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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
316/325

316.結婚式 その後①

最後は王子からの挨拶で締めくくり、リリーと2人揃ってお辞儀をしてから参加者の退席をお見送りする。



手土産には、王妃様の領地で採れた宝石をあしらって作られたカフスボタンとブローチのセット(ご夫婦用)と、ハルディン夫妻の染めた布で作った美しい造花の花束、ラピス公国の上質なバターを織り込んだクロワッサンなど、お世話になった方々や国の特産品を詰め込んだバスケットにした。

この世界では、引き出物の概念は無いらしかったが、お帰りなられる方1人1人にバスケットを手渡すと、最初は驚かれたものの、その後大変喜ばれた。



本当は、"夫婦末永く年輪を重ねられますように"の、バウムクーヘンを作りたかったのだが、どうも上手く作れなかったのだ。

そのため、層を重ねるという点で類似性のあった、クロワッサンに白羽の矢が立ったといわけだ。



この世界にはクロワッサンがなかったので、試食の段階からかなり好評だった。

きっと今日参席してくれた人も、気に入ってくれると思う。




「今日は楽しく美味しい結婚式でしたわ。お招き頂いて、 ありがとうございました!

お幸せに」


「お土産までこんなに頂いて恐縮です。今日の素晴らしい式は、王国の歴史に残るでしょう」



「この度はおめでとうございます。思慮深く人民想いのお2人が、これからこの国を担われるのでしたら、王国は安泰です。何か助力が必要な時がありましたら、何でもお申し付け下さいませ」



バスケットを手渡す時に、一言ずつ言葉を交わして握手をした。

顔しか知らなかったり、名前しか知らなかったたくさんの人と少しでも話すことで、きっとこれからの王城生活も過ごしやすくなるだろう。


少し気まずそうに挨拶に来た宰相にもバスケットを手渡し、言葉を交わした。




※  ※  ※  ※





「リリー、今日はお疲れ様」


その夜、湯浴みをしてゆっくりした服装に着替えたリリーは髪を梳かしていた。

今日から客間ではなく、王子と同室である。


初めて入ったその部屋は、普通の平屋一軒家ぶんぐらいはある広さでリリーは大層驚いた。



「皆喜んでくれていたし、式は大成功だったね」


「はい。失敗や問題も無く式を終えることができて安心しました。王子も、お疲れ様でした」



・・・。



「リ…」

「では寝ましょうか!」


「!」


若干被せ気味のリリーに、開きかけた口を閉じる。

百合子は、結婚式の後に何をするかという問題に、薄々気づいていた。しかしリリーはどうだろう?

転生してから今まで、ジニアからも誰からも、この手の話はされていない。

かなりの純粋培養な筈だ。

今年14歳になるリリーと、15歳になる王子… まだ早いんじゃないかな。

知らんぷり知らんぷり。



何からも逃げることのなかったリリーだが、今回だけは尻尾を巻いてくるりと丸まり、ベッドに逃げ込む。

ふわりと、まだ新しいシーツの匂いがした。



「ふぅ…」


仕方ない、というように一瞬俯いた王子が、隣に潜り込む。

布団がもぞもぞと動く。

気配を消してジッとしていたリリーの手を、そろ〜っと動かした手で、王子が握った。


にわかにリリーが緊張する。

突然胸が早鐘を打ち出した。



「リリーは自分で分からないかもしれないけど、正直で、真っ直ぐな女性だ。僕はそんなリリーが大好きだし、心から愛している。

でも、だから君は隠し事が難しい」



ドッ ドッ ドッ ドッ

鼓動が外まで聞こえるんじゃないかという大きさになってきた。

手足に自然と力が入る。



ふいに、王子がクスリと笑った。



「リリー、知ってるんでしょ?」


!!!!

ドッ! ドッ! ドッ! ドッ!



「大丈夫だよ。リリーの気持ちが僕に追いつくまで、無理なことはしないから、安心して」


急に影が被さり、ギュッと目を瞑ったリリーの額に、王子がそっと唇を落とした。


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― 新着の感想 ―
[一言] その前に自分の功績がリリーに追い付かないと駄目だろうに 現状だと運良く優秀な王妃を娶った凡庸な王でしか無い
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