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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
266/325

266.騎士訓練生⑧

リリーはアルダー隊長と直接言葉を交わすのは初めてだ。ちょっと緊張する。



「見た所、君は関節が柔らかく、しならせて使う剣や鞭は多分武器として向いているが、槍や弓などの、剛性が必要な武器に苦戦するようだな。

体幹と腕の安定性を高めるトレーニングを行い、押し手を安定させると良い」


名前を覚えて貰っていることに嬉しい気持ちになった上、アルダー隊長が自らトレーニング方法を指南して下さった。



まず、地面に押し手(弓を握る手)になる方の手だけをつき、身体を横向きにする。

腰を浮かせれば、押し手と同じ方の足の側面だけ地面についた状態になり、体幹が曲がらないよう真っ直ぐ姿勢を保つのだ。

つまり、サイドプランクである。



反りすぎても曲がっても良くない。

腕、肩、下腹、股関節と、かなり負荷がかかることが分かる。


「息を止めずに、しっかり腹式呼吸をすること」



ふっ… ふっ… ぐっ…


知らずに息が浅くなる。


疲れてくると上体がグラグラ揺れてきて、手の上に身体が定まらなくなってきた。



バターッ!


たまらず身体が崩れ、天を仰ぐ。


「す… すみません」



隊長は苦笑いをしながら、

「訓練は1日にしてならず。諦めずに続けていれば、成果は必ずついてくるから」

と肩を叩き、他の訓練生の指導に向かっていった。



カッコイイ…!

ナイスミドルの爽やかな激励に、胸が温まる。


リリーは深々と礼をすると、


「よし! 頑張るぞ!」


と、サイドプランクの姿勢を整える。


もって1分。

それ以上となると肘がガクガクして倒れ込んでしまうのだ。

それでも諦めずに何度も何度も繰り返す。

すると、2分、3分と、保てる時間が増えてきた。


筋力がついたというより、"手の真上に体重をかける感じ"を掴んできたからだ。

リリーの少ない筋力を、身体を効率的に使う事でカバーができるようになったのだ。


手の上に身体が安定さえしたら、地面を押しておくための力を、あまり使わなくても姿勢が保つことができる。


なるほど、これが体幹と肩を繋ぐ安定性ってことか…

などと1人で得心しているリリーのサイドプランクが、5分を経過しつつある時、



「わわっ!?」


 ズシャッ  バン! 


急に足が地面から浮いてバランスを崩し、後頭部と背中を地に打ち付けた。



「いっったぁ…!」



ギュッと瞑った目をゆっくり開けば、ニヤニヤ笑う、金髪巻き毛のド貴族が、そこにいた。


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