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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
307/325

307.王城会合③

結局、アゲート侯爵の決意は硬く、また現隊長に息子様(シエル様の兄様)も就かれていることもあり、後進に譲られるお気持ちのようだ。


「王子妃様が王族に加わられ、騎士に新しい方々も入られるこの時期が、私の良い時期であったのでしょう。

子供達も立派に育ち、皆騎士として王族の皆様をお護りできるようになっておりますし、私はそろそろ一線を退いて、妻と余生をのんびり過ごすのも悪くないと思っています。

責を果たせないまま任を離れることは心苦しいですが、後任者へしっかりと引き続きを行いますのでご安心下さい」



「そんな…  何とか思い留まって頂けませんか…!」



リリーは食い下がるが、王妃様の鋭い視線に口を噤む。



「リリーさん、私も長く傍に仕えた侯爵を、このような形で失うことは大変辛く、引き止めたい気持ちは同じです。

しかし、王族たる者、私情は心に収め、客観的に判断できなければなりません。今回の事件は、全員無傷では解決しないものでしょう」




「 … 。 も、申し訳ありません…  」



王族の暗殺が絡む事態で、しかも意図せずではあるがリリー(王子妃)をも危険に晒したのだ。

誰かが責任を取らなければならない。

リリーは侯爵を説得することが難しいことを理解し、うなだれて俯いた。

確かにリリーのせいだけではないのだろうが、一端を担いだことは間違いない。

自らの行いが他者に与える影響について、甘く考えていたことを心底悔いた。




※ ※ ※ ※



その頃、宰相(←バルサム父)の所に、書簡が届けられた。


上総国の元首からだ。

書簡には、自国の問題が王国にまで害を及ぼしたこと、王妃様を害そうとしたことへの陳謝が綴られていた。

背後関係を洗って事実確認を早急に行い、後日正式に報告をさせて頂きたいと、まずは急ぎの謝罪がメインの内容であった。



花祭りの上総国の踊り子が実は刺客で、王妃様の命が狙われたが騎士が何とかお護りして事なきを得た、ということは報告を受けていた。

刺客の動機は、数年前の宝石偽造事件に発端していたようだが、お国騒動の要素が強そうで、どちらかというととばっちり感がある襲撃だったようだ。


あれからまだ3日しか経っていない。

とりあえず王様に書簡が届いたことを報告しに行こう。

そういえば、今日は息子が王城に呼ばれていたな。

ついでに、ちょっとばかり接見室に寄って、顔を出そう。



などと考え、立ち上がっていそいそと執務室に向かう。

ノックをして執務室に入り、王様に書簡を渡して報告をする。

王様はざっと目を通して頷くと、書簡を返した。


「また詳細な調査報告が届いたら持って来てくれ。

その時は、王妃と共に見る」



「はい。かしこまりました」


恭しく受け取り、退室しようとすると、王様が呼び止めた。



「宰相よ、まぁ、その、王子妃は賢く利発であるがまだ子供だ。今回のことは彼女の落ち度も大きい。

今回のことで、王族の自覚や影響力を理解できるだろう。良い経験といえば、良い経験だった。

お前の息子の責任だけではないから、気を落とすな」



…?


王様はどちらかといえば、哀れみの眼差しでこちらを見つめている。


王子妃… リリー様の落ち度?

息子の責任??



「申し訳ありません。よくお話が見えず…

 今回のこと、とは、何のことでしょうか?」



「なんだ、息子から何も聞いていないのか。

今日呼ばれているのは、この件のためだろう。

少し厄介な話題なのだ。正直、処遇の判断が難しい」


王様は顔をしかめて目を閉じた。

その様子を見て一気に不安な気持ちになった宰相は、恐る恐る詳細を尋ねた。



そして…


騎士訓練、近衛騎士見習いにリリー様が変装して参加していたこと、息子バルサムが事あるごとに張り合い、嫌がらせをしていたらしいこと(←弓へ細工を命令された子分がバラした&馬舎世話人から馬に良からぬことをしてたことがバレた)、あまつさえリリー様を王妃様襲撃の内通者よばわりし、頭をはたくようにかつらを落とした…

ことを知ることになった。


しかも、リリー様が扮していた騎士は、スピネルと言うそうだ。




スピネル? どこかで聞いたような…  あぁ…!



宰相は目の前が真っ暗になった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 両親はわかる人なのね、なのに息子はなぜそうなった! 権力があったのが慢心になったのかな?
[一言] >嫌がらせをしていたらしいこと リリーの件はさておいてもこれは明らかに付け込まれる隙になるから近衛としてアウトで 信用出来ない同僚なぞ不要
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