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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
309/325

309.王城会合⑤

「父様!!」


バルサムの驚いた声で扉を見ると、ふっくらした温和そうな金髪男性が立っていた。



「バルサム… 今の話は本当なのか…? 

誰かをかばっているとか、本当は勘違いなのではないか?」



「 … 」



「バルサム…」



気まずそうに俯くバルサムは、否定をしなかった。

ただ、悔しそうに唇を噛んだ。



「だってまさか王子妃が紛れ込むなんて… 思わないじゃないか。 俺は、俺の進む道を邪魔する奴を排除しようとしただけだ。

やり方だって、別に命を取るようなものじゃない。

そこら辺の奴が普通にやることばかりだ。

しかもリリー様に怪我をさせた訳でもない。

それなのに、なぜこんなことに…」


誰とも視線を合わせず、吐き捨てる。


ライバルを蹴落とすなんて、競争社会じゃ普通だと彼は言っているのだ。

相手が王子妃リリーだからこんなに(王城に呼ばれるくらい)問題になった。

でも、王族が騎士に紛れ込む方が普通じゃないんだ、と。




不敬だぞ!

口を慎みなさいバルサム!


と、隊長達は言いたかったが、宰相パパが傍にいるため、何とも微妙な雰囲気が漂う。

確かにリリーの行動は王族にあるまじきことだったが、歴史を紐解けば、こんなワガママ、ワガママのうちに入らない小ふざけ程度のものだ。

貴族子息ごときに糾弾できるものでもない。それなのに、要は"あいつだけ何で特別なんだよ"と口に出してしまうあたり、まだまだバルサムは子供なのだと思われた。


ここは宰相パパからきっちり言って頂こう。

そんな隊長達の苦悩と期待を背負って、宰相が口を開いた。



「確かに…  リリー様も、少し冗談が過ぎましたかな」


!?

!?


そう言って宰相はリリーに慈悲の顔を向け、神妙な顔で頷いた。



「王も仰っていました。"この件で、リリー様は王族としての自覚や影響力を理解できるだろう"と。

我が息子も、リリー様もまだ年若く、子供とは過ちは起こすものです。今回の件も、苦い思い出ではありますが、それを糧に一層の成長が期待できることでしょう」



うんうんと満足気に首を振る宰相に、隊長達はコチーンと固まり、何も反応ができずにいた。



そういえば宰相は… 死ぬ程子供に甘いのだった…!!



「 … 」

「 … 」



それを肯定の意と宰相は受け取った。


「バルサムも、だからこんなに憔悴していたんだな。

昨日から、様子がおかしいと思っていたんだ

おぉ、可哀想に酷い顔色だ。 うむ、充分に反省はしているようだ。

幸い、リリー様にお怪我や実害は無かったようだし、王妃様もご無事だ。

今日はもう下がらせて貰っても宜しいかな?」



宰相が眉を下げてバルサムの肩に手を置き、退出を促す。

何のかんの煙に巻き、良薬は口に苦し的な話で締めくくりかけている。

宰相がちらりとリリーを見た。



えっ、私?


リリーも、もともとそれどころではなかったし(アゲート侯爵退職話で頭がいっぱい)、言われてみればそうかも…?などと、だんだんよく分からなくなってきたので、コクリと頷いた。



しかしそこは、王妃様が黙っていなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] あー、それは宰相としての資質を疑われかねない発言だなぁ まずリリーの責任を問うてだから自分の息子がやらかしても仕方ない、と言っちゃってるし
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