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病弱な令嬢に転生した体育会系女子は、今世でも鍛えたい  作者: 雪熊猫
最終章✜クルール王国 王城篇
255/325

255.王城にて⑥

それから、ジニアに王城のバックヤードツアーに連れていって貰い、侍女しか通らない道、知らない場所、通り方や時間制約を習った。



リリーは王子妃教育がお休みの日は侍女服に着替えてあちこちを見て回ったり、人気の少ない庭園の隅で休んだりして過ごすようになった。



特に、王城から遠い東の庭園は薔薇の垣根やアーチに囲まれていて、あまり外から見られないし人が来ない。

しかもフカフカ芝生が気持ち良く、結構広いから走ることもできる、リリーの秘密の隠れ家になった。

騎士の訓練場と隣り合わせなので、垣根の隙間から時々覗き見ては練習の参考にすることもできる。



庭木の剪定道具のある小屋は鍵がかかってないので、リリーはその中で着替えるようにしている。


走ったり、側転や倒立、素振りなどで思い切り身体を動かし、また侍女服に着替えて部屋に戻った。




王子妃教育で頭がパンパンになっても、こうして身体を動かしている間に何となく心が軽くなって元気になるから、また勉強を頑張れる。


リリーは王子妃教育にも身が入り、王妃様からの小言も少なくなってきた。




※  ※  ※




そうこうしているうちに、王子の誕生日が来て、毎年恒例のパーティが開かれた。

今回リリーは迎賓側であり、自身が歌ったり踊ったりはせず、王子の婚約者として他国の来賓や国のお偉いさんの対応を行った。



「まぁ、パペール書記官長様。先日はお孫様が出生なさったとか。それはそれは愛らしい方だそうですね!

おめでとうございます」


「トウンダ大臣様。先日は西の領地の不作について、貴重な資料をお貸し頂いてありがとうございました。

エルム王子が大変感謝を申しておりました。

お陰を持ちまして、今年も美味しいぶどうが実りそうですわ」


「ルード局長様。来月着工予定の陸橋の模型を拝見しましたが、とても素敵でした。流れるような曲線と周囲に溶け込む風景美、しかも無駄な経費を絞ることで、税率を上げずに予算を用意されたことも素晴らしかったです」



リリーが王城の重役や貴族達を歓待しながら話を弾ませる。

領地の状態や名産など、覚えるのは大変だったが、彼等の反応は総じて嬉しそうで、笑顔で話が膨らむ中で新たな情報や提案を得られることもあった。




「あら、ブルーノ伯爵令嬢ではないですか。お久しぶりです! いつか聴かせて頂いたピアノも素敵でしたが、今年の音楽祭の演奏も素晴らしかったですわ」


リリーが以前マルグリット先生のお茶会で知り合った、ブルーノ伯爵令嬢リノン様もパーティに参加されていた。

相変わらず、穏やかで優しそうな佇まいで癒やされる。


次に、絹糸のような髪をサラサラと流している高位令嬢を見掛けたのでご挨拶をした。


「アイリス侯爵令嬢、初めまして。リリーと申します。

あの… そちらのイヤリング、とても素敵ですわ。

もしかして、アイオライトではありませんか?」


「ディアマン公爵令嬢リリー様、初めてお目にかかります。

こちらの石がお分かりになられますの?」


驚いたようにリリーに向き直る。


「シャンデリアの光を反射して黄色にも紫色にも輝いて、とっても美しいですわ。光で色が変わる石だと本でしか見たことがなかったので、実際にこうして拝見できて嬉しいです」


そうリリーが微笑めば、


「本当に美しいですよね。

ブルーサファイヤと見誤りやすい石ですが、この石の方が少し深い色合いで落ち着いていて、光の加減で変わってみえる所が気に入っています。

婚約者の方に頂きましたの」


少しはにかんで耳に触れた。

そこからは石の産地や石言葉、婚約者の方との馴れ初めに花が咲き、リリーは楽しく親睦を深めることができた。




宝石は、王妃様の生家であるヴィッテルスバッハ公爵家の名産らしく、見極め方から産地、意味、削り方まで細かく叩き込まれた。

しんどいことばかりの王子妃教育だったが、こうして大臣達や令嬢と交流するのに大変役に立ったので、やはり無駄ではなかったとリリーは感慨深く思った。


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