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241.カルトン共和国を救う方法③

「確かに…

リリー様の仰ることは、最善だと思います」

「その案が実を結べば、共和国はもっと過ごしやすい、豊かな国になれるかもしれません…」



リリーの説明をひとしきり聞くと、ベルヒ大将とヴノ大佐、ムリマ補佐官は半ば驚愕の表情を浮かべ、目を輝かせてリリーを見つめた。



「そ、そうですか!? 良かったです!」


リリーは独りよがりの都合が良すぎる計画になっていないかと少し心配していたため、客観的にも大丈夫そうと分かって、胸を撫で下ろした。

そうと決まれば急がなくては。





※  ※  ※





そして今、ベルヒ大将は再びパレット王国の艦船に乗り込んでいた。



前回と同じ部屋、姿勢で王女はベルヒを出迎えた。




「さて、返答を聞かせて貰おうかしら」


王女に促され、ベルヒはゴクリと喉を鳴らした。




「王女様には、丸一日近くも猶予を頂き、寛大な対応を頂きましたことを、まず御礼申し上げます。

私共はこの一日で、国の状況の把握と問題点の洗い出し、改善策の検討をさせて頂きました。


結論として、我が国は今後、地質の改善と適合する作物の実験的作付け、加えて新たな特産品の選出に取り組むことに致しました。

あと、隣国より家畜の譲与について案を頂いており、有り難く受け入れたいと思っています。

そうなれば、徐々に放牧業も手を入れ、乳製品や毛織物産業も始めて冬季を越えられるための手立てを作っていけるのではと思います」



追加の書簡に書かれていたクルール王国からの支援とは、家畜の譲与だった。かなりの数の牛、山羊、羊を譲り、且つ飼育に関する専門家の派遣まで含まれていたのだ。

これまで畜産を上手く行えなかった共和国にとって、大変助かる申し出だった。


ベルヒ大将はとりあえず話し終わって王女の顔を伺い見るが、特に表情に動きは見られない。



「具体的には」


と先を促されてしまった。

やはり、これだけの説明では納得されなかったか…

無表情のままの王女に嘆息し、ベルヒは腹を括って目を閉じた。 



「はい。

まず我が国は西の鉱山地帯、東の山林、中央は盆地という地形です。

畑は中央の平地で作付を行っていますが、土地が痩せていて、なかなか作物が根付かない上に、太らず、途中で枯れてしまうことが多いです。


その理由を調べましたら、原因は土の性質と養分にありました。西の鉱山からの山水が注ぐ地域の地質が酸性、つまり作物が育ちにくい地質であることが分かったのです。

その土にはいくつかの混ぜ物と工夫をすることで作付けしやすい土に改善できるため、その準備を進めています。


次に養分ですが、家畜が少ないせいで糞が飼料に利用できていません。これは今後、パレット王国から譲与頂く家畜から得られる予定です。後は山の枯れ葉を混ぜ込み、植物性飼料と動物性飼料が適量入ることで、状態の良い土になると思います。


また、この土と気候で育てやすい作物については、今いくつか候補のものがあり、実験的作付けをしながら選出していきたいと考えています。



最後に、新たな特産品ですが…

メイプルシロップなる砂糖液が出る木が、我が国に自生している可能性があるようです。

まだ確証はありませんが、栄養価が高く身体にも良い甘味として、外国では大変人気のあるものだと聞きました。

この木は国にかなりたくさん生えているので、国内での流通は勿論、軌道に乗れば輸出することも可能かと思われます… 」



ベルヒは馬車の中でリリーに暗記させられた文章を、ほとんど吐き出すように喋りきった。

言い忘れは無いか?とベルヒが自問自答していると、




「ちゃんと考えれば、できるのでないですか」


王女は初めて表情を崩し、少し驚いた顔をしていた。

銃は持っていない。



「調査に基づく推論なのが良いですし、外国の手を借りることも、よく決断されたと思いますわ。

今聞かせて頂いた案が実現するならば、不要な病気や飢餓に怯え、冬を越せない国民はかなり減ると思います」



よ、良かった…!

とりあえず、合格ラインの返答だったようだ。


ベルヒは額を拭った。



「でも不思議ですわね。

やろうと思えばこんなに短時間に理論的かつ実現可能な案を捻出できるのでしたら、今まで一体何をしていらしたのです?」



うっ…



「ちなみに、どなたが今回の件を主導して考えられたのです?」



ううっ…



「貴方…  ではないようですわね」



頭の中でも見えるのかという様子でこちらを凝視してくるから、ベルヒは生きた心地がしなかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] そんな地道な努力が出来る国民性かねぇ
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