26.王子様とのお茶会③
「やっぱりこのドレスにします」
リリーは強引にすみれ色のドレスに決めたが、カシアもマリーも『お嬢様は何でもお似合いになるからそちらも素敵ですね』とあっさりうなずいてくれた。
髪の毛はサイドを少し編み込んで、耳の後ろに花飾りで留めてもらった。
首の華奢さが際立つよう、首のおくれ毛も忘れない。
そうこうしているうちに、王子様とオリバー様が到着されたとジニアが呼びに来た。
別に護衛の必要もないのに、ジェイバーもお茶会に立ち会うらしい。
それならと、リリーは自分で歩けるが、あえてジェイバーに手を添えてもらい、儚げを装って王子様を出迎えた。
「やぁリリー、久しぶりだね。先月はお誕生日おめでとう。
お祝いに行けなくてごめんね。でも、久々に君が体調を崩さずお祝いできたと、ローレンスが父に嬉しそうに報告していたのを聞いたよ」
王子は微笑みながら話す。
私はカーテシーでご挨拶をし、エントランスから応接室にご案内した。
お茶会が始まったが、リリーは終始伏し目がちで声も小さい。お茶菓子に手を伸ばすこともない。
時折眉根を寄せて苦しそうな表情を浮かべる。(演技だけど)
「リリーはだいぶ体調が良くなったと聞いているけど、やっぱりまだ悪いの? 身体が辛いかい?」
王子が心配そうに聞いてくれる。
「はい… なかなか体調に波があり、まだ1日じゅう伏せっていることも多いのです」
いけしゃぁしゃぁと嘘情報を伝え、この機会にと意を決して話を続けた。
「エルム王子様、私のように身体が弱くては、とても国を背負う王子妃は難しいと思います。
万一お世継ぎを授からねば、無益な争いが起こることもあるでしょう。
もし婚約を考え直されるならば、私は謹んでお受けさせて頂きます」
エルム王子はウーン、と少し考えてから、
「確かに身体は丈夫であるにこしたことはないけど、もし身体が弱かったとしても、それを理由に婚約破棄をすることはないんじゃないかな。」
と断言した。
「僕達の婚約は、ローレンス公爵が先の戦争で上げた武勲の褒賞で望まれたものだし、君の体調は当時から周知の事実だから、それを理由に破棄はしないと思うよ。
そんな悲しいことを考えるよりも、まず僕達がお互いをよく知り合って、これからのことを一緒に考えていきたいと思うんだ」
ポ、ポジティブ…!
あと、そうなの!?婚約ってうちの父親が言い出したことだったの!?
何でそんなことを??
というか、病弱くらいじゃ婚約破棄できないんだ!
頭の中がハテナとガーンで一杯になっていると、突然王子様がすごいことを言い出した。
「リリー、僕から誕生日祝いをあげたいんだけど、今度一緒に街に行かない?
そこでリリーが気に入ったものをプレゼントとしてあげたいんだ」




