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201.秋の実り⑩

寒くて楽しくもない見張りや警備の最中に、天使のように可愛い女のコが甘いお菓子を差し入れに来たとあれば、どの兵士も鼻の下を伸ばし、天にも登りそうに喜んだ。


中には嬉し泣きをする兵士までもいて、リリーは先程見た兵士を思い出す。

理由は分からないけど、案外甘いものは人の心を動かすものなのねと思った。




各部屋や検問所をジェイバーと巡り、小1時間程で戻ってきた。



どれどれ、王子はちゃんとやれているかな?



訓練場を見渡すと、エルム王子が兵士と打ち合い稽古をしている場所を見つけた。

相手はベテランの兵士で、余裕を持って受け止めている。王子も遠慮なく打ち込めていて、耳心地の良い衝突音が響いていた。


オリバー様は、ロカ隊長と模擬試合をしているようだ。

行儀の良い騎士との試合は慣れていても、何でもアリで力が全ての兵士との試合は馴染みが無いのか、思いの外苦戦している。

隊長も、さすがに王子を吹っ飛ばすことはできないが、付き人であるオリバー様ならヤレるんじゃと思っているのか、顔が本気だ。


ロカ隊長は何か、王族や公爵とかの位や階級に恨みでもあるのだろうか…




キョロ…


リリーは無意識に、栗毛の色白君を探していた。



彼はすぐに見つかった。

まだ入って間がないのか、前にリリーが武具制作の腕を見込んだ小柄な兵士のペルルと打ち合っている。

ペルルは剣があまり向いていない方の子だったが、だいぶ上達しているようだ。


色白君と力加減が同じくらいみたいだ。



「イチ! ニ! サん! シッ! ご! ロク! … 」


号令を吐き出しながら打ち込んでいる。

右、左、右、左、右、左。

踏み込んで戻り、踏み込んで戻る。




あっ



午前中、何となく感じた違和感の正体がやっと分かった。

色白君の号令、数字の数え方のイントネーションが何となく違うのだ。

訛りがあるというか…


日本で言うと、東北の方をテレビで見た時にほっこりする、語感の違いが感じられるのだ。


この世界でも、方言ってあるのかな?



ともかく、違和感の謎も解けたし、リリーはとりあえず暗くならないうちに帰るため、王子の回収に向かうことにした。


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