ  ピッ  ピッ  ピッ  ピッ



小鳥のさえずりにしては規則的な音が聞こえる…



「んうっ…  う 」



口から呻き声が零れるが、その声の低さに自分で驚いて目を開けた。



「!!??」



無機質な石膏?の、天井。

左右の腕に繋がれた透明な管?紐?

口に被せてある透明なカップからはシューシューと何かが漏れる音がしている。

先程聞こえた鳥の鳴き声(?)は胸のドキドキと連動してそうだ。なんでだろ?不思議…


ビックリして大きく息を吸うと、冷たい空気が胸を満たし、苦しくなっていきなり咳き込んだ。



ゴホッ!  ゴホゴホゴホ!!


手で口を覆おうとしたら、透明なカップが邪魔をする。

その手は見たことのない色をしていた。



「百合子!!! 百合子…っ!!」



急に動いた身体に驚いたように駆け寄ってくる女性がいた。

ぼさぼさ頭で、面妖な衣装を着ている。

涙を流しながら私に抱きつき、しきりに手を擦り始めた。



「目が覚めたのね…っ  あぁ神様…!!」


嗚咽し涙を零して手を擦り続ける女性に、寝たままでは失礼かと思い、ゆっくり身体を起こした。

それを見てますます泣き崩れる女性。

一体どうしたのだろう。


私を百合子と呼ぶなんて、誰かと勘違いされているのかしら。



はらり、と肩から落ちた髪は黒く、女性の震える肩に差し伸べた自身の手は羊毛ベージュのような色だ。

ん?と思ってしげしげと眺める。

さらに、恐る恐る自分の頬、首、身体に触れてみた。


サラサラした白金の絹糸のようだったウエーブヘアは見る影もなく、黒くてギシギシした指通りの髪。

紙のような皮膚と枯れ木のような身体でなく、油分のある、どちらかというと男性的な、引き締まった身体。

・・・とりあえず、女性ではあるようだけれど。



ここはどこで、この女性は誰で、こんな紐や管に繋がれている私はどうしたのか…

呆然としながら、ただただ涙を流す女性が落ち着くまで彼女の背中を擦っていた。




※  ※  ※  ※




「熱性脳症による一過性健忘!?」



"お医者様"に、"お姉様"がそう聞き返していた。

先程、この部屋にいる人と自分との関係性について説明してもらった。

理由も原因も分からないが、どうやら私は、百合子さんという人の身体に入ってしまったらしい。

しかも多分、違う世界の。



「つまり、記憶喪失じゃないの… 治るのかしら…」


お姉様が心配そうに呟く。

"お母様"は、先程と打って変わって真っ青な顔色で、一言も言葉を発しない。

かなりショックを受けられているみたいだ。

何か、ごめんなさい。私もわけがわからないの。



とにかく私、"百合子"は、熱病にかかって"脳炎"を起こし、記憶喪失になった…らしい。

お医者様からの診察で、そう診断された。

2週間前から熱を出していたが、1週間まるまる意識が無かったそうだ。

致死率の高い熱病だったそうで、特効薬も無く、お母様は最悪の事態を想定して泣き暮らしていたと聞いた。

それは… それほど大切な娘が、やっと目覚めたと思ったら自分のことも誰のことも覚えていないなんて、さぞかしショックだろうな。



「・・・ごめんなさい」


百合子が途方に暮れて謝ると、お母様はハッとした顔でこちらを見つめた。



「いいえ、百合子が謝ることなんて何もないわ。

こうしてまた声が聞けて、隣に座っておけるだけで有り難いわ。神様に感謝しなちゃいけないのに、馬鹿な母さんね」


そう言って百合子を再び抱きしめた。


リリーは、誰かに抱きしめられたことが無かったので少し驚いた。

恥ずかしいような、逃げ出したいような、嬉しいような複雑な気持ちだ。

その腕にそっと手を添えると、急に身体が重くなった。

お母様が被さるように倒れてくる。



「お母様!!」


驚いて叫んだ。

お母様はズルズルとベッドの端から崩れ、床に伏した。






10歳の身体に18歳が入るのはまぁ…チート的な感じだけど、18歳の身体に10歳が入ると… 精神年齢幼な目のコになっちゃうから大変です( ゜д゜)ハッ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 山を超えたなら健康な肉体ゲットだぜ いやまあリリー(の魂)にとっては暴れ馬な高性能機かもしれないけど
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