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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
299/325

299.スピネル男爵家①

「ではリリーさん、また明後日にお会いしましょう」


さすがに大変な1泊2日の日程だったので、翌日はお休みとなっている。

王妃様もリリーも1日ゆっくりすることになった。



「はい、王妃様。 この度はご迷惑をお掛けしました…」


「その件については、近衛の方もお話したいことがあるそうだから、明後日に席を設けましょう。

過ぎたことですし、色々とありましたから、まずは身体を休めなさい。

それではね」


「ハイ! 宜しくお願い致します!」



外はもう真っ暗だ。ゆっくり夕餉を食べる時間ではないけれど、お腹はペコペコだったので、部屋に戻ってジニアにスープを温め直してもらった。





「まぁ!お嬢様、それでは変装がバレてしまわれましたのですね」


「そうなのよジニア… 今日は遅いから王城側も動かないと思うけど、明日には色々し始めると思うの。

他の人の口から聞くよりは、私の口から説明したい。

明日、なるべく早くグレイとグリスに会いに行くわ」


「お嬢様直々に出向かれるのですか!?

 仕方ありませんね…(←甘い)  

どうせ王城の方には内緒で行かれたいのでしょう? お忍びで出掛けられるなら、公爵様に馬車を出して頂いた方が良いでしょう。

今日中に公爵様に連絡をしておきます」


「ジニア! ありがとう!!」



リリーはジニアが持ってきてくれた春野菜のクリームスープを美味しそうに食べ始めた。





※ ※ ※ ※




翌朝、侍女服を着てリズとなったリリーは、ジニアと一緒に父様が貸してくれた馬車に乗り込んでグレイ達の家に向かった。




「あ〜! お父様が馬車を貸して下さって良かったわ。

緊張がとれたからか、今朝起きたら身体のあちこちが痛くて…

しかも雨まで降るなんてついてない。

今日馬を走らせるのは無理みたい」



「本当に。花祭りに雨が降らなくて良うございました。

そういえば、公爵様に昨日伝令を飛ばして馬車の用立てと訪問先について相談した使者によると、公爵様はかなり迷っておられたそうです。

理由を何度も尋ねられたとか。

使者にはそもそも詳細な説明はしていませんから、答えられはしないのですが、かなり気にされていたようです」



「お父様は心配症だから、自分の知らない場所に私が行くのが不安なのでしょう」



「そうですね。

旦那様はリリー様をとても大切にされていますから。

結局、馬車はお貸し頂けましたし。

スピネル家は王都から近いので、もうすぐ着きますよ。今日、グリス様のお見舞いに"リズ"様が行くことは、朝に先触れを出していますから、多分お会いできると思います」



「ありがとう。グリスの怪我が気になるのも本当だし、今日は良かったわ」




ガタゴトと馬車に揺られて40分の所に、スピネル男爵家はあった。

道中に気づいたのだが、スピネル家はハルディン子爵家領とジャスプ子爵家領に隣接していた。

ハルディン子爵家には何度も通っているので、かなり見慣れた景色だった。

帰りに久々に寄ろうかしら…などと考える。



「ここがスピネル男爵家ね」

リリーは、どっしりしたレンガ造りの邸宅を見上げた。


『男爵』は、手柄を立てれば1代限りの爵位として与えられることもあり、新興貴族と揶揄されることがあるが、こちらの邸宅は年季が入ったというか重厚な雰囲気というか…


とにかくしっかり古かった。

多分、かなり昔からある建物だと思う。

スピネル家は、由緒ある男爵家なのだろう。



門兵さんに、家人へリズの来訪を知らせて貰うように頼む。

門兵は使用人2人が豪華な馬車で来たことを不思議に思いながら、馬車に入った紋章が公爵家のものであることに驚き、急いで中に入って行った。



ほどなくして、グレイが出迎えに出てきた。


「やぁリズ!ジニア!

 急な連絡だったから、ろくなおもてなしができないけど、まぁ上がってってよ。

弟の恩人だって家の者には説明してるから、遠慮なくどうぞ!


ん…? 」



「急に来てしまったこと、本当に申し訳ありません。

グリス様のお見舞いの他に、急ぎお伝えしたいことがありまして、ご無理を言いました。すみません」



「あ…あぁ、それは大丈夫だよ。どうせ何も用事なんて無いんだから」



グレイは、馬車の紋章を一瞬不思議そうに眺めたが、雨足も強まっていたので、とりあえずリズとジニアを家の中に招き入れた。



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― 新着の感想 ―
[一言] どれだけ驚くだろうね(笑) 気絶しないといいけど、本人たちもだけど両親とかね。
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